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成熟期を自分らしく生きる

参与  嶋 洋子

世界一の長寿を誇る我が国にっぽん。特に女性の平均寿命は86歳。人生100年時代がすぐそこまで来ている。和歌山県の65歳以上の高齢者は(法律や制度では65歳からが高齢者ということらしいがいざ自分がその近くまできた現在、高齢者という自覚がまだないが)は272,177名。高齢者率は26.4%。そのうち一人ぐらし高齢者は20.6%。要支援・要介護者は19.9%。ということは高齢者の80%は元気で地域社会の一員として生活をしているということになる。

まだまだ働きたい、社会に貢献したい、など年齢にとらわれず自由で生き生きとした生活を送りたいと考え、また実行している先輩たちが私の周りにも多くいる。語り部として和歌山の歴史を伝えている人たち、培ってきた技術を後輩たちに伝授してる人たち、伝統工芸を教えている人たち、農業の第一歩を手助けしている人たち、子どもたちの安全を、と登下校に声かけ運動をしている人たち、昔の遊びを教えるために校外講師として学校訪問をしている人たち等々、自分の持てるスキルや知識をフルに活用し、地域の活性化に貢献している人たちが実に多くいる。

厚生労働省では、いくつになっても働ける社会の実現に向けて、65歳までの段階的な定年の引き上げ、継続雇用の制度の導入等が着実に実施されるよう、事業主への指導・支援に取り組み、また経済産業省では大企業の退職者などを「新現役」と位置付け、その持てる技術・ノウハウを地域や中小企業に活かすなど、新現役には生き甲斐を見出してもらいつつ、中小企業への支援を行っている。が、それら働けるための施策は、男性7人に対して女性が10人という多数を占める女性へ、ではなく、ほとんど男性向けで、ボランティアは主に女性が担う、つまりペイドワークは男性、アンペイドワークは女性、と決めつけているように感じるのは女性である私の偏見だろうか。

「女性と貧困」。若い時からもそうであったし、高齢になってからもそれはついて回る。高齢社会をよくする女性の会理事長の樋口恵子さんは「女は貧乏に生まれない。女を生きる中で貧乏に落ち込むのだ」と言っている。女性の就労は相変わらずM字カーブ、すなわち20歳前半から徐々に上がり始めた労働力人口が30歳代でガクンと急降下し、40歳代後半でまた少し上がり、55歳ぐらいから下がる、というカーブを形成している。結婚し、子育てをするため就労がいったん途切れ、子育てが一段落したころにまた働きだす、といった就労のカーブは、様々なこと、例えばすぐやめるから責任ある仕事は任せない、スキルを身につけるための研修をさせない、管理職への登用は見送る、という口実にされてきた。女性の年間収入は正規か非正規かという雇用形態による収入格差だけではなく、同じ正規雇用でも女性は男性に比べて収入が極めて低く、女性の賃金格差(ジェンダーギャップ)は平然とした顔をして存在している。

和歌山県でも、10人以上雇用の民間企業では「決まって支給する給与額」の平均額は、労働時間の差が2時間であるにもかかわらず、男性343,000円に対し、女性は245,600円、となっている。なかでも50歳から54歳の年齢層ではその差が189,000円(月額でですよ!)となり最も大きい。これは、いったん仕事を辞めて再度働きだす女性はその雇用条件が極めて厳しいことを端的に表している。

こういった現実を踏まえ、内閣府が出した第3次男女共同参画基本計画の政府案の中では「働くことを希望する女性が出産、子育て、介護などにより就業を中断することなく継続することができるように支援するとともに仕事の質の向上を促進する。また雇用における男女の均等な機会と待遇の確保に加えて、固定的性別役割意識の解消、長時間労働の抑制や子育て支援策の充実等による仕事と生活の調和など関係する様々な取組を積極的に推進する。」とM字カーブ問題の解消に向けた取り組みを重要課題として掲げている。

和歌山県での男女共同参画に関する意識調査では、実際の役割分担として「男性は仕事、女性は家庭」が21.6%。「男性は仕事、女性は家庭に差し支えにない範囲で仕事」が24.7%。「男女ともに仕事、家庭は主に女性」が20.4%。「男女ともに仕事、家庭も男女で分担」は10.7%。とある。依然として女性は家庭第一といった性別による役割分担意識が強いことが分かる。そしてそれが男女の賃金格差を生んでいる大きな要因となって「女は女を生きている中で貧乏」になる。

年金は生涯賃金によってその額が確定する。賃金格差は当然年金格差となって高齢生活を襲う。女性は貧困から抜けだせない構造になっているということになる。それゆえか、働きたいという女性高齢者は少なくない。総務省の就業構造基本調査によると、65歳から69歳の女性の半数近くが就業意欲を持っており、その理由として「収入を得る必要がある」と答える女性が男性よりも多くなっている。

国連開発計画が発表している「人間開発報告書」によると「長寿、教育、所得」の充足度を示す人間開発指数(HDI)は日本の女性は高い順位(8位)であるが政治および経済活動への参画状況を示すジェンダーエンパワメント(GEM)指数は58位と低位にある。これはなにを意味するのか。日本の女性は能力があるにも関わらずそれが活かされていない、ということを表している。力はある。その力を発揮していき、成熟期を生き抜いていきましょう、と私は提案する。

お金は、多くは必要はないけれど、でもないよりあったほうが楽しい。さあ、働こう!働いて収入を得て、社会とつながりを持って、老後を心身ともに生き生きと豊かに過ごしていきましょう。家事や子育ての能力、スキルや知恵を強い武器にして仕事を創出するのもよし、培ってきたネットワークを活かしてNPO法人を立ち上げコミュニティビジネスをはじめるのもよし。何か人さまの役にたちたい、と身近な活動をはじめるのもよし。誰もが経験したことのない長い人生を充実したものとするために、私たちが安心して生活していくために「労働」すること、樋口恵子さんが言う「老働力」がこれからの人生を豊かにし、ひいては社会の閉塞感を打破するのかもしれない。

夫を先に見送り一人暮らしになる女性は多い。またその時間は確実に長くなってくる。一人ではさびしすぎる。友人の存在が人生を豊かにする。若い時にどれだけ幅広い分野の友人を持っているか、またいくつになっても人の輪に入っていき友情を育んでいけるか、で人生の彩りが違ってくる。こう思っているところにある記事が目に入った。

「フランスで進む高齢女性の連帯」。高齢女性が自分たちで運営する自主管理ホームの建設を通して新しい人間の「連帯」を模索し始めているとの12月9日付け毎日新聞朝刊の記事である。運動の中心は83歳の女性だ。「市民としての高齢者は、あらゆる人々、特に若い人や子供を援助し、環境に配慮した生活をすること」をスローガンに掲げ、「連帯のパワーによって高齢者の方から積極的に社会に働きかけよう」というものであると記事は書いている。

日本でも「シェアハウス」などができている。高齢女性がプライバシー保護を確保しながら共同生活を営むことは人生の成熟期を生きる上での選択肢として考えていくべきだと思う。

「今日が最も若く、今が人生の始まり」私の好きな言葉で人生の成熟期を楽しみたい。


*参考文献

  • 樋口恵子著「女一生の働き方」
  • 平成21年度男女共同参画白書
  • 平成22年度和歌山県男女共同参画年次報告書
  • 平成22年度和歌山県高齢者状況
  • 第3次男女共同参画基本計画(案)
  • 毎日新聞2010年12月9日付け朝刊

(2011.1)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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