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真夏の夜の夢「和歌山にアイススケートリンクを!」

主任研究員  鈴木 孝明

【はじめに】

1993年、アメリカで「クールランニング」という映画が製作されたのをご存知だろうか。雪の降らない熱帯の国ジャマイカで、ふとしたきっかけから若者達がウィンタースポーツのボブスレーのチームを結成し、最後には1988年のカルガリー冬季オリンピックへの出場を果たし予想外の活躍をする、という感動的エピソードがユーモラスなタッチで描かれていた。この映画を見た時は、夢の実現に向けて取り組む姿が魅力的だと感じただけであったが、実はこの映画は事実に基づいていたのである。暖かい国でもウィンタースポーツに取り組むことはできるし、努力すれば世界レベルの大会で好成績を残すことも可能だという実例が示されていた。

2006年、トリノで開かれた冬季オリンピックにおいて、日本の荒川静香選手(神奈川県出身)がフィギュアスケートで金メダルを獲得した。感動した私は一方で「長いことアイススケートをしていないので久しぶりに滑りに行きたい」と考えた。そこで調べてみたところ、和歌山市内にはアイススケートリンク(以下「リンク」という。)がなく、滑りたいと思えば近い所でも大阪府高石市のリンクまで小一時間かけて出かけなければならないということが分かった。県内では高野町に冬季だけ営業するリンクが残っているようだが、現在は営業を休止しているらしい。これでは滑ろうという気持ちが萎えてしまうことになる。

かつて和歌山市内にも手軽に行ける場所にリンクがあった。知人に聞いたところによれば、当初は和歌山市中之島(現在の紀陽銀行向芝オフィスの所)にあったそうで、私の記憶にあるリンクはそれが和歌山市小雑賀のダイエー和歌山店北側(現在のパチンコ店「レッドフェニックス1&2」の所)に移転したものらしい。私は何度か小雑賀のリンクへは滑りに行ったことを覚えているが、こちらもかなり前に廃業してしまったらしく非常に残念であった。

【和歌山にリンクを!】

和歌山で盛んなスポーツはと言えばまず野球をあげる人が多いだろう。本県は古くから野球王国として有名であり、高校野球でも幾多の名勝負が人々の胸に刻まれている。春5回・夏7回の優勝という輝かしい実績を持つだけでなく、これまで数多くのプロ野球選手を輩出しており、また今年4月には関西独立リーグの紀州レンジャーズが発足し、首位を走っている(6月7日現在)。

また最近は、野球以外にも子どもたちが小さい頃からサッカー、柔道、剣道、卓球、テニス、バレーボールおよびダンス等、様々なスポーツを習い始めることが珍しくなく、高校生ぐらいにもなるとサッカー、ソフトテニス、バレーボールの分野等では全国トップレベルの実力を有する高校がある。

こうした環境の下で、なぜあえて私は和歌山に縁の薄いウィンタースポーツであるアイススケートのリンクの復活を提案するのか。その理由は2つある。

【リンク復活を期待する理由】

一つは、本県に新しいスポーツを導入することによって、スポーツ界だけでなく周辺環境に広く刺激を与え、様々な面で活性化を図ることができるのではないかと考えるためである。

1.リンクを市街地の中心部、仮にターミナル駅や商業施設等の集客施設の近隣に設置することができれば、これによって新たに人の流れを呼び込むことができるため、既存施設との間で互いに相乗効果を発揮し、中心市街地の活性化を促進する効果が期待される。
  • アイススケートは、老若男女に関係なく、学校帰り、買物帰りや仕事帰りに気軽に楽しむことができる身近なスポーツである。
  • 1〜2時間程度自由な時間が取れれば、季節や天候に関係なくいつでも気軽に楽しむことができる。
  • 他のウインタースポーツ(スキーやスノーボード)のように、長時間かけて遠方のゲレンデまで出かけたり、宿泊したりする必要が無い。
  • スケート靴や手袋をレンタルで借りた場合でも、全部で2,000円程度の比較的安い料金でゆっくりと楽しむことができるし、特別な用具を持参することも要らない。都会的で、お客様を受け入れる間口が広い所はボーリングと似たところがある。
  • 特に専用のウェア等に着替える必要もないし、滑り終わった後、衣服が土で汚れている等の心配もない(少々濡れることはあるけれども(笑))。
  • 中高年の方にとっては昔から案外身近にあったスポーツであり、身体に無理な負担をかけることなく楽しめるので、健康作りにも効果的である。
2.レクリエーションメニューの多様化につながる。
  • 1人で出かけても大丈夫だし、大人数で一緒に行ってもみんなで同時に楽しむことができる。   
  • 家族で一緒に楽しめる。同じリンクにいる限り、小さい子供たちが迷子になる心配もなく目が行き届き、安心して楽しめる。
  • 子供と一緒に滑りに行ってお手本を見せてやれば、お父さんやお母さんが子供たちから尊敬されるのは間違いないし、少し腕に覚えのある人は、ただ氷上を滑っているだけで周囲の人から熱い注目を浴びて快感を味わうことができる。
  • カップルで行けば年齢にかかわらず公衆の面前で堂々と手をつないで滑ることができる(笑)。
  • 小学生・中学生等の課外授業にも最適である。
  • 職場や学校の仲間と親睦を深めるきっかけになる。スケートの後に飲食を楽しむことで、更なる経済波及効果も期待できる。
  • 現在、中心市街地のぶらくり丁等において、休日に中学生や高校生が余暇を楽しむ方法としてカラオケが人気を集めているようだが、自分達の身近に気軽に遊べるスポーツがあれば、気分転換や仲間とのコミュニケーションにも最適である。
  • そばで見ていると単に氷上をぐるぐる滑っているようにも見えるが、実際には身体をリズミカルにダイナミックに動かすことによって躍動感があり、爽快感がある。
  • 夏涼しく、屋内にあるため冬も寒くない。リンク上は1年を通じコンディションが安定しており、快適な環境の下で楽しむことができる。
3.スポーツのメニューが増える。
  • 県内の子ども達が小さいうちから取り組めるスポーツの選択肢が増え、育成する側も早期に優秀な才能を発掘することができる。
  • 中高年も体力作りに活用できる。彼らの中にはかつて子供の頃ローラースケートやアイススケートを楽しんでいた人も多いため、スケートは案外懐かしい存在である。ヘルメットや肘カバーなど防具を着用し、十分に安全上の配慮さえ講じれば、懐かしいスポーツに久しぶりにチャレンジして楽しい時間を過ごすことができる。
  • 一見単純なスポーツに見えるが、30分〜1時間も滑れば相当な運動量になり、基礎体力がアップすると共に、ジョギングやウォーキングとは一味違った爽快感を得ることができる。

二つめは、リンク復活によって、本県の知名度アップや魅力アップが図れると考えるためである。

1.他のスポーツと異なり競技人口の絶対数が少ないと考えられるため、頑張れば好成績を残せる可能性が高い。
  • 専門の指導者の下で小学校低学年頃から早期に英才教育を行えばスポーツ選手達の将来の活躍が期待できる。
    たとえばサッカーの場合、9〜12歳の頃をゴールデンエイジと呼び、将来クリエイティブな選手になって大きく成長するためにはこの時期に必要な要素を習慣づけておく事が大切であり重要な鍵になるという(JFA(日本サッカー協会)指導教本等による)。ウィンタースポーツでも同様のことが言えるため、早期に本格的指導を受けられる環境を整えてやれば、それだけ将来の活躍が期待できる。
    (本県が2006年度から実施している「ゴールデンキッズ発掘プロジェクト」も同様のねらいがある。)
  • 練習施設が、大阪府等の遠隔地でなく地元の自宅から通える範囲にあれば、毎日たっぷりと練習時間を確保することができる。
  • まずは高校総体や国民体育大会への出場を目標とし、そしてさらなる上を目指すことも可能である。
    本県は2015年に国民体育大会の開催を控えており、これからスケート(スピード、ショートトラック、フィギュア)、アイスホッケーの選手を育成すれば国体の時に本県出身選手が活躍することも期待できる。残念ながら積雪量が極めて少ないため本県で冬季国体を開催することはできないが・・・。
  • 2008年冬季国体(長野大会)において、氷上競技に入賞又は出場した都道府県の数は次のとおりである。
  •  1.スケート(フィギュア)で男女いずれかが8位以上に入賞した都道府県は13 / 47。
  •  2.スケート(スピード)で男女いずれかが8位以上に入賞した都道府県は18 / 47。
  •  3.スケート(ショートトラック)で男女いずれかが8位以上に入賞した都道府県は16 / 47。
  •  4.アイスホッケーでトーナメントに参加した都道府県は青年男子が26 / 47、少年男子が13 / 47。
  •   (財団法人日本体育協会 第63回冬季国民体育大会(長野県)競技記録より引用)
  • 日本においては氷上競技の絶対人口が少ないと考えられ、以上の4競技の各種目を見たところ、全国47都道府県中、一部の都道府県(全体の約1/3〜1/2)で上位を占めていることが分かる。これらは必ずしも冬寒い地域とは限らない。
  • スケートやアイスホッケー以外にも、トリノオリンピックで青森県の女子選手達が脚光を浴びたカーリングや、アイスダンスなどの競技もあり、今からスタートすればこれらの競技で本県出身の選手が活躍し国際大会に出場することもあながち夢ではない。
2.スポーツを支援することにより本県のイメージアップが図れる。
  • 他のスポーツ施設に比べリンクは全国でも施設の数が少ない。特に通年で営業している所は限られてしまう。一流選手を抱える中京大学(浅田真央さん・安藤美姫さん他)や関西大学(織田信成さん・高橋大輔さん他)のような私立大学専用リンクもあるが、一般向けに通年で開放されているリンクは人口密集地の大阪府でも僅か3箇所しかない(大阪市、高石市、守口市)。高橋大輔選手のブログによれば彼が使っていた高槻市のリンクが廃止され練習に支障を来たしたこともあるらしく、また大阪府立臨海スポーツセンターのリンクは何とか存続が決まったものの5年後の大改修までに経営が改善していなければ廃止されるという話も聞く。特に近畿圏はリンクの数が限られるため、もし本県に通年利用できるリンクが復活すれば、近隣府県の選手たちの利用も期待されるし、本県の豊かな自然環境の下で有名選手たちが長期合宿を行うといったことも十分期待される。
  • 慢性的に練習施設の不足に悩んでいる選手たちの悩みを解消し、和歌山に行けばいつでも安心してスケートの練習ができる、またあるいは和歌山の企業に就職すれば社会人になっても安心して選手活動を続けられるといった評判や実績を積み重ねていくことによって、本県は「スポーツ選手を積極的に支援しアスリートを育む暖かい県」であるとして多大なイメージアップが図れるものと考えられる。
3.スケートは世界でも注目度が高く、本県の海外での知名度アップが期待される。
  • 氷上競技は非常にダイナミックで、米国や欧米をはじめ、世界中で人気がある。
  • 特にスケート(フィギュア)は、その華やかさゆえ欧米を初め世界的に特に人気の高いスポーツで、他のスポーツと違って新聞・テレビ等マスコミに取り上げられる機会も非常に多く、もし本県出身の選手が活躍すれば必ずや大きな注目を集めるものと考えられる。また最新リンクの存在と併せて、結果的に本県の名前を広く県外にアピールすることができるため、本県の知名度を飛躍的に高め、イメージアップを図ることができると考えられる。
  • 本県が元々持つ南国のイメージと、リンクが持つ北国のイメージが共存することはミスマッチ感覚があり面白くて意外性があるため、普段から種々のメディアに取り上げられ紹介される可能性が高い。
  • もし仮にトップレベルの選手を招致して国際大会等を開くことができれば、世界のマスコミから注目を集めることができるし、海外で紹介されることによって、欧米等からの観光客の増加が期待できる。また、美しい自然、温泉、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」、ジャイアントパンダ等元々和歌山が持っている数々の魅力と併せて、本県の魅力を広く世界に発信する機会が増える。

【期待される効果】

氷上競技全般に対するスポーツ振興効果が期待される。

  • 2007年12月に和歌山県教育委員会より発表された「和歌山県スポーツ振興基本計画」によれば、同計画は「生涯スポーツ社会の実現」「競技力の向上」「子どもの体力の向上」「体育・スポーツ施設の充実」「国民体育大会開催に向けた取組」の5つの施策で構成されており、様々なスポーツがこの施策の対象となっているが、もしアイススケート等の氷上競技の普及を図ることができれば、これらの施策が目指しているものと同様の効果が期待される。さらにリンクは複数の氷上競技で共用することが可能なため、本県では現時点で活発ではない多様な氷上競技の導入を図り、幅広い選手を育成する場とすることができる。
  • 具体的には、スケート(フィギュア)、スケート(ショートトラック)、アイスホッケー、カーリング等で共用することができる。ただしスケート(スピード)については、今回設置を検討している一般的な規模の屋内型リンクでは直線コースの距離が不足するため公式大会には使えないと思われるが、練習施設としては十分に活用が可能である。

【実現に向けた課題】

次に、実現に向けてはいろいろな課題があるため、これらを客観的に見ていきたい。

1.まず、相当な面積が必要である。
  • 屋内リンクは、リンクだけで30m×60m=1,800uの敷地面積が必要である。さらに周囲に一定数の観客席も備えたリンクとなるとより規模が大きくなる。これを仮にリンクの2倍程度と仮定すれば3,600u(1,090坪)の敷地が必要である。
  • ちなみにスケート(スピード)の公式競技を行うためには、1周400mのダブルトラックのリンクが必要であるが、この規格を満たすリンクは屋外に冬季のみ開設されるリンクが主である。こうしたリンクは、冬季に自然に結氷する環境が求められ、北海道・東北・中部地方の標高1,000m級以上の高地等に建設されることが多く、リンクの敷地だけで約12,000uの広さが必要なこともあって、本県には適さないと考えられる。長野オリンピックの際に作られた「長野市オリンピック記念アリーナ エムウェイブ」のように、スケート(スピード)の公式競技ができる屋内リンクもあるが、これは非常に珍しい。
2.次に、将来に亘って安定した経営を確保するため、継続的・永続的に利用者を確保できるような対策が不可欠であり、そのためには予め実現可能な対策を綿密に講じておく必要がある。

たとえば次のような対策が考えられる。

  • リンクオープン時には有名選手を招いてアイスショーを開催し、事前に大々的にPRを行う。
  • 以後も積極的に各種競技大会(県レベルから海外まで)を誘致し、またスターズオンアイスやディズニーオンアイスのようなプロスケーターによる商業イベントを誘致し、多数のお客様が集まり、リンクが高収益で稼働する時間を少しでも増やす。
  • 教育の一環としての平日のスケート教室の利用を県内外の教育機関にどんどん働きかける。またスケート体験にバックヤードである製氷機器プラントの見学や、近隣の工場見学を組み合せて社会見学の効果も持たせる等、ユニークな集客プランを作って売り込む。
  • 幼児・小学生・中学生・高校生・大学生・社会人・高齢者・親子・カップル等々、対象を細かく分け、更に競技選手育成・体力作り・友達作り等々、目的を細かく分けて、それぞれのクラスに応じてきめ細かい指導を行い、低料金で個人指導も行う等、オーダーメイドに近いスケート教室を目指す。
  • 安全で効果的な体力作りや、健康の維持・増進に活用できるレッスンプログラムを積極的に開発し、県内の医療機関や研究機関を通じて効果を立証し、マスコミを通じてPRを行う。また近隣観光・温泉宿泊等と組み合せた利用プランを作成し、県外にもPRする。
  • 半額デー、無料サービスデー等を定期的に設けてとにかく体験してもらい、利用者の垣根を低くする。
  • 近隣商業施設や飲食店とコラボレーションし、割引券やサービス券を配布してスケートだけではないという「お得感」をアピールする。
  • スピードとパワーが両立し迫力のあるアイスホッケーのクラブチームを和歌山を本拠地として結成する。そして社会人リーグや地方リーグからスタートして和歌山県の代表として頑張ってもらい、サポーターの気運を徐々に盛り上げ多くの県民への協力を呼びかけていく。アイスホッケーはアメリカでは野球、バスケットボール、アメリカンフットボールと並ぶメジャースポーツであり、多くの人達が目の前で実戦を観戦する機会を増やし、ブームを作って大きく盛り上げていく。
3.第三に、場所選びが難しい。
  • 1人でも多くの利用者を確保するためには、可能な限り人口密集地やターミナル駅、大型商業施設、集客施設等に近接して設置されることが望ましいが、そうした地域を選ぶと用地取得費が高くなるというジレンマがある。しかし復活を期待する理由の一つが中心市街地の活性化であることから、この課題は何とかしてクリアしたいと思う。
  • たとえば和歌山市美園町の「けやき大通り第1種市街地再開発事業用地」(敷地面積約3,600u)等はターミナル駅に徒歩5分と非常に近く位置的にはほぼベストと考えられる(面積的にはやや苦しいかもしれない)。そこに飲食店等を併設した複合施設を作り、外からリンクが見えるように設計を工夫すればさらに集客力も増してかなり期待できると思われるのだが・・・。
  • 必ずしも人口密集地近辺でなくとも、たとえば白浜温泉や和歌山マリーナシティなど有名な観光地の周辺に作ることができれば、観光振興面で既存のアミューズメント施設等と相乗効果が期待できると考えられる。
4.そして何よりも、多額の建設費と維持費が必要である。

 ●初期投資      29億円

(主な内訳) 用地取得費 15.5億円(430千円/u(2009年の県内最高路線価)×敷地面積3,600u(リンクの2倍程度と仮定))
建設工事費 12億円(中京大学ホームページによれば2007年の同大学アリーナ建設費は11.5億円)
※なお製氷機器プラントの設置費についてはデータが入手できなかったため含んでいない。このプラントだけで億単位の初期投資が別途追加となる可能性がある。

 ●年間維持費 一式  約1億円/年

(主な内訳) 光熱水費一式 3,000千円/月×12ヶ月=36,000千円(推定値)
人件費 管理者 3,000千円/人年×3人=9,000千円
アルバイト 1千円/h×8h/日×10人/日×365日=29,200千円
※1 経理的に詳細な試算は行わず、超概算で一式 約1億円と仮定した。
※2 樹脂製の代替氷を使った小規模なリンクだと大幅な維持費低減が図れると考えられるが、本県に設置し、これまで述べたような役割を果たしてもらうためには、本物の氷リンクで公式競技の開催に耐えられるリンクでないと値打ちがないため不採用とした。

 ●年間収入  一式  約1億円/年

ここで年間収入を試算してみると、入場料・使用料等の基本収入だけでは、せいぜい92百万円/年≒1億円/年程度 と考えられ、これでは年間維持費を賄うので精一杯となってしまうため、更に収益をあげるためには相当な収入アップ策を別途講じておくことが必要と考えられる。
(主な内訳) 大人 1,800円/回(貸靴料含む)× 50人/日×365日=32,850千円
子供 1,400円/回(貸靴料含む)×100人/日×365日=51,100千円
スケート教室 10,000円/人月×50人/月×12ヶ月=6,000千円
貸切使用料 100,000円/1回・4h×25回/年=2,500千円

と、ここまで見てきて、非常に残念な話であるが正直言って試算段階で収支を対比してみただけでも、初期投資額があまりにも大きいために実現の可能性が一気に低くなってしまったのは否めない。ただし先日、秋葉山公園県民水泳場で次の国体に向けて総事業費80〜85億円で全面建替えが行われるという新聞記事が掲載されていた(2009年4月24日付毎日新聞)ことから、必ずしも実現不可能ではないと思われる(実現させる方法が最大の問題であるが)。

【最後に】

今回の試算は、詳細に正確なデータを拾い集めて積み上げたものではなく、夢のような思いつきをざっと検討してみたというレベルに留まるものだが、残念なことに初期投資額を試算した時点で実現の可能性が極めて低いことが明らかになった。(建物内は空間であり、もっと建設費が安くなるものと期待したのだが・・・)現在の厳しい経済環境では、これだけでもはや夢物語となってしまった感さえあるが、こうした取組が地域活性化(観光振興・スポーツ振興・雇用拡大等)に貢献し、中心市街地の街の賑わいを取り戻すためにある程度の効果をもたらすと期待されるため、これについての経済波及効果をもう少し具体的に示すことが可能であれば、最新の低コストの建設手法を採用するなどして、実現に向けてもう一歩検討を進めることができるかもしれない。

かつて本県では、関西国際空港敷地の埋立てのために和歌山市北部で土砂採取を行った跡地(現在のコスモパーク加太)において、巨大な人工スキー場を建設しようという計画があった。一説には総事業費は100億円を予定していたと言われている。これはバブル崩壊の影響等もあって実現に至ることは無かったが、今回のリンクについては、過去に現実に存在していたものであり、復活を心密かに期待しておられる方も少しはおられるのではなかろうか。どなたか今回の提案に関心を持って頂いた方で、話を進めて頂くことはできないものだろうか(笑)。 

リンクの復活というのはあくまで思いつきに過ぎないが、私が今回このテーマを考えたきっかけは、2007年3月26日付発行の本紙第51号に掲載された当研究所の冨尾主任研究員(当時)による「和歌山にカジノ・エンターテインメントを!」というレポートである。

そこでは、もしカジノ・エンターテインメント(巨大な複合娯楽施設で、その中に床面積5%程度のカジノを含んでいる施設)ができればどれだけの効果が持たらされるか等について書かれている。カジノ・エンターテインメントの誘致に関しては、カジノの合法化を進める動きそのものがまだ道半ばであること、またギャンブル依存症の問題等カジノ導入に関して予め対策を講ずべき懸念事項が幾つか存在していることから、率直に言って現時点では実現の可能性が高いとは言い難い。しかし近い将来カジノが合法化され、諸課題を克服する見通しが立った場合に、もし本県にカジノ・エンターテインメントを誘致することができれば、地域活性化(観光振興・雇用拡大等)において大きなプラス効果をもたらすことは間違いないものと予想される。

本県を活性化し皆で支えていく為にどういう施策があるかを考える場合、前例がないからといって最初から構想そのものを否定したり、また実現可能性が低いからといってすぐに構想が実現不可能だと断定したりするのは避けて、それぞれどのような効果とリスクがあるか、そして本県はどの施策を選んで実行に移すべきなのかを、予断や先入観にとらわれることなく、柔軟な発想で考えていくことが、本県が生き残っていくために今後特に重要となると考えられる。来年10月には本県の人口が遂に100万人を切ると言われており(2009年5月28日付読売新聞)、今後も少子高齢化の傾向は変わらないと予測される中で、我々県民は百年の計を持って本県の振興のために取り組んで行かなければならないと考える次第である。

(2009.7)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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