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公的医療機関の統合再編と本県におけるその可能性(要約版)

研究部長  橋 義孝

1 はじめに

最近、マスメディアや医療関係者を通じて公的医療機関の統合再編の話題をよく耳にする。これは、公的医療機関を取り巻く厳しい経営環境や高齢化の進展に伴う医療需要の増加、医師等の限られた医療資源の有効活用等がその背景にあると考えられる。それぞれの医療機関では、経営の安定化をはじめ、高度化・多様化する医療ニーズへの対応、医師、看護師等の確保など様々な課題を抱える中、その解決に向けて経営形態の見直しや組織の統合再編等が進められていると推察できる。

そこで、公的医療機関の統合再編事例を通して、その背景や要因、メリット等を明らかにするとともに、和歌山県における公的医療機関の統合再編の可能性について考察することとする。

2 公的医療機関とは

公的医療機関については、医療法第31条の規定により「都道府県、市町村その他厚生労働大臣の定める者の開設する病院又は診療所をいう」と定められている。そして、「厚生労働大臣の定める者」として、昭和26年の厚生省告示第167号により地方公共団体の組合、国民健康保険団体連合会、日本赤十字社、社会福祉法人恩賜財団済生会等が定められている。

また、地方独立行政法人法施行令第13条の規定により地方独立行政法人の開設する病院又は診療所も公的医療機関に該当する。

それでは、全国にどれだけの数の公的医療機関(病院に限る。以下同じ。)があるのだろうか。

平成27年11月に厚生労働省が公表した「平成26年医療施設(静態・動態)調査」の結果によると、病院の総数は8,493施設。これを開設者別に見ると、表1のとおりとなる。

公的医療機関は1,231施設で、最も多い医療法人に次いで多いが、病院総数の14.5%に過ぎない。独立行政法人国立病院機構などの国が開設者である病院と合わせても、全体の18%程度という状況である。

表1 開設者別に見た施設数表1 開設者別に見た施設数
(出所)厚生労働省大臣官房統計情報部 平成26年医療施設(静態・動態)調査

3 公立病院改革の取組

公的医療機関の中で開設者が都道府県、市町村等の地方公共団体である公立病院は、これまで地域における基幹病院として重要な役割を果たしてきたし、今後も引き続き同様の役割を果たしていかなければならないと考えられる。

ここで、国(総務省)による近年の公立病院改革について、若干触れてみたい。

公立病院は、救急・小児・周産期・災害・精神医療などの不採算・特殊部門や、がん治療等の高度・先進医療、医療過疎地である山間へき地・離島における地域医療など、民間では採算性を確保する上で困難な医療を担ってきた。しかし、その多くが経営状況の悪化や医師不足等のために医療提供体制の維持が極めて厳しい状況になっていたことから、平成19年12月、総務省は公立病院改革ガイドラインを策定し、病院事業を設置する地方公共団体に対し公立病院改革プランの策定を要請。各地方公共団体は、同プランを策定し、改革の取組を実施してきたところである。

同ガイドラインでは、公立病院が安定的かつ自律的な経営の下で良質な医療を継続して提供できる体制を構築するためには、「経営効率化、再編・ネットワーク化、経営形態の見直し」という3つの視点に立った改革を一体的に推進することが必要とされている。

公立病院改革プランに基づく取組について、総務省は、「再編・ネットワーク化や経営形態の見直しに取り組む病院が大幅に増加するとともに、経常損益が黒字である病院の割合が、公立病院改革プラン策定前の約3割から約5割にまで改善するなど一定の成果を上げている」とし、「平成25年度までに策定された再編・ネットワーク化に係る計画に基づき、病院の統合・再編に取り組んでいる事例は65ケース、162の病院」としている。

総務省による公立病院改革は、なおも続く。

公立病院改革ガイドラインに基づく各種の取組によって一定の成果が上がりつつあると認めながらも、依然として、医師不足等の厳しい環境が続き、持続可能な経営を確保しきれていない病院も多く、また、人口減少や少子高齢化が急速に進展する中で医療需要が大きく変化することが見込まれ、地域ごとに適切な医療提供体制の再構築に取り組んでいくことがますます必要との判断の下、総務省は、平成27年3月、新公立病院改革ガイドラインを策定し、病院事業を設置している地方公共団体に対し更なる改革の取組を要請した。

同ガイドラインの内容について詳述はしないが、病院事業を設置する地方公共団体が新公立病院改革プランを策定し、病院機能の見直しや病院事業経営の改革に総合的に取り組むことを求めるものである。

同プランは、平成28年度末までに策定し平成32年度までの期間を対象として策定することが標準とされている。前述した3つの視点に「地域医療構想を踏まえた役割の明確化」を加えた4つの視点に立って策定することとされ、とりわけ、都道府県が策定する地域医療構想は各地域の医療提供体制の将来の目指すべき姿を明らかにするものであることから、各公立病院の果たすべき役割は、この構想を踏まえたものでなければならないとされている。

4 公的医療機関の統合再編事例

本稿の目的は、公的医療機関の統合再編事例を通して、その背景や要因、メリット等を明らかにするとともに、本県におけるその可能性について考察することである。

この目的を達成するため選定し、その内容等を検討した統合再編事例が表2に掲げる5つの事例である。

これらの事例の選定に際しては、報道や総務省作成の資料等を参考にするとともに、平成20年度以降の比較的新しい事例であり、かつ、開設者の異なる医療機関同士の統合再編事例を選定することとした。

なお、表2に掲げる5つの事例のうち事例1・2・3・5が、地方公共団体が公立病院改革プランを策定の上、病院の統合再編に取り組んだケースである。

それでは、個々の事例について、主として統合再編に至った事情や背景、目的等に焦点を当てながら、具体的な内容を見ていくこととする。

表2  公的医療機関の統合再編事例表2  公的医療機関の統合再編事例
(注)各事例に係る医療機関又は関係地方公共団体のホームーページ等より作成

【事例1】山形県立日本海病院と酒田市立酒田病院の統合再編

山形県立日本海病院と酒田市立酒田病院は、北庄内地域の中核的な医療機関として高度医療や専門医療を提供するとともに、地域住民の健康を支えてきた。しかし、両病院では医師不足の進行から勤務医の過重労働が更に悪化し、地域医療の質の確保が困難となり、また今後、老朽化した施設の建替え等による償還金が膨らみ共倒れになるとの懸念の声も上がっていた。

一方、両病院の物理的な距離は2q程度と近く診療科も重複していたため統合再編論が浮上し、平成18年9月、経営の効率性と庄内地域全体の健全な医療提供という観点から知事と市長が統合再編に合意。そして、平成20年4月、両病院の統合再編により日本海総合病院と日本海総合病院酒田医療センターが新たに誕生するとともに、その運営については、県市が共同で設立した地方独立行政法人山形県・酒田市病院機構が行うこととなったのである。

本事例に関しては、「収支を大きく改善するとともに医師不足を解消し、病院関係者らの注目を集めている。地域中核病院の統合、経営モデルとして全国から視察が絶えない」との報道があり、統合再編によるプラス効果と考えられる次のような記述もあるので紹介しておきたい。

  • 急性期の患者を1か所に集めたことで、施設と医療機器の稼働率が飛躍的に伸びた。
  • 重複していた診療科を整理し、科ごとの医師数を増やすことで手術件数が増加。入院患者の平均在院日数の短縮と合わせて受け取る診療報酬の増加につなげた。
  • 機能強化とともに経営の効率化も徹底。統合前の07年度は両病院合わせて5億円近い赤字だった単年度収支が、初年度に1億2233万円の黒字に転換、以後7年連続で黒字決算。
  • 人材確保も経営改善とともに軌道に乗る。全体で病床を168減らす一方、医師は約30人、スタッフは200人余り増えた。
【事例2】独立行政法人国立病院機構西群馬病院と渋川市立渋川総合病院の統合再編

群馬県の渋川保健医療圏では、圏域内に拠点となる病院がなく、入院患者や救急搬送の状況から見て、隣接する前橋保健医療圏に対する依存関係が強い状況にあった。

独立行政法人国立病院機構西群馬病院は、渋川市の中心部から北西約8q、標高約500mに位置し、冬季は道が凍結するなど患者等の利便性に問題を抱えると同時に建物の老朽化が進んでいた。同病院では、以前よりがんの専門病院としてだけでなく広く一般診療を行わなければならないと考えていたことから、施設を移転し新たに整備する計画を進めていた。一方、渋川市立渋川総合病院では、医師の新臨床研修制度の影響で医師が集まらず経営難が続き、渋川市から多額の繰入金が必要となるなど病院経営の安定化に課題を抱えていた。

こうした中、平成22年度群馬県地域医療再生計画に基づき、地域医療の一層の充実に向けて両病院を統合再編し、新たな拠点病院として独立行政法人国立病院機構渋川医療センターを整備することとされ、平成28年4月に開設に至ったものである。

同センターによると、統合再編の成果として医師の増員に伴い、総合診療科、循環器内科など新たに診療科が増えて診療機能の充実が図られた結果、患者数が増加し経営面でプラス効果をもたらしつつあるという。中でも紹介患者数は、平成27年度の月平均値180件に対し、平成28年度上半期の月平均値は627件と大幅に増えている。また、病院群輪番制当番日の救急患者受入状況は、平成28年度の対前年度比較(4月〜9月)で入院患者数が約1.6倍、外来患者数が約2倍となっている。救急車による搬送は2倍弱に伸びているが、渋川保健医療圏全体で見ても32%の増となっており、前橋保健医療圏への流出を防いでいるとのことである。

【事例3】掛川市立総合病院と袋井市立袋井市民病院の統合再編

静岡県の中東遠保健医療圏は5市1町で構成され、それぞれの市町が公立病院を有していた。このうち掛川市立総合病院と袋井市立袋井市民病院は、国による医療制度改革や医師の新臨床研修制度の創設が進められる中、共に医師不足が顕著になっていた。袋井市民病院では医師不足により一部の診療科で入院治療を休止せざるを得ない状況となるなど大変厳しい経営状況も見られ、また、両病院の建物や設備の老朽化が進み、建替えの時期も迫っていた。

こうした中、平成18年10月に袋井市の「今後の病院のあり方に関する検討委員会」から「掛川市立総合病院との統合が望ましい」との提言が出され、平成19年1月には掛川市の「掛川市立総合病院のあり方に関する検討委員会」から「袋井市との統合、並びに近隣自治体との連携、統合、再編による新病院を目指すべき」との提言が出された。これらの提言を契機に統合協議が開始され、新病院建設協議会の設置等種々の手続を経て、平成25年5月、同保健医療圏の基幹病院として、両市民をはじめ地域住民へ質の高い医療を将来にわたり提供することを目的に、掛川市・袋井市病院企業団立中東遠総合医療センターが開設されたのである。

なお、中東遠総合医療センターでは、統合の成果として次の事柄を挙げている。

  • 入院患者数、外来患者数、救急車搬送件数等の診療実績の向上
  • 最重要課題の1つであった医師数の増加
  • 医療資源の集約による医療の質の向上と地域医療の崩壊の回避
  • 救急医療の質の向上(断らない救急)と市民の安心な暮らし
  • 災害時医療の見直しによる地域全体の防災力の向上
【事例4】兵庫県立柏原病院と柏原赤十字病院の統合再編

兵庫県立柏原病院は急性期を中心とした医療を、柏原赤十字病院は予防医療や回復期等を中心とした医療を提供し、それぞれが丹波圏域における中核的医療機関としての役割を果たしてきた。しかし、近年は国の医療制度改革や医師の新臨床研修制度の影響等により、共に医師不足による診療機能の低下や経営の悪化が深刻な問題となっていた。また、両病院は、診療機能の低下や圏域外への救急患者搬送等による症例数の減少、医師数の減少に伴う若手医師への指導体制の弱体化等により、中堅・若手医師にとって魅力の乏しい病院となっていた。さらに、両病院とも施設の老朽化・狭隘化が進み、早期の建替整備が必要な状況にもあった。

こうした状況の中、平成23年度に設置された「丹波市域の今後の医療提供体制のあり方に関する検討会」から両病院の統合再編が最も望ましいとの提言がなされ、この提言内容等を踏まえて検討が重ねられた結果、地域医療に関わる人材育成の中核病院としての役割を果たし、丹波圏域において安定的・継続的に良質な医療を提供するため、平成30年度を目途に両病院を統合再編し、新病院を開設することとされたのである。

【事例5】奈良県立五條病院、吉野町国民健康保険吉野病院、大淀町立大淀病院の統合再編

奈良県南和地域には、奈良県立五條病院、吉野町国民健康保険吉野病院及び大淀町立大淀病院という3つの公立病院があったが、いずれも急性期医療を提供する救急病院であったため、回復期・維持期に移行した患者には十分な対応ができず、地域で治療を行える患者は、平成20年度までの5年間で入院・外来とも3病院の合計で約25%も減少していた。また、いずれも救急医療に対応する医師を十分確保できず、患者を他地域の病院に搬送せざるを得なくなっていたため、南和地域の住民で入院が必要な患者の約60%が県外や県内他地域の病院に入院するという状況が見られた。このように患者数が減少し、医業収益が落ち込んだ結果、3病院はいずれも経営状況が逼迫し、毎年度多額の実質損失が生じる厳しい財務状態が続いていた。さらに、五條病院及び大淀病院では、未耐震・老朽化建物の建替え・改修が早急に必要とされていた。

こういった困難な状況を打開するため、平成22年5月、奈良県・市町村長サミットが開催され、南和の医療等に関する協議会の設立について合意。平成24年1月には、南和広域医療組合となり、どうすれば南和地域の医療を守ることができるのか検討が続けられてきた。

そして、平成28年4月、3つの公立病院を統合再編し、急性期及び回復期医療を担う病院として、南奈良総合医療センターが開設されたのである。同時に慢性期医療等を担う吉野病院を改修し、同じく慢性期医療を担うために平成29年4月にリニューアルオープンする五條病院と合わせ、南和広域医療企業団(南和広域医療組合から移行)の3病院で急性期から回復期、慢性期までのシームレスな医療提供体制が構築されることとなる。

5 統合再編の要因とメリット等

ここでは、上記の事例を通して見た統合再編に至った事情や背景、要因と、そのメリット等について考えてみたい。各事例に共通して見られる事情等として、次の2つが挙げられる。

1つは、統合再編の当事者である医療機関のほとんどが医師不足、医師の確保が困難という事情を抱えていたことである。

当然のことながら、医師なくして医療機関は成り立ち得ない。退職等で医師が不足すると、当該医療機関で勤務する他の医師はより多忙となって負担が増え、それを嫌った医師が辞めて医師不足が更に深刻化してしまうようなことが起こり得る。医師不足による診療機能の低下は、必然的に患者数の減少等をもたらし、経営面に悪影響を及ぼすことは明らかであろう。事例3のように医師不足により一部の診療科で入院治療を休止せざるを得ない状況となる場合もあり、最終的には病院の閉鎖という事態が生じる可能性もあると思われる。

こうした事態を未然に防ぎ、医師という限られた医療資源を確保して有効に活用し、地域住民に対し良質な医療を将来にわたって安定的に提供することが可能となる医療供給体制を構築しようとすることこそ、統合再編の大きな狙いであり要因の1つと考えられる。

2つ目は、統合再編の対象となった医療機関のうち少なくとも一方が、病院施設の老朽化等により、できるだけ早期に建物の建替え等が必要という事情を抱えていたことである。

病院の建設には、その規模の程度にもよるものの、建物の性格上求められる安全性、快適性、機能性等の面から多額の費用がかかることは言うまでもない。特に統合再編に係る医療機関が共に施設の老朽化が進んでいる場合は、それぞれが建替えを行うと莫大な建設費用が必要となるであろう。また、公立病院の場合は、その費用の原資は主として税金であり、将来世代の負担も発生することから、可能な限り建設費用が抑えられることが望ましい。

このように建物の老朽化や狭隘化が進み、建替え等の時期が迫っている状況の中で、厳しい経営状況と相俟って、それぞれの医療機関による施設、設備等に対する二重投資を回避し、互いに費用の削減を目指すことも、両者を統合再編に向かわせる要因の1つと言えるだろう。

次に、医療機関の統合再編がもたらすメリット等について考えてみることとする。

事例1、事例2及び事例3について、統合再編による成果等をそれぞれ紹介している。これらに共通しているのは、医師の確保という統合再編前に抱えていた重要な課題に対し、統合再編によって以前より医師数が増加し、医師不足の緩和が図られたことである。医師数の増加に伴い、患者数や手術件数など診療実績が向上したことも共通している。診療実績の向上は経営の改善に結びつき、事例1では、統合再編前は両病院合わせて多額の赤字であった単年度収支が、統合再編初年度に黒字に転換し、以後黒字決算が続いている。また、事例3で紹介した「医療資源の集約による医療の質の向上と地域医療の崩壊の回避」、「救急医療の質の向上と市民の安心な暮らし」等は、医療機関自体の受けるメリットとは別に、個々の住民が直接感じることは少ないかもしれないが、当該医療機関の存在する地域全体が享受するメリットと言えよう。

なお、患者や医療機関等が受けると思われるメリット及びデメリットについて、前述の事例内容を勘案の上、私見等も加え、表3としてまとめてみたので参考までに掲げておく。

表3  医療機関の統合により考えられるメリット・デメリット表3  医療機関の統合により考えられるメリット・デメリット

6 結びにかえて 〜本県における公的医療機関の統合再編の可能性〜

本県における最近の公的医療機関の統合再編事例として、くしもと町立病院の例がある。

串本町は、平成17年4月、隣接する旧串本町と旧古座町が合併して誕生。合併により国保直営串本病院(106床)と国保古座川病院(60床)を経営することとなったが、将来にわたって2つの町立病院を並立経営することは行政効率や財政上好ましくなく、早急に統合することが不可欠であった。また、共に地震や津波の被害を受けやすい場所にあり、老朽化が進み、耐震性にも問題があった。さらに、近年の多様化、高度化した医療需要に対応するためには、医療機器や医療体制の整備が不可欠であるが、医師確保が困難な上、経営状況の厳しい町立病院が単独で応えていくことは財政的にも困難であったことから、平成23年11月、両病院を統合再編し、新たな場所にくしもと町立病院(130床)が開設されたのである。

この事例は、合併を機に、それぞれが有していた町立病院を1つにするための統合再編が進められたという特殊な事例とも言えるが、ここにもやはり施設の老朽化と医師の確保が困難という前述の事例と共通する事情が見受けられるのである。

果たして近い将来、本県において公的医療機関の統合再編は起こるのであろうか。

公的医療機関の統合再編のパターンには、公的医療機関同士に限らず、相手が国や民間の医療機関である場合など様々なケースが想定されるが、今回の事例調査を通して導き出されたことは、比較的近接している複数の医療機関が互いに医師の確保が困難、施設の老朽化や狭隘化、厳しい経営状況等、当該医療機関の存続を揺るがすような事態に直面し、その事態の解決を迫られつつあるときなどに統合再編の機運が醸成されるのではなかろうか、ということである。

施設の老朽化等の問題はさておき、医師の確保が困難なことは本県も例外ではない。

本県では、人口10万人当たりの医療施設従事医師数は259.2人(平成22年末現在)と全国平均の219.0人を上回っているが、実際は半数以上の医師が和歌山市に集中し、地域偏在が生じている。また、最近では医師の診療科偏在が生じていることも耳にする。

医師の確保は無論、医師の地域偏在等の緩和・解消はなかなか困難なことである。

医療関係者によれば、医師を確保するには医師の養成に加え、県内への定着率をより高める必要があるという。そのためには、病床数500床程度の病院が是非とも必要で、その規模の病院であれば適切な症例数も確保でき、学生等にとって魅力的な病院となり、初期研修医も増え、後期研修医も他県に移らず本県に定着する者が増えるだろうという。こうした医師確保の観点からも、統合再編によって500床程度の病院が新たに誕生することは望ましいと言えよう。

最後に、新公立病院改革プランとの関連で統合再編に関し述べてみたい。

総務省が平成27年3月に策定した新公立病院改革ガイドラインでは、病院事業を設置する地方公共団体に対し、同ガイドラインを踏まえた新公立病院改革プランの策定を求めている。同ガイドラインは、施設の新設・建替え等を行う予定の公立病院等については、同プラン策定のタイミングを捉え、再編・ネットワーク化の必要性について十分検討すべきとしている。

当然のことと思われるが、総務省も、老朽化した病院施設の建替え等を行う時期こそ、公立病院の統合再編を進める好機であると考えているのであろう。

公立病院を有する県内の地方公共団体は、平成29年3月までに同プランを策定しなければならないが、その中で当該公立病院の統合再編を位置づける団体は果たしてあるのだろうか。また、公立病院を含めた公的医療機関の中で、将来の統合再編を視野に入れた検討を行う医療機関は出てくるのであろうか。

本県においても公的医療機関の統合再編の可能性は十分あると考えられるし、その実現を強く期待している。本県では、和歌山県立医科大学が医師の養成に力を注ぐとともに県全域に医師を派遣し地域医療に大きく貢献しているが、それでも医師の地域偏在等が生じ、現に医師の確保に困窮する公立病院が存在している。こうした中、地域住民が安心して質の高い医療を継続的に受けられる医療提供体制を整備するために、同時に、医師の疲弊を防ぎ、医師という限られた医療資源を集約化し効率的かつ有効に活用する観点からも、統合再編は進められるべきものと考えている。

公的医療機関の統合再編は一朝一夕に実現するものではないし、実現させるには県等の支援体制の構築も重要であり、不可欠であろう。関係者のご尽力を願いつつ、本稿を閉じたい。

【参考文献・資料】

  • 厚生労働省「平成26年(2014)医療施設(静態・動態)調査・病院報告の結果」、平成27年11月19日公表
  • 総務省「公立病院改革ガイドライン」(平成19年12月24日付け自治財政局長通知)及び「新公立病院改革ガイドライン」(平成27年3月31日付け自治財政局長通知)
  • 地方独立行政法人山形県・酒田市病院機構改革プラン(平成21年2月策定)
  • 栗谷芳樹「日本海総合病院の概要 再編・統合と独法に至る経緯、移行後の状況について」、http://www.city.asahi.lg.jp/section/kikaku/files/2013-0313-1055.pdf、2016年8月10日参照
  • 河北新報オンラインニュース 2015年12月3日「<日本海総合病院>統合モデル 全国から注目」、http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201512/20151203_53006.html、2016年7月7日参照
  • 平成22年度群馬県地域医療再生計画
  • 独立行政法人国立病院機構西群馬病院寄稿、斎藤龍生「国立病院機構西群馬病院と渋川市立渋川総合病院の再編統合で整備される『渋川医療センター』」、建設グラフ2016年2月号、http://www.jiti.co.jp/graph/page1602/0219k/index.htm、2016年6月2日参照
  • 渋川市「広報しぶかわ」 平成27年2月1日号(215)
  • 独立行政法人国立病院機構渋川医療センター実地調査資料 平成28年10月26日
  • 掛川市「掛川市立総合病院経営改善計画」(平成21年3月12日策定)
  • 袋井市「袋井市民病院改革プラン」(平成21年3月19日策定)、「広報ふくろい」平成21年5月1日号
  • 中東遠総合医療センターHP、http://www.chutoen-hp.shizuoka.jp/、2016年6月24日参照
  • 掛川市HP「健康と命の砦『中東遠総合医療センター』への期待」、http://www.city.kakegawa.shizuoka.jp/sunkan/sunkan512.html、2016年7月27日参照
  • 兵庫県病院局 日本赤十字社兵庫県支部「県立柏原病院と柏原赤十字病院の統合再編基本計画」(平成27年2月策定)
  • 南和広域医療企業団HP、http://nanwairyou.jp/、2016年7月15日参照
  • 串本町「第1次串本町長期総合計画」(平成18年度策定)
  • 和歌山県「第六次和歌山県保健医療計画」(平成25年3月策定)ほか

(2017.4)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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