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BCP研究 ―道の駅のBCPについて―

業務企画室長  塩路 慎一

はじめに

道の駅は、1993年の制度創設以来、全国で展開され、2021年6月現在、全国において1,193駅が運営されています。

これまで道の駅は、1993年からの第1ステージは、「通過する道路利用者のサービスの場」として、2013年からの第2ステージは、「道の駅自体が目的地」として発展してきました。

そして、2020年からは第3ステージとして、「地方創生・観光を加速する拠点」の新たなコンセプトを掲げ、そのコンセプトの実現のため、2025年に目指す3つの姿(1.道の駅を世界ブランドへ、2.新「防災道の駅」が全国の安心拠点に、3.あらゆる世代が活躍する舞台となる地域センターに)と取組み目標を示しています。

道の駅の新たなステージとして、『新「防災道の駅」が全国の安心拠点に』のスローガンの下、BCPの策定及び防災訓練等が主な取組みとして進めていくことが挙げられていることから、それについて少し掘り下げていくのと同時に、当所が業務として行っている地方自治体へのBCP策定支援の進め方をアレンジした支援体系を考察します。

1.道の駅の防災機能強化

道の駅の第3ステージとして、防災機能強化の視点も取り入れています。その主な内容としては、@広域的な防災拠点となる「防災道の駅」制度の導入、A地域防災力強化のためのBCP策定や防災訓練等の実施、となっています。また、その動きに呼応して、防災基本計画等の各種政府計画の中で、道の駅の防災機能強化に関する位置づけも行われています。

防災拠点機能としては、「広域的なもの」と「地域的なもの」に分類し、「広域的なもの」は、大規模災害時の広域的な防災拠点として位置づけ、2021年6月に39駅を「防災道の駅」として認定しています。広域的な防災拠点機能を持つ道の駅については、ハード面では防災機能の整備・強化を交付金にて支援し、ソフト面についてはBCPの策定や防災訓練に国のノウハウを活用した支援を行い防災拠点としての役割を果たせるように態勢を整備していく予定です。

【道の駅の防災拠点機能イメージ図】
道の駅の防災拠点機能イメージ図

国土交通省資料(改)

2.道の駅におけるBCPガイドライン(案)

国土交通省から「道の駅BCP策定ガイドライン(案)」が示されています。それについての解説も含め紹介します。

1.1 道の駅BCPとは

災害が起きた際、「道の駅」が@防災拠点機能を適切に発揮しつつA生活拠点機能の早期再開を目指すためには、発災時に「道の駅」が優先して実施すべき業務(以下「重要業務」)を明確にし、その業務を確実に実施できるよう、あらかじめ事前準備や体制等を整理したもの

災害時に「道の駅」が求められている役割・機能を十分に果たすために、具体的に準備すべきことや調整すべきことなどを明確化するための計画

【発災時に「道の駅」が求められている主な役割・機能】

(1) 初動対応
  ・訪問者や従業員の安否確認・安全確保に対する起動
  ・地域周辺住民の一時避難所と位置づけられている場合は、その開設準備

(2) 応急対策活動
  ・利用者や関係機関等への情報発信や情報共有
  ・広域的な防災拠点と位置づけられている場合は、その拠点としてのスペース確保
  ・周辺住民への対応(安全確保・避難行動等)

(3) 事業再開への取組み
  ・食料品や生活必需品の早期販売再開

以上のような役割を果たすための具体的な行動を計画するとともに、行動するための阻害要因を洗い出し、調整すべきことを明確にしておくことがBCPと言えます。

2.1 基本方針の決定

道の駅BCP策定の目的、発災時に何を優先すべきか対応方針を設定


2.2 運用体制の検討

発災時に「道の駅」関係者が連携して行動を行うための体制構築、ならびに関係者の役割を検討

2.3 危機事象・被害想定

危機事象は大規模災害等の発生とし、その被害想定は人的被害や建物被害、ならびにライフラインの機能支障を想定

道の駅が位置する地域の最も危険度の高い災害(例えば南海トラフ地震、風水害等)危機事象とし、その災害が発生した場合の被害想定を行います。被害想定については、都道府県等が行っているシミュレーションを参考にします。

2.4 重要業務の抽出

初動対応と当該「道の駅」の有する防災拠点機能を踏まえた災害の応急対策活動に関する業務を抽出

訪問者や従業員の安否確認等の初動対応と地域防災計画において位置づけられている道の駅では緊急活動・災害支援スペース確保や避難所開設準備等の応急対応、その後の事業再開への取組みに関する重要業務を優先度の高い順に抽出していきます。

2.5 必要資源の現状把握

発災時の重要業務で必要となる、人的資源(参集可能人数)、物的資源(ライフラインのバックアップ、災害時備蓄等)、災害用設備手順書等を整理

当所が実施しているBCP策定支援では、現状対応できていない項目について「課題管理表」にリストアップし、優先度の高いものについては早期に対応していくようにしています。

3.1 重要業務の開始目標時間

「2.4重要業務の抽出」で抽出した業務を対象として、いつまでに開始すべきか、業務の優先度を踏まえながら設定

重要業務の目標開始時間(例)
重要業務の目標開始時間(例)

国土交通省資料(改)

「2.4重要業務の抽出」で抽出した重要業務について、優先度の高い順に開始目標時間を設定していきます。国土交通省の資料では、開始目標時間の区切りは「概ね3時間以内」「概ね1日以内」の簡単なものとなっていますが、各々の道の駅の置かれている状況や重要業務量を加味して、「1時間以内」「6時間以内」「24時間以内」「3日以内」「1週間以内」ともう少し詳細に設定する方法もあります。

3.2 重要業務の行動計画

行動計画は、誰が・何を・どのように実施するのか明確にすることを目的として、実施体制と実施内容等について具体的に設定

あわせて、行動計画に行うために必要となる緊急連絡網などの各種様式や、防災設備等の使用手順書等のリスト化

重要業務の行動計画(例)
重要業務の行動計画(例)

国土交通省資料(改)

当所が進める地方自治体のBCP策定支援では、「行動チェックリスト」として上記内容を整理します。それは、時間軸(24時間以内・3日以内・一週間以内)ごとに整理し、発災時に行動チェックリストをチェックしていくだけで「誰が・何を・どのようにして」が瞬時に分かり行動することができるようなまとめ方となっています。

4.1 定期訓練

定期訓練は、策定した「道の駅BCP」を関係者等に周知・浸透させて防災に対する当事者意識の喚起と対応能力の向上を図るために実施

例 : 災害発生時の協力に関する基本協定に基づく、設置者や道路管理者が有する防災設備の起動等に関する訓練や消防訓練など

4.2 BCPの定期的な見直し

策定した「道の駅BCP」は、時点修正や定期訓練での課題解決および災害発生時の振り返り等を通じて、定期的な見直しを実施

当所の地方自治体向けBCP策定支援では、策定後のBCPについて、想定を変えて訓練・検証を実施して計画のブラッシュアップを図っています。

例 : ・ 「平日・昼間」で計画を策定した場合 → 「休日・夜間」
    ・ 大規模地震 → 台風による風水害    など

3.和歌山県の「道の駅」


和歌山県下の道の駅は35駅となっています(2022年1月末現在)。

その中で、すさみ町の「道の駅すさみ」は防災道の駅として、2021年6月に全国39駅の1つとして認定されています。防災道の駅は、都道府県が策定する広域的な防災計画に基づく防災拠点としての役割が求められ、国がハード面・ソフト面から重点支援を行うこととなっています。ハード面では防災機能の整備・強化を交付金で重点支援し、ソフト面ではBCP策定や防災訓練について国のノウハウを活用して支援していくことを現在進めています。

その他の和歌山県下の道の駅は、所在地等により期待されている役割は様々であると考えられますが、訪問客、産品等販売機能の従業員や情報発信機能の職員が多数存在することや周辺住民の避難場所となる可能性等を考慮し、BCPをはじめとして防災機能の強化が図られる必要があるものと考えます。

4.策定支援方法

当所は、2017年度から地方自治体に対するBCP策定支援および策定したBCPの訓練・検証支援に取組んでいます。特徴としては、ワークショップ主体の全4回で策定し、タイムラインと非常時体制表、行動チェックリストを中心にコンパクトな形で作り上げています。

上記の地方自治体向けの策定支援のエッセンスを凝縮し、より短時間かつ効率的な形で策定する方法を検討しました。主な変更点は、従業員及び自治体職員の負担軽減と策定費用の圧縮を目指し、「策定ワークショップ主体の構成に変更し、日程の大幅な短縮」が挙げられます。

【道の駅のBCP策定支援】

  • 策定期間3ヵ月程度、策定ワークショップ2回(ファシリテーターはBCPの専門家を予定)
  • 道の駅の従業員数名と地方自治体職員数名の参加
  • 策定後は、年1回の訓練・検証を実施し計画をブラッシュアップ

5.訓練・検証支援方法

BCPは策定するのが目的ではなく、機能することが重要です。それを検証する場として訓練を実施し、改善・改良することにより計画のブラッシュアップを図ります。また、訓練・検証を継続実施することで、従業員交代への対策や組織への定着も図ることが可能となります。

【道の駅のBCP訓練・検証支援】

  • 少なくとも年1回実施(3〜4時間を予定)
  • 当初は机上訓練(想定を変更しながら検証) (例) 平日昼間 → 休日夜間想定 → 風水害 など
  • ワークショップ形式(ファシリテーターはBCPの専門家を予定)
  • 道の駅の従業員数名と地方自治体の職員の参加

参考文献

  • 国土交通省 資料 道の駅第3ステージの取組について〜防災拠点化の取組を中心に〜
  • 国土交通省 資料 「道の駅」の防災機能強化について
  • 国土交通省 資料 「道の駅」におけるBCPガイドライン(案)について
  • 国際交通安全学会誌 Vol.45,No.1 2020年6月
    「道の駅」第3ステージの提言 ―「地方創生・観光を加速する拠点へ」―
  • トラベルボイス 観光産業ニュース 記事 2021年6月15日
    国交省、「防災道の駅」として39駅を初認定、防災機能強化やBCP策定を支援

(2022.8)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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