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和歌山にカジノ・エンターテイメントを!

主任研究員  冨尾 勝己

はじめに

2006年11月29日に当研究所が主催する講演会「カジノ誘致と経済効果」が大阪商業大学アミューズメント産業研究所所長佐和教授(同大学経済学部教授)を招いて開催されました。

その講演会の要録を紹介するとともに、カジノをめぐる現在の状況と当研究所が2006年秋に実施しました県内各市町村に対するカジノ誘致に関する認識などを問うアンケート調査の結果を併せて紹介させて頂きます。

本レポートが今後の各自治体のカジノ誘致に対する施策検討、各地域の方々のカジノ・エンターテイメント誘致活動の参考になれば幸いです。

1.カジノ誘致とその経済効果(佐和教授講演会要録)

(1)余暇時間の過ごし方

余暇時間(1年に2,400時間・退職者は4,400時間)を有効に使えるかどうかで人生の楽しさ、豊かさ、充実感が大きく異なってくる。

余暇時間の過ごし方として精神的な高揚感、達成感、満足感を味わうことが楽しみの目的である。こういった楽しみのメニューにカジノを加えようというのがカジノ解禁の論拠の一つである。

(2)カジノ・エンターテイメント

自民党基本方針の定義では、テーマパーク、劇場、シネマコンプレックス、ショッピング・グルメモール、スポーツ施設、国際会議場、ホテルなどにカジノを含んだ複合施設とされており、ラスベガスのカジノホテルを世界標準として各国で導入されている。

(3)環太平洋諸国のカジノ事情

主要国でカジノがないのは日本、中国、台湾であるが、中国でも台湾でも議論がなされている。

シンガポールでは、合法化されて2箇所にカジノ設置が認められることになった。1箇所はラスベガスのサンズが落札し、もう1箇所は年内に決定される予定である(12月上旬マレーシアのゲンティング社が落札―筆者追記)。サンズは、この1件で総工費4,500億円程度を投資し、マカオにも数千億で投資する予定。トータルで1兆円近い投資を行うことになる。

マカオが世界のカジノの中心的な存在になってきた。ラスベガスを超える勢いである。マカオのカジノの過半の客は中国本土から来ており、年々増加している。日帰り客を含め中国本土からの顧客は年間延べ3億人という推計もある。

現在、マカオでは巨大プロジェクト「コタイ・ストリップ」の建設が進められている。全長約3kmの通りに沿って、総合エンターテイメント施設を8施設建設中である。3年前にマカオにオープンしたサンズ・カジノは常に超満員であり、1日5万人の入場者があり、うち4万人は中国本土からと言われている。

韓国では17のカジノがある。日本から最も近いチェジュ島(済州島)のカジノは、特にバブル崩壊後閑古鳥が鳴いている。日本人向けにはカジノだけではダメである。カンウォンランドは自国民も入場可能であり、炭鉱地振興のために開発されており、大リゾート地を目指している。

カジノを認可する国が増えているのは、新しい楽しみの提供、税収増、外国からの観光客増、経済効果(特に雇用増)などがその理由である。日本においても従来の神社仏閣だけではダメであり、カジノのような新しい魅力が必要である。

(4)カジノの経済効果

カジノの認可は新しい産業の創出である。カジノは、きわめて労働集約的な産業であり、直接雇用、間接雇用、波及雇用ともに大きい。膨大な数の人々の移動により周辺地域の活性化が図られる。また、国・地方公共団体に税収面で大きな効果がある。

カジノの経済効果は一過性ではなく永続的なものであり、その効果は非常に大きなものとなることが予想される。

(5)アメリカにおけるカジノの経済効果

アメリカではカジノの経済効果を高めるため、ほとんどの州で建物は新築で建設することがライセンス取得の条件になっており、ホテルの建設では、1室30uで500室以上(ニュージャージー州)が条件とされているなど建設需要の拡大を狙ったさまざまな工夫がなされている。

(チュニカの奇跡)

  • チュニカは50州中最貧州のミシシッピー州の中でも最貧郡であった。1992年に最初のカジノを開設し、現在では9軒のカジノホテル(6,000室)が営業中である。観光客数はゼロから1,000万人へと増加し、経済効果は非常に大きかった。カジノの収入は04年11億9,900万ドルである。

(アトランティック・シティの経済効果)

  • アトランティック・シティでは1976年に合法化され、マフィアの排除のため厳格なカジノ法制が定められており、オーストラリアやニュージーランドなどの法制化の見本となった。日本の法制化にあたっても見本とする必要がある。カジノホテルの雇用者は約5万人であり、カジノ産業でも雇用増1人につきカジノ産業以外での雇用が1人増えると言われており、アトランティック・シティのカジノホテルでの雇用増5万人は波及効果を含めると10万人の雇用増となる。

(ネバダ州の経済効果)

  • ネバダ州(ラスベガス)においては、カジノが州経済の中心であり、ネバダ州の収入の40%はゲーミング税からのものである。ネバダ州においては、所得税、相続税、贈与税が免税となり、売上税も家庭用の食材など免税になる。また、カジノ会社以外の法人所得税の免税、ハリケーンが来ない、ほぼ毎日晴天、犯罪も比較的少ないなどという事情もあり、リタイアした人がネバダ州へ移住する人が増加している。ラスベガスは安全で住みやすい街になっている。
(6)我が国における経済効果

個人のギャンブルへの支出額は5兆6,117億円であり、対GDP比で1.1%、対個人消費支出比で2%であるが、この数字には、アングラカジノ、海外旅行で日本人がカジノに支出している分は含まれておらず、もっと大きな数字になると思われる。アメリカの場合は、対GDP比で0.6%、対個人消費支出比で0.8%となっており、日本人はギャンブル好きであると言える。オーストラリア人もギャンブル好きだと言われており、対GDP比で2.0%である。

ラスベガスには年間3,500万人の宿泊客が、オーストラリアのメルボルンやシドニーのカジノにも年間1,000万人以上が入場している。

博報堂の調査結果では、海外カジノの経験者は25.6%であり、全国9エリアでトップは関東(31.3%)、近畿は3位(26.0%)であり、利用意向の調査(博報堂)では、全国で63.5%が行ってみたいとの回答をしている。フロア面積10,000u、ポジション数3,000として、600万人程度の入場者があるのではないかという推計結果がある。実際には1,000万人を超える可能性もある。

外国のカジノの入場者は、フォックスウッド・リゾート・カジノ(コネチカット州)が1日平均4万人、ハラース・ニューオーリンズ(ルイジアナ州)は1日平均2万人、クラウンプラザ・カジノ(オーストラリア)は1日平均3万2千人、サンズ・カジノ(マカオ)は1日平均5万人となっている。

(7)新しい観光資源としてのカジノ

2005年の日本人海外観光客数は1,740万人で、日本を訪れた外国人観光客数673万人である。ビジット・ジャパン・キャンペーンをして政府目標を2010年に1,000万人としているが厳しい状況である。外国人にとって日本は魅力が少ない。

(8)雇用面での効果と国・地方公共団体の税収

24時間営業を前提とすれば、カジノ部門、レストラン、バーなどいずれも3交替の体制となり、一つのカジノホテルで3,000〜4,000人程度の従業員が必要となる(必要人員の4倍以上必要)。また、波及効果を考えると、一つのカジノホテルの誕生で6,000〜8,000人程度の雇用増となる。

アメリカの平均などを考慮すると1ポジション3万円程度の収入があり、3,000ポジションのカジノでは、9,000万円/日×365日=328億5,000万円となり、国と地方公共団体が15%ずつ課税するとすれば、それぞれに49億2,750万円ずつの税収入となる。また、法人税、所得税、住民税、消費税なども増収になる。シカゴのカジノでは、800ドル/1ポジション、カンウォンランド(韓国)では30万円/1ポジションということもあった。1ポジション3万円という収入は慎重な数字であり、更に税収が大きくなる可能性もある。

税金の使い道を明確にすることで地元住民の反発が少なくなる。国税は年金財源に、地方公共団体は福祉、教育、治安、環境対策などに使うことも考えられる。

(9)自民党基本方針とカジノ法案の状況

自民党基本方針が発表され、また自民党内にカジノ関係の議員連盟が再結成される見込みである。カジノ合法化を目指す法案は、来年秋の臨時国会、もしくは再来年の通常国会に提出される可能性がある。

基本方針では、地域振興と国際観光振興に資するカジノ・エンターテイメントの設置を目指しており、施行者(地方公共団体)と民間事業者の「協働」スキームとなっている。組織暴力対策については、出入りの業者に至るまで厳しく認証確認を行い、青少年(未成年者、学生)は必ず入場させないよう、見てみぬ振りは許さないシステムが構築されるであろう。依存症対策も、依存症患者はあるとの前提で対策を打つことが必要であり、オーストラリアではカジノに窓や時計の設置、重度の依存症患者の入場禁止措置などが取られている。合法化によりアングラカジノに行く必要がなくなるということで闇組織の資金源を断つことができることになる。

基本方針では、当初2,3箇所、最終的には全国で10箇所程度とされている。地域振興という観点からは既に発展している都市部よりも発展の遅れている地域が優先されると考えられ、沖縄、北海道などの地域とともに和歌山も有望であるかもしれない。

(講演会 要録終わり)

2.カジノをめぐる現在の状況

佐和先生の講演会でも述べられていますが、かねてよりカジノの合法化に向けて調査・研究を行ってきた自由民主党カジノ・エンターテイメント検討小委員会が平成18年6月18日に「我が国におけるカジノ・エンターテイメント導入に向けての基本方針」を発表し、カジノ合法化に向けて一歩を踏み出しています。2007年後半あるいは2008年にはカジノ特別法が成立する可能性があります。自民党基本方針に基づき法律の内容が詰めていかれることとなるため、全国各地で自民党基本方針に基づいたカジノ誘致計画を検討していることが予想されます。

国際観光に関しては、日本から海外への観光客(アウトバウンド)の数字は一貫して伸びているものの、海外から日本への観光客(インバウンド)は伸び悩んでいる状況であり、この状況を打破するための一つの方策としてカジノの合法化が位置付けられています。また、地域振興、経済活性化、雇用者増などもその効果として期待されています。今後の合法化に向けての動きに注目していく必要があります。

カジノ法案合法化後は、まずは全国2,3箇所でカジノを認めると自民党基本方針に記載されており、政府によってその地域選定の方針が定められ、カジノ誘致に積極的な地方自治体が各地域の特色を活かした計画を提出していくことになると思われます。この2,3箇所に選定されることを目指し、着実に準備を進めた自治体が候補地として有利であることは間違いないと言えるでしょう。

全国では、東京、熱海、沖縄、秋田、珠洲などで、近畿圏では大阪府、堺市などで熱心な取組みが行われています。

そのような状況の中で、現在の和歌山県内各市町村の取組み状況を確認したのが次のアンケート結果です。

3.市町村アンケートの結果

和歌山県内の各市町村の協力を得て、カジノ誘致に関するアンケート調査を実施しました。
内容は以下のとおりです。

  • 期間 : 2006年9月11日発送〜9月29日締切り
  • 方法 : 郵送
  • 対象 : 県内30市町村
  • 返却 : 24市町村(うち1市町村は無回答) 返却率 80%
(1)カジノに対する調査・研究

和歌山県内の市町村でカジノに関する調査・研究を行っているか否かについての指標として、和歌山県が参加していた「地方自治体カジノ研究会報告書」(平成16年3月)、和歌山地域経済研究機構(和歌山大学、和歌山商工会議所、和歌山社会経済研究所)の「和歌山県におけるカジノの可能性に関する調査・研究報告書」、それと前述の自民党基本方針につき内容を知っているか否かという点を確認した結果が以下のとおりです。

地方自治体カジノ研究会報告書 和歌山地域経済研究機構報告書 自民党基本方針

それぞれの報告書等につき「知らない」と回答した市町村がほとんどであり、市町村レベルでは、カジノについての調査・研究があまり進んでいない状況と言えるのではないでしょうか。一部の市町村では報告書等の調査・研究を進めているところもありましたが、官民挙げての具体的な取組みを行っているところはありませんでした。

現時点では、具体的な合法化の道筋が自民党の基本方針によって示されたばかりの段階であり、やむを得ない面もありますが、カジノの合法化を睨んで着々と準備を進めている地域からは出遅れていると言わざるを得ない状況です。

(2)カジノ誘致の地域振興に対する有効性

一方、カジノ誘致の地域振興に対する有効性を確認した結果、「大いに有効」「有効」を合わせると78%となっており、回答に応じた多くの市町村が有効性を認識している結果となっています。各自治体がカジノ誘致を地域振興に有効であると認識していながらも、上記の結果のように事業としての可能性につき調査・研究を行っていないとうことは、カジノ・エンターテイメントの合法化の行方、カジノのイメージ・具体的な内容、何から手をつけて良いかわからないなど情報不足の面もあると思われます。

カジノ誘致の地域振興に対する有効性

(3)カジノへの関心度

カジノ誘致に対する各市町村の関心度を確認したのが下のグラフです。「大いに関心あり」「関心あり」とした市町村が39%であるのに対し、「関心ない」「あまり関心ない」とした市町村も31%ありました。「どちらとも言えない」とした市町村は26%でした。

カジノへの関心度

「関心がない」「どちらとも言えない」とした市町村に対し理由を確認したのが、次のグラフです。

「市町村の実情に合わない」という回答が最も多く57%となっています。地域のまちづくり、観光政策などとの齟齬、候補地の有無、世界遺産や従来の観光資源との兼ね合いもあっての回答ではないかと推測されます。また、住民等の反対を危惧する回答も29%ありました。

カジノへの関心が低い理由

4.今後の和歌山県の進むべき方向

和歌山にカジノ・エンターテイメントを!と言っても、住民の皆さんの合意がなければ計画は進んでいきません。自民党基本方針においても地域住民の理解を前提とした施行申請であることとなっています。海外においても公聴会を開催したり、住民投票を行ったりしている例が多く、日本においても地域住民の理解を得る努力は必要になってきます。

そのために施行者を目指すのであれば、カジノ・エンターテイメント誘致計画の輪郭を作り上げて住民に提示し、議論を始める必要があります。少し大変な部分もありますが、カジノ・エンターテイメントがもたらす経済的社会的な恩恵は講演要録にもあるとおり非常に大きなものであり、しかも永続的なものです。地域振興の一つの選択肢として検討の価値はあると思われます。

大げさかもしれませんが、カジノ・エンターテイメントの誘致としては、近畿地方で1箇所の可能性が高く、カジノ法案合法化後の地域選定への施行申請が最初で最後のチャンスになるかもしれません。

現在、日本国内各地域のカジノ誘致の動きとしては、「地方自治体カジノ協議会」に6自治体の正式メンバーと16自治体のオブザーバーが参加して行政レベルの意見交換を実施しており、また「全国カジノ誘致団体協議会」に民間の7団体が参加しています。全国カジノ誘致団体協議会では、2003年石川県、2004年静岡県、2005年秋田県、そして2007年2月17日に沖縄県において「日本カジノ創設サミット」を開催して情報交換などを行っています。

今後、これらの地域とカジノ誘致を争っていくには、和歌山県内における民間の誘致協議会や研究会などの組織化も必要かもしれません。

カジノと言えば、ギャンブルの暗いイメージがつきまとい、多くの懸念や反対意見があると思われます。ただ、日本はカジノの後進国であり、先進地域の事例などを参考に、安全で楽しいカジノ・エンターテイメントを作り上げていくことが可能であると言われています。

カジノに関する研究は、日本において盛んに行われているという状況ではありませんが、講演をして頂いた佐和先生が所長をされている大阪商業大学アミューズメント産業研究所が出されている「カジノ導入をめぐる諸問題<1><2>)」という論文集で、アメリカなど海外のカジノの事例研究や日本におけるカジノ設置に関する様々な提言が行われています。その他、日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)なども多くの研究成果を公表しています。このような研究成果を活用していくことが、日本でのカジノ・エンターテイメントの成功に繋がることは間違いありません。

一例として、少子高齢化社会という面からは、アメリカの高齢者のコミュニティであるサンシティの具体例を挙げて日本版サンシティの建設の必要性につき、佐和先生が上記論文集で論述されています(カジノ導入をめぐる諸問題<2>「日本版サンシティの建設」)。

和歌山県でも「わかやま田舎暮らし支援事業」に取組んでいるところであり、和歌山の農村、温泉、豊かな自然の中でのふるさとづくりを行い、その近隣地域にカジノ・エンターテイメントを組み合わせた計画を策定し、都会からの高齢者層(団塊の世代)の取り込みを図る、というのもカジノ・エンターテイメントを活用した地域振興策としては面白いのではないでしょうか。

いずれにしても、市町村、議会、商工会、地域住民の皆さんが、地域の中で一緒に、その地域の地域資源を洗い出してカジノ・エンターテイメントに関して議論していくことがスタート台だと思います。

地域にふさわしいカジノ・エンターテイメントってどんなもの?
カジノ・エンターテイメントを作るとすれば、どこか良い場所はある?
カジノ・エンターテイメント誘致でどんな町づくりをしようか?
などなど

まずは、このあたりから議論を始められてはいかがでしょうか。

(2007.3)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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