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観光の和歌山をめざして――わかやま観光産業推進会議報告

研究員  谷 奈々

1.本会議設置の目的

平成15年6月、和歌山商工会議所を事務局として、「わかやま観光産業推進会議」が設置された。本事業は、和歌山商工会議所の新規重点事業として実施されたもので、会長に島正博会頭、座長に和歌山大学・竹内昭浩教授、会議の構成員は、市内の観光関連団体代表者、大学、行政、研究機関等の22名から成り、当研究所も推進会議及びワーキングにメンバーとして参加した。

本推進会議の目的・内容は、世界的な大交流時代を迎える中で、観光産業は21世紀の基幹産業のひとつと位置付けられるものであり、地域の特性を活かした振興策や裾野の広い観光産業のあり方について検討し、地域の活性化に寄与することをめざすもので、具体的な活動内容としては、観光産業を取り巻く現状や課題を知るためのアンケート調査等の実施、観光振興をテーマとする講演会やシンポジウムの開催、観光および観光産業の振興に資する提言活動等である。

推進会議全体会議は平成15年6月から翌16年12月までの期間に5回開催された。随時、ワーキング(構成は、委員2名、県・和歌山市の観光所管課班長各1名、会議所事務局2名)が開かれ、全体会議への報告及び提案内容等について協議した。以下は、その概要である。

2.「わかやまの観光振興」に係るアンケート調査

本調査は、県外特に首都圏の人々が、和歌山及び和歌山の観光資源や旅行について、どのようなイメージを持っているかを知るため、平成15年9月17日から10月17日の期間、東京都内のJTB社員(148名)及び東京都内の商工会議所職員とその家族(167名)を対象に実施したものである。(計315名。うち男性185名 女性111名 不明19名。配布数805 回収率39.1%)

【調査結果の概要】
1.観光資源

豊かな自然環境への憧れ、歴史文化資源への関心は高いが、具体的な旅行動機に結びついていない。下記の「(6)和歌山を旅行する目的は?」に見られるように、「食べ歩き」旅行に対する期待は比較的高いが、魚や果物などの物産に対する評価は高いものの、和歌山の食については、ラーメンを除けばほとんど知られていない。

外部からの訪問者に対して、観光資源やスポットの目玉的なものが不明確で、ルートが組まれにくい。

2.PR・宣伝

和歌山、特に熊野の知名度は、とりわけ若年層の間では低い。「世界遺産」の認定は、和歌山の観光にとって大きなチャンスではあるが、そのことも県外では十分に知られているとはいえず、チャンスを生かすに至っていない。しかし、下記の問5にみられるように、機会があれば一度は旅行してみたいと応える層は多く、潜在マーケットは大きい。

方法については、問4に示されているように、「テレビコマーシャル」や、「電車や駅の広告」という不特定多数者を対象とした大量宣伝の効果は低いようである。多様なニーズに対応した個別かつ具体的な情報の提供が求められる。

3.交通アクセス

調査対象者が首都圏在住者であったため、特に交通アクセスに対する評価は厳しい。近畿圏には京都や奈良という歴史と伝統を誇る地域や、大阪・神戸の大都市圏があり、それらのインパクトと比較すると、不利に働くことも否めない。

また、観光スポット間の交通網の不備等、1次アクセスのみならず、2次、3次のアクセスの改善についての要望が多い。

【主な設問と回答】
(1)「和歌山」のイメージは?(複数回答)

「和歌山」のイメージは?

「自然」と「ラーメン」と答えた人が多いが、若年層になるほど「ラーメン」派が多い。40歳を境として、「温泉」「魚・果物」「名所旧跡」と答えた人が多くなる傾向。

「その他」としては、「梅干、高校野球、炭、田舎、吉宗」等があった。

(2)和歌山の観光スポットで知っている所は?(複数回答)

和歌山の観光スポットで知っている所は?

「白浜」「勝浦・那智の滝」「高野山」が最も多く、次いで、「熊野三山・熊野古道」が続いているが、「熊野三山・古道」については、20歳代での知名度が他の年齢層に比べて低い。

「和歌山城」「和歌浦」等、和歌山市内の観光スポットは女性の方によく知られている。

「その他」であげられていたのは、「有田、根来寺、鯨漁(※太地町のことか?)」等。

(3)和歌山へ旅行する際の交通手段は?(2つ以内選択)

和歌山へ旅行する際の交通手段は?

全体では、「新幹線」「飛行機」が多い。「自家用車」は、「新幹線の」1/4である。女性では、「飛行機」が最も多い。男女とも、「夜行バス」「旅客船」と答えた人は少ない。「その他」欄に、「行き方がわからない」「交通手段が問題」との記載もあった。

(4)観光情報の入手先は?(2つ以内)

観光情報の入手先は?

「テレビの旅行番組」「雑誌や新聞の特集記事」「ガイドブック」「インターネット」が4大情報源であるが、若年層では「インターネット」が最も多い。

「テレビコマーシャル」「電車や駅の広告」「ダイレクトメール」「イベント」等の不特定多数を対象とした大量広告の効果はきわめて少ない。

(5)和歌山へ観光で行ったことがあるか(行き先は)? 行きたいと思うか?

和歌山へ観光で行ったことがあるか(行き先は)? 行きたいと思うか?

若年層の方が、「行ったことがない」人が多い。

行き先としては、「串本、熊野、白浜、那智勝浦、高野山、和歌山市(和歌山城、紀三井寺、マリーナシティ)、根来寺、新宮」等。

「行ったことがない」人は多いが、反面、「行きたいと思う」と答えた人も多数に上る。

(6)和歌山を旅行する目的は?(2つ以内)

和歌山を旅行する目的は?

「自然」「温泉」「史跡」「食べ歩き」が多い。「テーマパーク」「祭り・イベント」「体験・参加型」と答えた人はやや少ない。「その他」では、「ラーメンめぐり」があげられていた。

(7)自由意見(主なものを分類)

≪観光資源について≫

  • 『八代将軍吉宗誕生の地』がいまひとつ活用されていないのでは?
  • 和歌山と聞いて、特にイメージできるものなし。ゆったりとして、のどかな場所で安らぎたいかナと思う。
  • 東京からだと、東は伊勢志摩、西は大阪で止まってしまう。やはり和歌山にしかない古くからの観光地(高野山・熊野三山・那智の滝etc.)を大切にして魅力を高めていけば、おのずから人気は高まる。関西空港の活用も重要だと思う。
  • 新しい観光地を目指すのは大事だと思うが、中途半端なテーマパークを造ったりしても、それで訪れたいとは考えない。歴史(徳川、根来、熊野)と自然を中心にした長期滞在型の南紀の旅が理想。

≪PR・広報≫

  • 観光スポットとして何が有名なのか、あまり知らない。これといったものを出してPRする必要があるのでは?
  • 年に数回しかない長期休暇には、どうしてもリゾートイメージのある場所に行きたくなる(北海道、沖縄、軽井沢等)。そういう場所には雑誌等でも、見れば行きたくなるような宿や料理が取り上げられているので、余計にそう思うのかもしれないが。
  • 遠いので、2〜3泊したいと思うが、これという観光名所が思い当たらず、もてあましそうな気がする。地理的にも三重県と混同しがち。洞窟、鍾乳洞、滝等で素敵な場所があれば是非行きたいが…。遠い地域(関東)から旅行するとなると、相当の内容・企画がなければ旅行の計画も立てる気が起こらない。
  • 観光PRの結果、「まち」がスレてしまわないようにしてほしい。人が大勢押し寄せる観光名所等は味気ない。個々の思い出に残るための、少しの手助けと心遣いをしてくれるだけでよい。

≪交通アクセス≫

  • 直行で行く方法があるのか? 新幹線を使って大阪で降りて、和歌山市内は案外近いのかも。しかし、行ったことがない。機会があれば、足を運んでみたいと思うが。
  • 勝浦から白浜の間に定期観光バスがあまりないので、観光タクシーなどの高い料金でしか自由見学が出来ない。他の観光地では各主要駅からの定期観光バスが多くあり、コースを選択できるので、フリープランの旅行に対応できるよう足の便を考慮してほしい。
  • 東京から行くには便が悪い。東京の人が茨城県にあまり行かないのと同じで、関西方面等から集客するなら買い物ゾーン・施設の割安感とか、スポーツ球団やチームの誘致など交通費を使っても行く価値のあるものが必要では?

≪その他≫

  • 正直なところ、今まで和歌山に行ってみたいと思ったことは一度もなかった。和歌山はラーメンのイメージがあるが、和歌山ラーメンは、都内のお店でも食べられる。和歌山ならでは、和歌山へ行かないと体験できないというような魅力的なものがあれば、行ってみたいと思う。
  • 普段、和歌山について知る機会がないことに、アンケートに答えて初めて気づいた。

3.観光振興に向けた取組みの課題と要望

推進会議全体会議において、構成メンバー及びその属する団体等が、世界遺産登録に伴う観光振興について、どのような課題や要望をもっているかを調査した。以下はその協議内容の一部である。

【和歌山市観光協会】
(1)マリンリゾートのメッカとしての「和歌山市」の宣伝

(マリーナシティ、浜の宮、片男波、和歌浦、磯ノ浦、加太をPRし、全国からのイベント等の誘致を働きかける。道路、施設の整備が課題)

(2)民間観光ガイドの充実

(和歌山市語り部クラブのメンバーを増員。和歌山城、養翠園、東照宮等、徳川ゆかりのコースや、歴史探索観光ガイド)

(3)土産品センターの充実

(和歌山市の土産品が一堂に揃う店舗が少ない中、和歌山の優良土産品を発掘して旅行者に提供し、売り場の充実を図る。)

【和歌山市名産土産品協会】

名産品の中でも民芸品は、紀南(白浜、勝浦)や高野山に種々、商品があるが、和歌山市内で名産品、特に食べ物の商品はややさびしい。今後の対応必要。

【南海電気鉄道(株)和歌山支社】

(1)和歌山にしかない観光地(海、山、自然、ブランド、グルメ等)の発掘・差別化。
(2)和歌山全体を紹介する情報などを宣伝する諸策(和歌山の位置、交通アクセス、観光地、グルメ、物産他)

【和歌山旅館同業組合】
(1)ハードの整備

(観光地の整備不足(例:和歌浦のてんぐ山)行政だけでなく、先ず地元が整備・清掃を働きかけ、整備システムづくり。海の玄関口、和歌山港に歓迎用の「ウエルカムアーチ」設置すればどうか。観光案内版の不足)

(2)ソフトの整備

(観光モデルコース設定、ガイドブックを作成(例)3時間コース、半日コース、1日コース。それぞれ交通案内、バス時刻、見どころ、食べどころ等を記載。英語のアナウンス)

(3)地域の盛り上がり

(市民一人一人が観光親善大使に。意識改革、教育が必要。観光に関する授業実施。接客マナーの向上・英語での簡単なQ&Aを用意する必要)

【和歌山ホテル協会】
(1)水と緑と歴史の街(和歌山市キャッチフレーズ)

歴史(吉宗、雑賀衆他)・水(紀ノ川、堀川、和歌山城のお堀)
史跡をどうアピールするか?(今風のものを追加して点から線、面に)

(2)和歌山ラーメン横丁・歴史+参加型祭り
(3)新しい感覚のまちづくり
【和歌山の観光を考える百人委員会】
(1)ビジットジャパンキャンペーンへの積極参加

(関空インフォメーションコーナー設置についての協力等)

(2)世界遺産登録に伴う記念企画(コンサート・ツァー・ソフト制作等)への協賛
(3)紀州鉄砲まつりの継続開催
【和歌山商工会議所観光部会】
(1)観光産業関係団体の連携強化により、相乗効果を高める。

(わかやま商工まつり産業展出展では、アイデアを結集し部会員相互の連携を強める)

(2)今後の活動展開として、それぞれの部会員が有する各種観光情報を持ち寄り、情報交換を行うと共に、観光イベント等の連携や共催の機会づくりの場を設ける。
【和歌山社会経済研究所】
(1)観光資源について

(個々の資源の集客力が弱い・既存の観光施設やプログラムの魅力が薄れつつある)

(2)観光への取組みについて

(観光客の「体験したい、学びたいetc.」というニーズに対応できるしくみ、仕掛けづくり・情報発信の工夫…市販の旅行ガイドブックに頼らない)

(3)方策案

(アウトドアスポーツ&体験インストラクター
農・林業体験・スローフードレストラン・地産地消
住民参加・ボランティアガイド
クロスメディアによる情報発信…誘発情報(旅行のきっかけ)と詳細情報の区別等)

4.今後の取組みと展望について

第5回推進会議では、観光振興に向けた中・長期的な取組みについて、意見が交わされたが、特に、和歌山市の観光資源・土産物・民芸品の不足が指摘された。また、高野・熊野の世界遺産登録による当該地域への観光客の増加は顕著であるものの、和歌山市内観光を短縮・省略したり、市内宿泊回避への不安も大きい。

しかし、従来は、観光に関わりのある様々な分野が各々動いてきたが、昨年の世界遺産登録を契機として、異業種も含めた横の連携を強固にして課題解決を図ろうという流れを生み、それをさらに高めようという気運が生まれてきた。

今後は、「様々な情報を関係団体間で共有し、連携を強化するためのシステム、場」の設置が検討される。実務レベルの調整を行う「連携協議会」のような機関を設定し、各団体に参加を募り、それぞれの分野に精通した実働部隊が実質的なエンジンとなる。

ここでは、各団体の取組み等活動情報の交換を行ったり、研究成果について意見の交換を行う等、事業活動のマッチング等による相乗効果をはかる。いずれにおいても、「21世紀における観光のあり方、魅力的な和歌山をいかに描くか」が、担い手に期待される要件であろう。

《わかやま観光産業推進会議》構成員一覧

《わかやま観光産業推進会議》構成員一覧

(2005.3)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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