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大学生が考えた(外国人)旅行者への観光・交流プラン

主任研究員  谷 奈々

1.ビジット・ジャパン

2003(平成15)年、政府は、国家事業として「ビジット・ジャパン・キャンペーン」(戦略的訪日旅行促進事業)を開始した。国土交通省は、「観光立国」を同省の成長戦略の柱に据え、国内及び国際観光の振興をはかることを目的に、2007(平成19)年1月1日、「観光立国推進基本法」が施行された。同法に基づき、同年6月、基本計画が閣議決定され、「訪日外国人旅行者数を2010(平成22)年までに1,000万人」、「日本人の海外旅行者数を平成22年までに2,000万人」、「国内における観光旅行消費額を平成22年度までに30兆円」等の数値目標が掲げられた。

2003年に521万人であった訪日外国人旅行者は、2008年に835万人となったが、2009年には679万人に落ち込んだ(要因は世界同時不況や国内外での新型インフルエンザの流行)。

2010年には、「(同年までに)訪日外国人旅行者数1,000万人を実現する」という、当初の目標はクリアできなかったが、観光庁(国土交通省の外局として、2008年10月設置)の2代目長官・溝畑宏氏(「日本が観光大国となるための司令塔兼プレイングマネージャー」と自称)をはじめとする政府、各界の働きにより、過去最高の865万人と予測される。

国土交通省によれば、2008(平成20)年度の日本の旅行消費額は23.6兆円で、そのうち、外国人旅行者が日本国内で消費する金額は、1.3兆円程度と推計されている。和歌山県の人口が100万人を切ることがほぼ確実となり、今後さらに人口減少傾向がみられる中、国内旅行需要の激化・マーケットの奪い合いと縮小が予想される。旅行業界だけでなく、全ての分野で地域経済の活性化や雇用機会の創出が望まれている。

このような全国共通の状況を打破すべく、国内旅行市場の規模を維持・拡大するため、訪日外国人観光客の増加に大きな期待が寄せられている。ビジット・ジャパン・キャンペーンでは、アジア、北米、英独仏の12の国・地域を重点市場として、プロモーションを行い、国は2013年までに、年間の訪日外国人旅行者数を1,500万人とする目標を設定し、事業を進めている。

2.外国人旅行者のニーズ

観光庁が、2010年に訪日外国人を対象に行った「日本滞在中にしたこと、次回訪問時にしたいこと」についての調査で、「滞在中にしたこと」で、最も多かったのは「日本食を食べる」、次いで「ショッピング」「繁華街を歩く」「自然・景勝地観光」となっている。また、「次回訪問時にしたいこと」は、「温泉入浴」が最も多いが、「滞在中にしたこと」で上位に入らなかった「日本の歴史・伝統文化体験」「生活文化体験」「自然体験ツァー・農漁村体験」と答えた人が多かった。

中国等アジアからのツァーの「定番」コースは、「関西空港着→京都→富士山→東京→帰国」という日本を代表する東西の観光スポットを巡るルートである。これらの旅行者が、日本を再訪した場合、自然や文化・歴史資源、山海の幸や生活文化等、様々な地域資源に恵まれた地方は、彼らにとって、新たな未知の魅力にみちた訪問地として大きな可能性をもつ。それをいかに外国人旅行者に知ってもらい、提供できるか、地元の受け入れ側の課題といえよう。

3.学生が考えた観光・交流プラン例

和歌山大学観光学部で「地域文化交流」という講座をもたせていただいている。拙い講義であるが、この講座の目的は、和歌山の活性化を考える上で、その魅力を構成する重要なテーマとなる和歌山の文化資源や、古来から進取の気性に富んだ紀州の人々による社会的・文化的交流に注目し、和歌山の豊かな文化や、本県が輩出した異色のすぐれた先人について知るきっかけとしてほしい、そして、それを交流のシーズとして生かせれば‥と考えている。

講座を平成22年度に履修した観光学部の47名の学生達に課題を与え、外国人旅行者への観光・交流プランを考えてもらった。やや粗っぽいながらも学生の視点がおもしろく、観光のバリエーションを模索するための小さなヒントが含まれているかもしれない。必ずしも、対象は外国人旅行者に限らず、県外から和歌山を訪ねる人達にも有効かもしれない。紙幅の都合により、一部を紹介したい。課題と前提条件は以下のとおりである。

課題:知合いから、外国人グループ数名(situation:関空着・和歌山滞在は2泊3日・日本訪問は3回目・日本の歴史や現代の文化にも関心あり)に、和歌山を案内してほしいと頼まれた。
「前に、白浜や勝浦に泊まったことがあるので、それ以外のところに泊まりたい。和歌山の文化や歴史も訪ねたい。出来れば、若い人達と交流したい」との希望。
あなたは、どんなプランをたてますか?
A 有田市と高野山で、体験と交流を (4年・女性)

自分が逆の立場になって考えてみた。大学3年の夏休みに韓国を訪れた。その際、ソウルといったメジャーな都市だけでなく、いくつかの地方都市を訪れた。ソウルのような都会とは違い、楽しめるものは少なかった。しかし、そこで現地の学生と交流をしながら、伝統衣装を着たり、キムチ作りやスポーツを楽しむことができ、思い出深いものになった。

今回は、日本に来るのが初めてではない外国人なので、少しマイナーな都市を紹介し、体験を通して今まで知らなかった発見をしてもらいたいと思う。

有田市は、昔は、海水浴を売りにした観光地であったが、今は過疎化も進み、訪れる人は減少している。しかし、市は人を呼び込みたいと考えているらしい。そこで、外国人を呼び込むことを思いついた。有田市はみかんで有名である。体験型交流ツァーを考えた。

まず、大学生に協力してもらい、一緒に有田市へ行く。そこで、みかん狩りを体験する。みかん農家に一泊し、地元の人に昔のことなど話してもらう。農家と学生、外国人の間で、異文化理解が深まり、今まで知らなかった発見ができ、地域再生のヒントが見つかるかもしれない。また、有田市には温泉もあるので、日本通の人は楽しめると思う。夕食は、有田市名産のタチウオ料理でもてなす。

2日目は、高野山に移動する。高野山は世界遺産であるため、是非、訪れてもらいたい。歴史や文化も学べ、癒されるはずだ。食事は、高野山で精進料理を食べてもらい、僧侶の体験をしてもらい、宿坊に泊まる。

最終日は、和歌山市の黒潮市場でおいしい海鮮を食べ、海の景色を楽しむ。体験+交流で思い出に残る旅になると思う。

B 治安の良い和歌山で、若者の日常体験 (3年・男性)

和歌山到着1日目は、関西空港から高速道路を利用して、和歌山インターから真直ぐ進み、和歌山ラーメンを代表する「井出商店」という店で食事をする。外国人に、「TVチャンピオン」という日本のTV番組で優勝し、一躍、有名ラーメン店として全国に名を轟かせたというエピソードを交え、凄さを知ってもらう。

その後、和歌山城を訪れ、その壮大な景観と、意外と知られていない動物園に立ち寄り、歴史的建造物との組合せについて、外国人に感想を聞く。この日は、私の一人暮らしの部屋に招待し、日本人らしく、ホームコタツに入って、語り明かす。典型的な日本の狭い部屋と、敷布団で寝てもらうことで、外国人にとって貴重な経験かと思い、楽しんでほしい。

2日目は、湯浅へ向かい、日本の伝統的な醤油の製造工程や、徹底した品質管理を肌で感じてもらう。昼食は、あえて「吉野家」で食べる。なぜなら、牛丼は、日本の代表的な味の一つでもあり、質の高いサービス、衛生管理、早さ、安さ等、外国人にとっては、どれも驚くことばかりであるはずである。

次に、外国には殆ど存在しないであろうパチンコ店で遊んでもらう。日本人は、パチンコ台に平気で家の鍵やタバコ、中には財布まで置いている人がいる。外国人が見れば、いつ盗られるか、心配になるであろう。大当たりが連続したドル箱も平気で積んだままである。治安の良い日本だからこそ、皆、安心している。この治安の良さこそが、私たちが外国人観光客を誘致する上で、一番のセールスポイントになるのではないかと考える。

最後の夜は、和歌山市内のクラブに連れて行き、外国人のノリの良さと人懐っこさを発揮してもらい、日本の若い人達と交流し、異文化交流を図ってほしい。

C 「たま電車」&寺社参詣。和歌山市の歴史と日本文化を堪能 (3年・女性)

白浜や勝浦に来たことがあるとのことなので、今回は、和歌山市街地をメインにする。和歌山市にも、本宮や白浜には劣るかもしれないが、歴史的なものは多い。また、関空から近いので、観光できる時間を少しでも多くとれる。季節は春、移動は車とする。

1日目、昼前に関空着→昼過ぎに和歌山市着→市内の繁華街ぶらくり丁近くの「山為食堂」で昼食の和歌山ラーメン→和歌山城で観光・歴史の説明をしながらまわる→15時頃、紅葉渓庭園の中にある茶室で茶道体験→城内の土産物屋で買物→16時頃、和歌山市駅近くの雑賀孫市(戦国時代の武将)の資料やグッズをあつめた「孫市の城」へ行き、火縄銃体験と甲冑を着て記念写真の撮影→17時過ぎ、日本家屋と庭園の美しい料亭「あおい茶寮」で夕食→20時頃、市中心部にあり、便利な「ロイネットホテル」に一旦荷物を置き、歩いて行けるぶらくり丁の温泉「ふくろうの湯」に案内し、ゆっくりと旅の疲れをとってもらう。22時頃、ホテルに戻り、1日目終了。

2日目、朝8時頃、JR和歌山駅へ→和歌山電鐵貴志川線に乗る(たま電車・いちご電車・おもちゃ電車のどれかがよいが、ランダムなのでHPでチェック)→日前宮駅で下車、日前宮にお参り、御朱印をもらう→9時頃、また貴志川線に乗り、伊太祁曽駅下車、伊太祁曽神社にお参り、御朱印をもらう→10時半頃、貴志川線で終点の貴志駅へ→有名な猫の駅長、「たま駅長」に会う。「たま」の顔をデザインした駅舎を見て、駅舎内のカフェで昼食→13時頃、徒歩で「貴志川観光いちご狩り園」へ行き、いちご狩り体験(家族連れや若者のグループと交流)→17時過ぎ、JR和歌山駅へ。駅ビル「MIO」や隣接の近鉄百貨店で買物、駅前をまわる→夕食は、1日目が和食だったので、2日目は、「MIO」地下のイタリアンで→ホテルへ戻り、温泉が気に入れば、2日目も温泉へ入る。2日目終了。

3日目、朝8時頃、チェックアウト→車で和歌山市の雑賀地区にある「養翠園」に行き、庭園散策→和歌浦天満宮・東照宮にお参り→10時半頃、和歌浦の片男波海岸を見る→昼前、和歌山マリーナシティへ。黒潮市場で海鮮を食べる(海鮮丼やバーベキュー)→わかやま館で買物→14時頃、関空に向かい、15時頃到着。夕方の便で帰国の途につく。

D 海とスポーツで言葉や文化の壁を越える (3年・男性)

ターゲット : 10代〜30代男性中心(特にラグビー、アメフト経験者)。
時期 : 6月末。
主な場所 : 加太・白浜。
目的 : フィッシング、ビーチフットボールを通じて、和歌山の海やスポーツ文化に触れ、和歌山の若者との交流を促進する。(ビーチフットボールとは、ラグビーやアメフトの激しい接触プレーを廃し、砂浜で行う競技。女性や子供でも参加できる。毎年6月末に、白浜でビーチフットボールの大会が2日間にわたって開催され、毎年、多くの若者が出場。全国大会も行われている。)

1日目、関空到着後、和歌山市加太で開催される「海釣り大会」に参加。参加者が釣った魚を海鮮バーベキューとして昼食。その後、白浜へ移動する。宿泊は、通常のホテルや旅館ではなく、翌日以降、同じチームで「ビーチフット大会」に参加する若者の家にホームステイする。ねらいは、経費の削減と、日本の普通の衣食住を体感してもらうためである。

2日目、宿泊先の若者達とチームを組み、ビーチフット大会に参加。大会は朝から行われ、公式の試合以外にも気軽にエキシビジョンマッチを行ったり、海水浴を楽しむことができる。夜は、白浜温泉で疲れをとる。

3日目、全国大会の権利をかけて行う試合も増え、より大会は白熱する。大会終了後、温泉入浴、宿泊先の家族に別れの挨拶をして、関空に向かい、帰国となる。

日本と外国では、「言葉や文化の壁」があるが、スポーツを通じて共通の目的に向かい,力を合わせれば、その壁も取り払われ、日本の若者との交流が促進するのではないか。

E 和歌山の秘境、龍神村で自然と伝統工芸に触れる (3年・女性)

大まかな日程は、1日目の12時頃関空着。電車で、JR紀伊田辺駅に1時半頃到着。龍神バスに乗り、2時半頃、龍神村に着く。到着後、龍神村探索(豆腐作り・5月から6月はホタル見物も)。由緒ある旅館「上御殿」に宿泊。

2日目の朝は、トレッキング、昼食は地元のフレンチ・レストラン「梅樹庵」でとる。藍染体験や草木染体験をし、宿泊は緑豊かな「龍神村・季楽里」でゆったり過ごす。

3日目、龍神村を出発し、昼頃、和歌山着。和歌山城の近くの和歌山県立近代美術館(モダンアートや版画が充実)を見学後、JR和歌山駅周辺で紀州の物産や、「MIO」で若い女性好みの服飾品等をお土産に買い、帰途につく。

龍神村は、和歌山県田辺市の山間部に位置する秘境である。龍神温泉は、「日本三美人の湯」と言われる温泉地で、古くから知られている。今回は、そのような「龍神村」を満喫できる体験型プランである。

1日目の「豆腐作り」では、大豆が豆腐になる過程を自分で体験し、日本食への知識を深める。宿泊する「上御殿」は、江戸時代、紀州徳川家将軍が宿泊した歴史ある旅館で、いにしえの人が感じた風情を追体験することができる。

2日目のトレッキングでは、熊野の豊かな森を歩き、バードウォッチング。昼食の「梅樹庵」は、春から秋の営業だが、鳥の声を聞きながら、山々の風景を楽しみつつ、和室でフレンチが楽しめる。龍神村は色々な工芸が盛んで、「藍染体験」では、自分で藍染風呂敷等のオリジナルの記念品も作ることが出来る。「柚べし」等の郷土の保存食も味わえる。

龍神村の地元の語り部に話を聞き、また、村には昔ながらの工芸技術がのこされていて、歴史・文化を楽しみながら学べるツァーになると思う。

F 和歌山のアウトドア・ライフ――日ノ岬・田辺秋津野・熊野古道 (2年・女性)

1日目は、和歌山県日高郡美浜町を訪れる。眺めのよい日ノ岬パークで自然を満喫。日ノ御崎灯台や日ノ御崎神社、「カナダ資料館」等があり、古くからの海外との交流が感じられる。カナダへ多くの移民を送り出した美浜町三尾地区には、「アメリカ村」があり、移民の暮らしや交流の歴史を想像する。また美浜町では、「クエ」という魚が有名で、本場のクエ料理を楽しむことができる。美浜町を楽しんだ後、田辺市に向かい、廃校を活用した「秋津野ガルテン」の民宿に宿泊する。

2日目は、秋津野ガルテンで過ごす。日本の農業体験や果物狩り等、自然とたくさん触れ合うことができる。昼食は、地元で採れた新鮮な野菜を使った家庭的な料理をバイキングで楽しむ。地域の人々との交流も、ここでしか味わえない魅力だと思う。ゆったりとした1日を過ごした後、新宮市に向かい、ここで宿泊する。

3日目は、熊野古道探索ミニ・ツァー。まず、新宮市内の熊野速玉大社や、お灯祭りで有名な神倉神社を訪れる。近くには、川原家横丁という地場産品の物販店がある。その後、勝浦へ行き、ナイヤガラの滝等とは全く趣きの異なる日本を代表する滝、「那智の滝」や熊野那智大社、隣接する青岸渡寺を訪れる。和歌山の壮大な自然の中で深い歴史を感じることができるだろう。

(2011.4)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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