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和歌山県における県外の人や外国人との交流のあり方

主任研究員  谷 奈々

1.外国人観光客誘致への期待

【観光をめぐる国の動き】

2003(平成15)年に、政府は「ビジット・ジャパン・キャンペーン」を開始、2006年に観光立国推進基本法が成立、2008年に観光庁が設置された。その後、中国個人観光ビザの発給開始、訪日外国人3,000万人プログラムが策定された。2010(平成22)年の新成長戦略では、「観光立国・地域活性化戦略」が7つの戦略プログラムの1つに選定されていたが、2011(平成23)年3月の東日本大震災後、外国人観光客が激減、風評被害等の影響もあり、同年4月は前年度比63%減、5月は同50%減と落ち込んだが、同年11月には13%減、12月は12%減まで回復している。

しかし、「観光立国」への道のりは、極めて厳しい。2011年の訪日外国人旅行者数は622万人で、2010年に比べると239万人、率にして27%減少した。2012年は震災の影響も薄れてきているが、2010年の水準に達するかどうかは微妙である。

UNWTO(世界観光機関)は、2020年に向け、東アジア・太平洋地域において、国際観光到着客数が大きく伸びると予測している。現在、世界で約9億人の旅行者が15億人に増加、このうち、アジア・太平洋地域は約4億人、全体の25%を占めるとしている。わが国は、中間目標として2016年迄に1,800万人、2020年に2,500万人、最終的には、現在、世界6位の英国を上回る3,000万人を目標としている。

2011年の訪日外国人旅行者を国・地域別にみると、アジアの456万人が最多で、全体の7割強を占める。その内訳は、韓国166万人、中国104万人、台湾99万人。北米地域は67万人と約1割、欧州は5%の35万人と、アジアからの観光客が圧倒的に多い。

しかし、昨今の竹島問題による日韓関係の悪化や沖縄県・尖閣諸島をめぐる日中摩擦が深刻なマイナス要因となっている。日本政府観光局(JNTO)が発表する月別の訪日外国人数では、9月に訪日した中国人の数が大震災前の2010年9月比で10%減少した。政府による尖閣諸島の国有化決定以降、中国人観光客の渡航キャンセルが相次いだためである。

関西では、関西空港と伊丹空港の統合問題やLCCの新規就航等、大きなトピックスがあり、それらが起爆剤となって関西の活性化につながることが期待されている。

外国人客誘致のための国際間競争も熾烈で、日本のみならず世界各国が、国際観光の推進に注力している。相互の観光交流が国家間の外交を補完・強化するものであることも大きな目的であろう。観光立国のねらいは、裾野の広い産業である観光分野において、そのソフトパワーを強化するものであり、少子高齢化時代の経済活性化の切り札となるものである。

【旅行消費の波及効果】

国土交通省観光庁によれば、2010(平成22)年度の日本国内での旅行消費額は23.8兆円と、2009年の25.3兆円の5.9%減となった。

このうち、日本人の国内宿泊旅行が16.1(前年は17.3)兆円、日本人の日帰り旅行が5.1(同5.5)兆円で、全体の90%近くを占めている。他に、訪日外国人旅行が5.7(同4.6)%の1.3兆円、日本人の海外旅行における国内消費分が5.4(同5.0)%の1.3兆円となっている。

観光は、関係事業が広範に及ぶため、例えば土産物の工場から交通機関、旅館の食料生産者まで、生産波及効果は49.4兆円、我が国の国内生産額の5.5%に相当するといわれる。一方、各国の観光GDPが占める割合は、欧米、中でも、スペインが10%前後と高いのに対し、日本は2%弱と低く、観光分野における日本の今後の発展が大いに期待されている。

観光での交流人口の増大は、少子高齢化等による人口減少に起因する経済規模縮小に有効である。国土交通省の試算では、「人口が1億2,806万人、1人当たり年間消費額は122万円とした場合、これをカバーするには、旅行者がどれだけ必要か」に対し、「定住人口1人減少分」は、外国人旅行者9人分、国内宿泊旅行者24人分、国内日帰り旅行者76人分に相当するとされている。人口減少をカバーする重要な担い手としての訪日外国人旅行者、そして、その経済効果を増大するための方策がもとめられている。

2.県外の人や外国人との交流プランの具体例

和歌山大学観光学部で「地域文化交流史」という講座を担当した。この講座のねらいは、和歌山の活性化を考える上で、その魅力を構成する重要なテーマとなる和歌山の豊かな文化資源や、古来から進取の気性に富んだ紀州の人々による社会的・文化的交流に注目し、本県が輩出した異色のすぐれた先人や事例について知るとともに、それを交流のシーズとして生かすということである。

そこで、講座を平成23年度に履修した60名の観光学部生に課題を与え、「県外の人や外国人との交流」について、そのあり方や具体的なプラン、どのように発展させていくかを考えてもらった。

既にほぼ全員が海外旅行を経験し(北欧等への一人旅や、旅行代理店によるパックツァーでない自ら立てた計画も多い)、海外居住経験、短期の留学や業者向けのファムツァーへの参加、あるいは添乗員のアルバイト経験等、かつての世代と比べ、外国や外国人に対する垣根意識や違和感もかなり変化してきている。また、若者ならではの自由な視点、行動力もあり、グローバル時代における観光や交流の今後の進め方を模索するための有用な参考意見になるかと考える。紙幅の都合により、そのごく一部を紹介したい。

課題 : <「県外の人や外国人との交流」について>

旅行や留学、あるいはビジネス、ボランティア等で、県外の人や外国人を和歌山(日本)に受け入れ、案内や世話をする等、今後、様々な面で、彼らと交流する機会が増えてきます。
そこで、あなたが考える(和歌山県における)交流の今後のあり方とは?
また、それをどう発展させていきますか?

A 「交流」には、地元の文化や歴史の知識が必要(4年・女性) 

県外の人や外国人と交流するにあたって、最も重要だと考えるのは、自分が和歌山の歴史や遺産等について、十分な知識を有することだと思う。知識がなければ、彼らに何も紹介することができないし、そもそも何も知らないで、お互いが交流することは難しいだろう。

和歌山には世界遺産があり、熊野古道はその一つだ。まず、自分で熊野古道の歴史について調べる。そして、実際に歩いてみる。自らの頭で覚え、体験したことは、よりリアルなものとして、他の人に伝わっていく。実体験すれば、次に伝えた人もやってみようという気持ちが強まり、より多くの人が熊野古道に興味を持つことができるのではないか。

次に、和歌山出身や和歌山にゆかりのある人物等について紹介することが、和歌山について、もう一歩踏み込んで、県外等の人々に知ってもらえる手段である。

例えば、デンマークの貨客船機関長、クヌッセンと美浜町や日高町の人々との話は感動的だ。日本の漁船が嵐で転覆し、海に投げ出された漁師を助けるため、クヌッセンは自ら海に飛び込み、救出しようとしたが、溺れて亡くなった。全く知らない、異国の人間を助けようとして命を落とす等、並大抵の人にはできない。この話は、特に、外国の方に話すと、感動されるだろう。今もなお、彼のお墓が地元の人々によって、美しく保たれていることにも驚かれるだろう。このように、和歌山にゆかりのある人の話を紹介することで、「この人が、実は和歌山と繋がりがあったのか!」、「それは知らなかった…」等と盛り上がることは間違いない。

そして、「交流」と言えば、やはりお互いの地域や国の文化について知り合う機会でもある。和歌山のことを相手に知ってもらうと同時に、相手の住む地域や国についての歴史や文化についても十分吸収することが大切だ。そうすれば、今まで知らなかった新たな事実にも出会えるし、今まで見えてこなかった共通点が見えてくるかもしれない。交流が新たな発見を生むことができたら、とても楽しいことである。当事者達だけでなく、それが別のところで輪を広げれば、和歌山について、興味を抱く人がもっと増えるだろう。

単に和歌山の観光地や景勝地を案内することが交流とはいえない。今後は、より深く、和歌山について知ってもらうことが、真の交流であるといえるだろう。

B 県内の観光地や歴史的建造物での“野点おもてなし活動” (4年・男性)

和歌山県における県外の人や外国人との交流のあり方について、一つ具体的にアイデアを挙げたい。それは、和歌山県内の観光地や歴史的建造物での“野点おもてなし活動”である。県内には、高野山、熊野本宮大社等、有数の観光地があり、多くの県外の人や外国人も訪れる。その場所に、お茶とお菓子を無料で提供するブースをつくり、訪れる方々に対して、日本の着物を着て、野点を通して交流をはかる。外国人にとっては、日本の伝統的な茶道や着物に触れることができる。簡単なコミュニケーションをとり、少しの間、ゆっくり休んで頂くだけであるが、まず、和歌山を、ひいては日本の文化の良さを知ってもらうきっかけになると考える。そして、「日本の茶道を通して、貴重で楽しい思い出ができた」と、感じてほしい。それが、「また是非、和歌山へ行ってみたい」という気持ちに繋がるのではないか。

ある旅行がよかったかどうか、判断する材料として、経済的な要素や食事の良し悪し等、多々あると思われるが、実際に旅行中に関った「人とのちょっとした対応や印象の違い」が、旅行全体の、あるいは目的地のイメージに影響を及ぼすことはよくある。だからこそ、例えば野点での交流を通して、人と人の繋がりや、人同士の温かみを感じてほしい。

次に、それらの活動をどう発展させていくかであるが、まず、相互に利益があるWin-Winの関係を築くことである。和歌山を訪れる方々にとっては、伝統的な茶道に触れることができ、迎える私達にとっては、外国人を含め、積極的にコミュニケーションをはかることで、人間としての成長が期待でき、交流の大切さについて考えるよい機会となる。

さらに、私達だけでなく、各地域の人々も巻き込んで、一緒になって活動する。例えば、昨夏の台風水害で、本宮大社等は大変な被害を受け、観光客も見込めない状況である。その際、一緒になって、「その地域を盛り上げよう、復活させよう、観光客も呼ぼう」という意思、交流を発展させた活動が重要である。

C 「人が観光資源」――人そのものが地域の吸引力となる試み (3年・男性)

交流の実践方法として、団体やグループに属すことで、観光地への案内や穴場スポットへの訪問を導くという方法を提案する。外国人と交流するには、言葉の問題がある。相手もこちらも、話す言葉が違えば、コミュニケーションをとろうという気持ちにはなりにくい。また、多少の知識を持っていたとしても、スムーズな会話でなければ、お互いに無理をして、交流を楽しむことはできない。

県外の人との交流の機会は、意外に少ない。なぜなら、当然ながら言葉が理解できるため、案内表示に従えば、目的地に達することができる。今は、スマートフォンの普及により、自分の意思を人に伝えるよりも、スマートフォンで検索する方が、はるかに速く、かつ正確であるため、一層、交流の機会が無くなってしまうことになる。その結果、一般の人が、旅行に訪れた県外の人や外国人と交流することは非常に難しくなる。

そこで、まず、旅行団体や案内所等のグループに属すことで、こちら側から目的地への誘導や街の特徴等を伝え、積極的にコミュニケーションを試みる。グループの一員であることが分かれば、旅行者も心を開き、不快に思わないだろう。疑問に感じることの解消等もスムーズに行くのではないか。

双方向のコミュニケーションをはかるには、旅行関連やボランティア団体等に属している方が成立しやすい。しかし、ただ属しているだけではだめで、相手の言語で会話ができなくてはならない。さらに、その地域の魅力や特徴をじっくりと語れる知識が必要である。すなわち、自ら学ぶ努力をし、力をつけなければ、活発な交流は行なえない。

望ましい交流のあり方とは、「互い同士が興味を持ち、話したい、話さなければならない、それが楽しい…」という感情を伴うものでなければならないと考える。一方的な交流であれば、必ずどちらかが不快に思い、コミュニケーションの機会を拒んでしまう。

また、彦根の「ひこにゃん」、奈良の「せんとくん」といったイメージキャラクターが存在するように、全国各地にそれぞれ、イメージキャラクターとなるような人・グループを配し、「人」そのものがその地域の吸引力となるような試みを行うことも、交流の機会を増やすきっかけとなる。「人」を観光資源とした取組みである。

D 若者向けのパーティナイトでの交流もプラス (2年・女性)

和歌山は自然が豊かなので、自然体験を主に出来るようなプランを立てると、外国人とも楽しく交流できると考える。また、外国では当たり前の、夜は若者が集まるクラブに案内すれば、「パーティナイト」で締めくくることが出来、朝から夜まで忘れられない1日になるのではないか。私が考えた若者向けプランを紹介したい。

まず1日目は、関空から白浜に向かう。特に中国などアジアの人は、きれいな海をあまり見たことがないということなので、白浜の海を満喫してもらう。泊まるところは、特に要望がない限り、和風の旅館で、食事も和食をすすめる。近くの「とれとれ市場」や、夜はクラブで楽しみ、コミュニケーションを深めたい。

翌日は、日本の美徳にも通じる「茶道、華道、書道」を学び、体験してもらう。そして、日本人なら子供の頃、誰でも遊んだことのある「鬼ごっこ、かくれんぼ、だるまさんが転んだ」等、昔ながらの遊びに参加してもらう。温泉に入浴した後は、浴衣や着物を着て、写真を撮ったり、夏ならば、盆踊りで日本の夜を楽しむ。

日本を訪れる多くの外国人は、日本の伝統文化に触れ、学びたいと考えていることを私は承知しているが、それのみでは、日本と外国との間に溝が出来ているように感じる。今まで、私は、外国人に対して、全て「日本の旅」と意識しておもてなしをしないといけないと考えていたが、少し海外の「ノリ」をミックスさせる方が楽しいのではないか、と気付いた。

外国人もリラックスできるクラブを加えたのはそのためで、日本には日本らしさだけでなく、外国人でも楽しめる場所があり、リピーターも増えるのではないか。そして、和歌山は田舎だが、街なかには都会の要素も兼ね揃えているので、和歌山での交流がもっと盛んになると期待する。

E LCCを和歌山活性化に活かすために (2年・男性)

今年3月から、日本初の本格的LCC「ピーチ」が営業を開始することを皮切りに、「ジェットスター・ジャパン」「エアアジア・ジャパン」が就航を開始する。これらLCCによって、国内旅行は益々活性化するといわれている。しかも、最も注目を浴びる「ピーチ」が関西国際空港を拠点とすることから、特に関西圏での旅行の活性化が進むと考えられる。そこで、今後、増加していくと予想される観光客との和歌山県における交流のあり方を考えていきたい。

私は宮崎県出身だが、和歌山に来て思うことは、和歌山は観光資源が非常に豊富だなということだ。世界遺産である高野山があれば、白浜でのマリン・スポーツあり、日本三大美人の湯の龍神温泉もあり、食べ物もおいしい。しかし、私が和歌山に来るまでは、和歌山と言えば、みかんと梅が有名という程度しか知らなかった。このことから言えることは、和歌山は、もっと上手に和歌山を発信して行かなければならない、ということだ。そこで、鍵となるのが、観光客との交流だ。交流を通じて、和歌山をもっとアピールできると考える。

それではまず、その仕組みづくりを考えねばならない。例えば、我々学生が旅行プランをつくり、観光客を案内するというプロジェクトを立ち上げる。観光客側から見れば、旅行会社ではなく、学生のつくったプランは斬新なものに感じるだろうし、何より、学生目線の案内も、非常に面白く感じるだろう。また、学生側から見れば、交流を通じて様々なことが学べ、特に、外国人との交流は、異文化を知ることが出来、語学の勉強にもなるだろう。

仕組みづくりの次は、交流の仕方である。ただ単に、観光地を案内するというだけでは、無意味である。自分が和歌山に住んでみて、感じたこと、よかったこと、そして、悪かったことも含めて案内することで、「真の和歌山」を観光客に感じてもらう。観光客自ら、和歌山の良さに気付いてもらうのだ。

このような交流が出来れば、それは、口コミ等で広がり、益々、活気づくことになる。ただし、その交流において、相手の文化を重んじることを決して忘れてはいけないと思う。

F 第1次産業復活の手掛かりを若い世代に (2年・男性)

和歌山は、他の都道府県に比べて、都市農村交流と呼ばれるような県外の人との交流が進んでいると思う。昨今、食の安心・安全といった都市住民の食に対する関心は高い。和歌山は農山村地域が多く、農作物の種類も豊富である。「食」に関心のある都市に住む人達が田舎暮らしをしたいという風潮があり、和歌山では、特に日高川町やかつらぎ町等でその受入れが取り組まれている。

都市農村交流には、どのような利点があるだろうか。今、第1次産業は年々、厳しくなり、その担い手も、農山村地域の過疎化、住民の高齢化に伴い、減少している。この後継者育成が第1次産業の復活の手掛かりとなりうるものであるが、この動きは、一部地域で見られるものの、まだまだ発展途上で、地域差を解消するためには、地域間の連携が大切であると思われる。

都市農村交流への関心は、中高年層に限らず、意外にも若い世代にも強い。第1次産業の次世代となりうる存在に、なぜ今、農山村に注目が集まっているのか、その魅力と重要性のPRを進めると、もっと交流の動きが進むと思われる。

一方、外国人との交流という面ではやや遅れていると思われる。そこで、どうすれば、和歌山に外国人客が増えるかと考えた。関西国際空港が近くにあるという利点を活かし、「気軽に」大阪観光の帰りにでも、立ち寄ってもらうことが出来ればよいのではないか。一言で言えば、「ながら」「ついで」がポイントである。

和歌山にも立派な観光地がたくさんあるので、それを全国的に知ってもらうことが重要で、まず、そのきっかけづくりが必要である。和歌山の良さを全国に広め、理解させることが出来れば、和歌山における交流は、自ずと増えてくるのではないか。

G 双方向的なコミュニケーションを、絆・つながりに発展させる (2年・女性)

県外の人や外国人の受け入れや交流をする際に留意せねばならないことは、それぞれの国、地域によって、言葉も考え方も表現方法も全く異なるということだ。そして、表面的な部分しか見ていないなら、多くの誤解やトラブルを生む結果となる。たとえ、共通した思いであっても、その国の言葉や表現方法というフィルターを通すことによって、全く異なるものになってしまうということは、よくあることだ。従って、その地の文化・習慣・宗教等、背景にあるものまで考慮し、相手の国や地域の文化に尊厳の念をもって、互いの違いを認め合いながら、双方向的なコミュニケーションをとることが重要である。

それには、当然、こちら側からも発信しなければならず、まず、自分の国、地域について、知らなければならない。特に、外国人と交流する際には、外国人は比較的、自国の文化や特徴、政治について理解しており、日本に関しても、興味津々であるケースが多い。

逆に、我々日本人はどうだろうか。せいぜい相手の国の言語が少し理解できるといった程度で、その国自体について殆ど知らない。そればかりか、自国の文化・歴史についても余り知識がなく、政治や社会問題にも関心がない。自分達が自国の良さを知らないで、それらを外国や他の地域から来る方々に紹介もアピールも出来るはずがない。自分達が胸を張って、彼らに説明できるほどの知識を得、堂々と語れるようになるべきだ。

かつて、オーストラリアからの留学生をホストブラザーとして受け入れたことがあるが、私は「自分の地域について知り、語る」ということが全く出来ておらず、不確かで中途半端な説明しか出来なかったことを後悔している。向こうから色々質問され、質問の内容はわかり、答えたい気持ちはあっても、答える内容が思いつかないのだ。このような経験があるので、実感をもって強調したい。

和歌山について考えると、まず、和歌山城のことを調べておく。また、最近は、東日本大震災によって、地震に関心を持つ人が多く、和歌山も地震の発生率が高い地域なので、知っておかねばならない。

和歌山には、「ほんまもん体験」というものが用意されている。人間は、頭の中で学んだことより、実際に体験したことの方が強く印象に残る。「ほんまもん体験」は、和歌山の強み、アピールポイントとして、さらに推進していくべきだ。

それをどのように発展させていくか。今、“絆”や“つながり”ということが注目されているので、それを「ほんまもん体験」と結びつける。あるいは、「ほんまもん体験」自体が絆やつながりを体現しているものとも言える。「ほんまもん体験」に限らず、その地域に古くからある地域資源を再認識し、活用することが重要だ。

H 言葉のコミュニケーションだけでは不十分 (2年・女性)

過去に県外や色々な国の方々と交流する機会があったが、その度に感じたことが「文化の違い」であった。外国人はもちろん、同じ日本人でも、住んでいる地域が違うだけで、驚くような文化の違いを感じることがあった。

外国人にはまず、言葉の壁が大きく、初めは、上手く交流するためには、言葉が全てであると考えていた。しかし段々と、言葉そのものでなく、食文化・宗教の違い・生まれた国の気候・地理的条件等、様々な文化や風土の違いが、「壁」をつくっているのだと気付いた。

これは、国内でも同様で、大学に入学し、他の地域から来た人と友達になり、実際に話をしてみると、自分が当たり前だと思って話す方言が伝わらなかったり、逆に相手が何を言っているのか分からなかったり、同じ料理にしても味付けが異なるということがある。

今後、私達は県外や外国の様々な人と交流し、互いを受け入れていく。その時、やはり重要だと思うのは自分とは異なる文化を認めることであり、言葉のコミュニケーションだけでは足りないと考える。例えば、イスラムの人への食事等、相手の文化を理解し、相手の文化を考慮してもてなしをすることが、お互いの交流がスムーズにいくための要件だ。そして、一部の人だけがそれを理解しているのではなく、県全体、国全体がそのような意識を持って、交流を進めていくことが大事だと思う。

そのために、各地域で、誰でも参加出来る外国人や県外の人との交流会等を開き、自発的に異文化を理解するための場を設けることが出来ればと思う。

また、異文化交流を発展させるためには、自分の文化を理解することが前提でもある。自国の文化を外に発信し、双方の文化を受け入れることが理想の交流につながるのではないか。

I 期待していなかった喜びを――リピーターを呼ぶために (2年・男性)

交流を手段として、リピーターが呼べるか、ということについて考えたい。和歌山には、たくさんの観光資源がある。和歌山の人々の人柄もとてもよい。だが、旅行で和歌山を訪れる観光客に、短い期間でこれらを知ってもらうのは難しい。

例えば、白浜や高野山に観光客が来ると仮定する。白浜に来る観光客は夏が多いので、観光客が求めているものは、海や砂浜、それに温泉や料理であろう。その期待に応えるのももちろん大切だが、観光客の「記憶に残る」のは、期待していなかった喜ばしいことが起こることである。

その「期待していなかったこと」として、交流・人との出会いが考えられる。白浜で、おいしい魚を食べようとして入った店のおばさんがとても親切で、話も面白く、お互いに話が弾んだら、期待以上の楽しさや満足感が生まれる。その地域の人との交流が、また、和歌山へ行きたいと思わせるきっかけの種となり、それによって、「また、来年も来よう」と強く思うのだ。

高野山への観光客が期待しているのは、寺院や自然、宗教的な不思議な空間だと思う。高野山は、世界に誇りうる資源であるし、案内も外国語対応がしっかりしているので、観光客に期待以上のものをあたえるだろうが、それだけでは、「また来よう、同じもの見たい」とは思わないだろう。見学・見物をする中で、お坊さんや地元の語り部さんとふれあい、(ビジネスライクでない)交流が出来たら、観光客はとても喜ぶし、高野山にいる「その人」にも会いに行こうと思うだろう。それがリピーターを呼ぶ力となる。

そのために、地域が一体となり、訪れる人を受け入れる体制を整えねばならない。まず、地元の現場の人達が大学生や留学生と交流し、お互いに知識や簡単な語学力をつけるようにする。交通の利便性が悪い和歌山は、和歌山の魅力ある観光地に、「交通でなく、交流」によって人を連れて来なければならない。観光資源の豊かさや交通の利便性だけが問題なのではなく、交流という手段が重要となる。

自分達が一方的に発信するのが交流ではない。相手の話が聞けるのも交流である。人を惹きつけるのは、観光地だけでなく、人に関するウェートも大きい。

J ファムツァーに参加して感じたこと (2年・女性)

昨年夏、和歌山県による中国の旅行会社の方を対象としたファムツァーにインターン生として参加した。ファムツァーでは、熊野本宮大社や那智の瀧、白浜等、和歌山の代表的な名所を回った。ツァー参加者は旅行業者であり、京都や奈良等にも、何度も足を運んでいる方々であるが、「京都や奈良もよいけれど、和歌山には、違ったよさがある」という声を聞いた。ただの田舎なのではなく、多くの可能性を秘めた自然に囲まれているのだと思う。

和歌山県は、まだまだ多くのすばらしい観光資源を持っている。しかし、よく指摘されるように、それらは活かされておらず、破壊される危機さえある。和歌山は、大阪のような都会や、京都のような雅びな街になるのでなく、この豊かな美しい自然を守り、人々を魅了させていくべきだと考える。自分が住む場所に誇りがもてると、外部から訪れる人々にも積極的にアピールできるようになる。

したがって、和歌山県における今後の交流のあり方は、まず、地域在住者が地元観光に対する意識を統一し、パワーを充実させることが必要だと思う。そして、その上で、外部に向けての働きかけ等を考える。そのような受け皿があれば、実行し易いのではないか。

和歌山を初めて訪れる人で、「和歌山の言葉はきたない、和歌山の人は口が悪い」という人がいる。しかし、逆にそのことが親近感を増し、人々の間の距離を身近にする。和歌山の人々は、元気で明るい。特に高齢者が元気だ。そこで、中高年の人々を地域ガイドとして、もっともっと活躍できるようにする。地元の知識もあり、取っつき難さもなく、気さくに外から来る人々と応対してくれるだろう。観光客にとっても、緊張を強いられず、気が楽なのではないか。何より、その土地の文化を直に感じることが出来る。

和歌山の観光に携わる方々には、最低限、英会話と中国語会話を少し話せることが必要だと思う。特に、直接、外国(人)に接する最前線の人は、通訳越しでは、なかなか国外へのPRがままならないと感じる。加えて、現在、行われている農家への滞在学習等の取組みは、今後も大切に育ててほしい。

K 貴重なトルコやブラジルとの交流の歴史を継承する (2年・女性)

和歌山には、トルコやブラジル等、外国とのつながりが古くからある。先日、トルコとバーレーンの青年達とのディスカッション交流会に参加した。これは、昨年の台風被害にあった上富田町を訪問し、災害現場に立ち、その後、彼らと防災についてディスカッションするというものであった。

そこで知り合ったトルコの人々は、皆、日本が大好きで、「和歌山の自然がきれい!」「文化がすごい」と言ってくれた。この会で、普段、接する機会のある留学生ではなく、それ以外の一般の外国人と交流の機会をもつことが出来た。

ブラジルとは、昔、和歌山県民がブラジルに移住したことから、深い交流が始まった。私は昨年12月に、かつての移住者の孫にあたる青年2人が、留学で和歌山に来たことを歓迎するパーティに参加した。このパーティには、ブラジルと和歌山の交流に携わっている人が、若者から高齢者まで集まっていた。私は、ブラジルとのつながりが、今もこんなに強く残っていることと、和歌山で国際交流の活動をしている人の中に、多くの高齢者がいることを知り、驚いた。

トルコもブラジルも、交流のきっかけは、大分昔の話になる。ブラジルに移住した方々も高齢者となり、彼らの孫は日本語が話せないため、祖父母と孫の会話には、父母が「通訳」として必要だと聞いた。このように、言葉一つにしてもブラジルでの日本や和歌山の色、存在感は、だんだん薄くなってきているのでは…と感じた。

これからも、ブラジルと和歌山での交流を続けていくためにも、ブラジルの日系の方々を和歌山に招いたり、移住された方々の生活の歴史を辿るプラン等を設ける等、何か、「機会」をつくっていかなければならない。そして、その「機会」を使って、彼らが和歌山を訪ねてくれた際は、和歌山のたくさんの魅力、例えば、高野山や熊野古道、美しい海岸線等を伝えられるよう、私達は、和歌山について知り、誇りをもつべきだと思う。また、私達も移民についての歴史を学ぶ必要がある。

これら和歌山県についての知識、歴史・文化をまずは、和歌山県民に発信し、県全体で外国人を迎えられる体制づくりが必要だと考える。これは、同時に、国内旅行者を和歌山県に呼び込むための重要な役割を果たすだろう。そこに住む人々自身が、和歌山のことを知り、愛することは、和歌山の内なる大きな力となり、他県・他国に向け、光を放つと思う。

L グローバルな環境に慣れること (2年・女性)

日本は今、技術支援や経済力で世界に認められているが、歴史を振り返ると、決してよいことばかりではない。しかし、トルコのエルトゥールル号遭難の際の串本・大島の村総出の救出にみられるように、外国から感謝され、子どもが学校で習う教科書にも語り継がれているという歴史もあるということを、私達日本人はもっと知るべきだと思う。

私が考える交流のあり方とは、市民がもっと他者を受け入れることだ。田舎は特にその傾向が強いが、見慣れない人がいると、怪訝そうに見る。所属する国際交流サークルの留学生達が声を揃えて、「ガイジン」と指をさされるのが最も嫌だと言う。やはり、見た目が異なると、警戒するのだろう。もっとグローバルな環境に市民の人達が慣れていくべきだと考える。特に観光客は、大阪から特急で高野山、白浜、勝浦・新宮方面へ向かうので、市中へ来る人はとても少ないだろう。地元の人が外国人に慣れるどころか、身近に感じる機会がない。

また、外国人旅行者の旅行スタイルも全く理解していない。外国人旅行者、特に若者は、パックツァー等に参加しない。基本的に一人か、友人と身軽に旅行を楽しむスタイルである。宿泊についても、ゲストハウス等の簡易宿に泊まり、一期一会の出会いを楽しむ。和歌山には、そのような需要に応えるゲストハウスというものが全くないように思われる。

私は旅する時、いつもゲストハウスを利用する。そこで、出会った人達がとてもよい人で、その人達とよい思い出が持てたなら、訪れた場所の印象もよくなる。

旅行者にとって、国籍も年齢も性別も越えて交流できるのが、ゲストハウスの魅力だ。人との出会いに感謝し、他者を受け入れる心を持つべきだと思う。

3.結語

以上、「和歌山県における県外の人や外国人との交流のあり方」について、十余名の学生のバラエティに富んだ意見を紹介したが、一見、自由で多岐にわたるフレーズの中に、いくつかの傾向のようなものが見られる。

ひとつは、「交流」するための現実的な手段として、「言語」の役割にふれながら、しかし、英語等の言葉が出来るだけでは不十分であり、「伝えるべき中身・コンテンツ」こそが重要なのであり、つまるところ、その人間の全体性が問われると指摘している。

また、本来、和歌山県が持つ他県より優れた資産として、農業や田舎の魅力に大きな可能性を見出そうとしている。

そして、行政、あるいは「大人」が考えるグローバル化への対応が、若い世代の実態とややそぐわなくなってきているのではないか。時代の感性は変容してきていることを、彼らに接し、感じた次第である。

(2012.12)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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