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産学官連携におけるTLOへの期待

研究部長  鳥居 昌之

1 まえがき

日本の産業界は、戦後欧米諸国に追いつけ追い越せと欧米からの技術導入をし、それをブラシュアップして高度経済成長をひた走ってきた。いまや国民総生産(GDP)511兆円(2000年)世界の約14%を占めるにいたっている日本の経済も、1990年からここ10年はバブル崩壊以降失われた10年といわれ経済が低迷している。

少子高齢化、高度情報革命(IT化)、環境問題、エネルギ−問題、地方分権等さまざまな社会問題があるが、高度成長は望めないまでも、新しい産業の創出により雇用確保と緩やかな持続ある経済成長がもたらされるならば再び日本が日出る国となりうる。

このことは日本の国のみならず、この近畿圏、和歌山県においても同様なことがいえる。

この持続可能な経済成長をもたらしてくれるものは、現在盛んに議論されかつ実践されてきている産学官連携による新技術開発のイノベーションであろう。これが新産業を創出し、雇用の確保を図り、経済の活性化をもたらしてくれるのである。

産学官連携の重要性は、以前から議論されて組織はあるが残念ながら充分に学の技術が産に移転されていなかったりして、産学官が期待通りに機能してこなかったように思われる。大学等から発生した研究成果を産業界への移転を促進し、産業技術向上及び新規産業の創出を図ることと、大学等の研究成果の活性を図るためのTLO(Technology licensing Organization)(技術移転機関)(大学の研究者が創出した研究結果から市場性の認められたものを発掘・特許化して、その技術を必要とする民間企業等にライセンシング(技術移転)をすることを目的とした機関)の整備促進を狙いとして、平成10年8月に「大学等技術移転促進法」(正式名称「大学等における技術に関する研究成果の民間事業業者への移転の促進に関する法律」)が施行された。また、平成11年10月に「産業活力再生特別措置法」(TLOについて特許料等の軽減)が施行された。平成12年4月、TLOが国立大学等の施設を無償利用することを可能にする「産業技術力強化法」が施行された。更に、国立大学等の教職員がTLOの役員等を兼業すること、国立大学等の教員等が研究成果活用企業の役員に就任することや、株式会社等の監査役に就任することが出来るように、平成12年4月に国家公務員法第103条に基づき「人事院規則」が整備された。これにより産学官連携による産業活性化への法整備がされ今後が期待されるところである。

一方、大学も独立行政法人化へ向けて改革が行われており、産学官連携の動きが活発になってくることが考えられることから、TLOの役割が一層注目されてくるものと思われる。

2.米国におけるTLOの歴史的背景

(1)バイ・ドール(Bayh・Dole)法の制定
   (正式名称 The Small Business and University Patent Act)

「化学と工業」第55巻 第1号(2002年)に産学官連携の特集が組まれており、全米の大学特許ライセンスを通して1998年の統計で28万人の新雇用者が生み出され、1年間に335億ドル(日本円で4兆円)の売買が行われたという。また、表−1のように、ライセシングによる各大学の収入等が掲載されている。

これらの収入は、大学設備の改善・新設や研究費の増加を促すことになり、レベルの高い教授、学生を引き付けているようである。

表-1 アメリカにおけるTechnology licensing 大学トップテ

アメリカにおける産学官連携の歴史では、1945年にMIT教授でCarnegie研究所所長のVannevar Bushが基礎研究を強調した科学白書“Science-The Endless Frontier” を政府に提出し、これによりNIH(National Institutes of Health国立衛生研究所)やNSF(National Science Foundation全米科学財団)、ONR(Office of Naval Research)の設立を促した。これにより産学よりも官学連携が強化されていき1950年後半の米ソの宇宙開発競争により、さらに官学連携が強化されていった。NASAの誕生もこの時期である。

また、この時期政府は政府資金によって生じた特許を産業化への技術移転をこころよしとしなかった。1970年から1980年にかけて日本をはじめとした外国企業の台頭から科学技術に対する危機感よりカーター大統領が「産業技術革新政策に関する大統領教書」を発表し、議会に政策提言を要請したことにより、政府のR&D資金の使われ方に対する制限・規則等が産学連携の有効な活用を害しているとの結論が出て、1980年12月にインディアナ州バーチ・バイ(Birch Bayh)上院議員とカンザス州ロバート・ドール(Robert Dole)上院議員の名前を取ったバイ・ドール(Bayh・Dole)法が可決された。
(東北通商産業局、東北大学「大学等技術移転セミナー」平成11年12月18日より)

この法律の骨格は、大学の所属する教官その他の職員、政府資金の研究に関係している特別の大学院生(以下職員等という)に対してその職務中の全ての発明・特許に対する権利を大学(TLO)に対して譲渡することを義務づけている。大学と雇用関係にある職員等は譲渡契約にサインすることが採用条件になっている。学内規定によって発明者は、TLOが受け取る発明の実施料の一部の配分を受ける権利を与えている。

大学は独占も含めて特許を第三者にライセンシングすることが許可される。

このことによって、企業は大学から独占ライセンスの入手が可能となり、大学への資金投資が意味あることになり委託研究が増加した。大学側は特許を所有することで大学の知的財産がふえ、ライセンス料という新たな財源ができ、産業界へのアプローチが増加した。また、大学は企業へのライセンシングすることにより収入を得ようとして積極的になり、産業への技術移転が活発化して、発明が商品へ結びつく率が高くなった。

大学における政府資金が減少傾向にあることや大学間の競争等により、自前収入を得るためにアメリカではTLO活動が活発化しているようである。発明した学科、学部そして発明者にも実施料の一部が配分されるというインセンティブが与えられていることもこの活動を活発化させている。

3.日本におけるTLOへの対応と現状

(1)TLOの機能について

図−1 TLOの一般的機能
図−1 TLOの一般的機能

図−1に示すように、TLOは大学と企業の掛け橋となるべき存在であり、主体は、大学の特許・技術を民間企業へ移転し、新規製品等へ結びつけていくことであるが、同時に、大学で開発された特許や技術情報を企業側に紹介することや、企業のニーズ情報を大学側に紹介する機能を持っている。また、技術コンサルティング(指導、助言)や共同研究の仲介・斡旋も重要な機能となっている。一般に中小企業では、大学は近寄りがたい存在であり大学との連携が取りにくいといわれてきている。したがって、TLOのコーディネーターの役割が非常に重要であることが窺える。

(2)日本における法整備

アメリカにおけるバイ・ドール法の制定により、民間企業への科学技術移転が促進されたことから、企業等による技術開発が活発になり、新たなベンチャー企業が創出され、アメリカが競争力を回復した。

日本においても、これをベンチマークし、以下の法整備がされてきている。

1)大学等技術移転促進法(TLO)法(平成10年8月施行)

内容:
 ア)TLOの整備促進

  • 大学、高等専門学校、大学共同利用機関及び国の試験研究機関等(大学等)における技術に関する研究成果の民間事業者への移転を促進するため、特定大学技術移転事業や助成金交付等の優遇措置により、新たな事業分野の開拓及び産業の技術の向上並びに大学等における研究活動の活性化を図る。特定大学技術移転事業を実施しようとする者(TLO)は、実施計画を作成し、文部科学大臣及び経済産業大臣の承認を受けることが出来る。
  •  ○承認TLO:大学等の教官個人又は公立、私立大学等の特許権等を扱うTLO
  •           →助成金の交付(助成率2/3、年3,000万円まで)
  •  ○認定TLO:大学・国研等の固有の特許権を扱うTLO
  •           →特許料、審査請求料の免除
2)産業活力再生特別措置法(平成11年10月施行)

内容:
 ア)国の委託研究開発成果の民間移転

  • 従来の政府の委託研究を通じて得られた知的財産権は国に100%帰属していたが、各省庁が政府に供与して行っている全ての委託研究開発に係る知的財産権については、100%受託企業に帰属させ得ることになった。

 イ)技術移転機関(TLO)の活性化

  • 承認TLOが特定大学技術移転事業を行う際に納付すべき特許料(年金)及び審査請求料手数料について負担軽減措置を講じる。(2分の1への減額)
3)「産業技術力強化法」(平成12年4月施行)

内容:
 ア)大学の研究活動の活性化のための環境整備

  • 民間から国公立大学への資金受入れ円滑化措置
    複数年度契約を可能とする措置、費目の細分の撤廃
  • 産学連携のため大学教官への研究助成制度の創設
  • 大学及び大学教官にたいする特許料等の軽減

 イ)研究成果の産業への移転の円滑化

  • 民間への技術移転のための国公立大学教官及び国公立試験研究員の民間企業役員の兼業規制緩和
  • TLOの国立大学キャンパスの無償使用措置
    TLOが国立大学の施設等を無償で使用できるようになった。

 ウ)民間における技術の「実用化」にむけた環境整備

  • 実用化・実証のための民間の応用技術開発への補助制度導入
  • 創造的な中小企業(試験研究費/収入 比率が3%超等)に対する特許料、審査請求料の軽減
(3)承認TLOの実情
1)承認TLOについて

現在、大学等技術移転促進法により平成14年4月までに承認されたTLOは表−2に示すとおり27機関である。関西においては、関西ティ−・エル・オ−、(財)大阪産業振興機構、(財)新産業創造研究機構(NIRO)がある。

なお、近畿2府4県と徳島、福井、三重において近畿ブロック知事会議の政策提言をうけて「産学官連携研究会」が発足した。TLOの共同利用や公立試験機関の研究情報の共有化など自治体が広域連携についの具体策を協議していく動きもある。
(2002年6月27日付け日本経済新聞)

表−2 TLO一覧表

会社名等
(承認日)
承認日 出資者等 主な関係大学 連絡先
国立大学など 北海道ティー・エル・オー(株) 平成11年12月24日 北海道大学ほか道内大学の教員有志・企業 北海道大学他北海道内の大学等 011-708-3633
http://www.h-tlo.co.jp
(株)東北テクノ 平成10年12月4日 東北大学ほか東北地域国立大学教員有志 東北大学はか東北地域の国立大学等 022-222-3049
http://www.t-technoarch.co.jp
(株)筑波リエゾン研究所 平成11年4月16日 筑波大学教員有志・企業等 筑波大学ほか 0298-50-0195
(株)先端科学技術インキュベーションセンター(CASTI) 平成10年12月4日 東京大学教員有志 東京大学 03-5208-1723
http://www.casti.co.jp
(財)生産技術研究奨励会 平成13年8月30日 既存の財団法人 東京大学生産技術研究所 03-5452-6094
http://www.iis.u-tokyo.ac.jp/shourei/fpis-tlo
農工大ティー・エル・オー(株) 平成13年12月10日 東京農工大教員有志等 東京農工大学 042-388-7254
http://www.tuat-tlo.com
(財)理工学振興会 平成11年8月26日 既存の財団法人 東京工業大学 045-921-4391
タマティーエルオー(株) 平成12年12月4日 4学校法人(創価大、工学院大、尚美学園大、東洋大)及び東京都立大学教員有志を中心とする 首都圏の国公私立大教員有志等 首都圏の大学 0426-31-1325
http://www.tama-tlo.com
よこはまティーエルオー(株) 平成13年4月25日 横浜国大、横浜市大教員有志等 横浜国大、横浜市大ほか神奈川県内の大学等 045-339-4441
http://www.yokohamatlo.co.jp
(株)新潟ティーエルオー 平成13年12月25日 新潟大学教員有志等 新潟大学ほか新潟県内の大学等 025-252-7464
http://www.niigata-tlo.com
(株)山梨ティー・エル・オー 平成12年9月21日 山梨大、山梨医大教員有志 山梨大学、山梨医科大学 055-220-8760
http://www.yamanashi-tlo.co.jp
(財)浜松科学技術研究振興会 平成14年1月17日 既存の財団法人 静岡大学ほか県内の大学等 053-412-6703
http://www.stlo.or.jp
(財)名古屋産業科学研究所 平成12年4月19日 既存の財団法人 名古屋大学ほか中部地域の大学等 052-223-6639
http://www.ctlo.org
(株)三重ティーエルオー 平成14年4月16日 三重大学教員有志 三重大学ほか県内の大学等 059-245-3650
関西ティー・エル・オー(株) 平成10年12月4日 京都リサーチパーク(株)、(学)立命館、京都大学教員有志等 関西地域の大学等(京都大学、立命館大学等) 075-315-8250
http://www.kansai-tlo.co.jp/
(財)大阪産業振興機構 平成13年8月30日 既存の財団法人 大阪大学ほか大阪府内の大学等 06-4964-6688
http://www.mydome.jp/
(財)新産業創造研究機構(NIRO) 平成12年4月19日 既存の財団法人 神戸大学ほか兵庫県内の大学等 078-306-6805
http://www.niro.or.jp/index.php
(有)山口ティー・エル・オー 平成11年12月9日 山口大学教員有志等 山口大学 0836-22-9768
http://www.tlo.sangaku.yamaguchi-u.ac.jp/
(株)テクノネットワーク四国 平成13年4月25日 徳島大、香川大、愛媛大、高知大教員有志、(学)高知工科大等 四国地域の大学等 087-811-5039
http://www.s-tlo.co.jp
(株)産学連携機構九州 平成12年4月19日 九州大学教員有志等 九州大学 092-643-9467
http://www.k-uip.co.jp
(財)北九州産業学術推進機構 平成14年4月1日 既存の財団法人 九州工業大学ほか北九州地域の大学等 093-695-3111
http://www.ksrp.or.jp/fais/index.html
(財)くまもとテクノ産業財団 平成13年8月30日 既存の財団法人 熊本大学ほか熊本県内の大学等 096-286-3311
http://www.kmt-ti.or.jp
私大の学内組織 知的資産センター 平成11年8月26日 (学)慶應義塾(学内組織) 慶應義塾大学 03-5427-1678
産官学交流センター 平成12年6月14日 (学)東京電機大学(学内組織) 東京電機大学 03-5280-3640
http://www.dendai.com/
国際産業技術・ビジネス育成センター (NUBIC) 平成10年12月4日 (学)日本大学(学内組織) 日本大学 03-5275-8139
http://www.nubic.adm.nihon-u.ac.jp
知的資産センター 平成13年4月25日 (学)明治大学(学内組織) 明治大学 03-3296-4327
http://www.meiji.ac.jp/tlo/index.html
知的財産センター 平成11年4月16日 (学)早稲田大学(学内組織) 早稲田大学 03-5286-9867
http://www.waseda.jp/tlo/index.html

資料:文部科学省HP(http://www.mext.go.jp/

2)日本のTLOにおける特許移転の状況と収入

平成10年にTLOの承認が始まって以来、現在27のTLOが活動中であるが、各TLOの特許出願数、保有件数、実施許諾件数等は表−3に示すとおりであり、着実に成果を上げていることが窺える。アメリカと比較するとまだまだの感があるが、これからに期待されるところである。

表−3 日本のTLOにおける特許移転状況
表−3 日本のTLOにおける特許移転状況

これらのTLOにおける2001年の特許公開公報は以下の通りである。

表−4 2001年承認TLO特許公開公報件数

出願人 件数
1 関西ティー・エル・オー(株) 44
2 (財)理工学振興会 42
3 (株)東北テクノアーチ 24
4 (株)先端科学技術インキュベーションセンター 18
5 (有)山口ティーエル・オー 12
6 (財)名古屋産業科学研究所 8
7 北海道ティー・エル・オー(株) 6
8 (株)筑波リエゾン研究所 5
9 (株)北九州テクノセンター 1
9 (株)産学連携機構九州 1
合  計 161

資料:特許庁HP(http://www.jpo.go.jp/indexj.htm)

参考のために、都道府県別に特許出願数をみてみると、2001年は東京、大阪が出願件数、登録件数ともに1位、2位である。和歌山は出願件数では26位、登録件数では29位になっている。

表−5 都道府県別特許出願及び登録件数
表−5 都道府県別特許出願及び登録件数

4.産学の共同研究の動向

TLO法の施行等とあいまって、図−2、3に示すように産学の共同研究件数も増加をしてきている。一方、国立大学においても受託研究の受入れ件数が平成7〜8年あたりから急激に増加傾向を示している。

図−2 企業との共同研究の実施件数等
図−2 企業との共同研究の実施件数等

図−3 国立大学等における受託研究の受入状況
図−3 国立大学等における受託研究の受入状況

資料:文部科学省HP(http://www.mext.go.jp/

5.産学官連携の問題点

産学官連携についての大学の意識と実態(「日経地域情報」 No.388 4.1.2002)によれば、産学官連携を行っている理由は、図−4の通りであり、1位は「研究成果の社会還元は使命」、2位は「企業から研究費が得られる」である。

図−4 産学官連携を行っている理由(国公私立大学)
図−4 産学官連携を行っている理由(国公私立大学)

資料:日経地域情報 No.388

産学官連携における学の問題点として、コーディネーター不足があげられている。

また、大学と地元企業との連携を促進し、地域振興につなげるために自治体がコーディネーター役として機能することを訴えている。

企業側からは「大学は敷居が高く近寄りがたい」という意見があり、大学のシーズと企業のニーズがマッチングしがたいのが現状のようである。

一方、企業側の問題点として企業の資金不足、企業が自社の都合を強いる、研究開発への取り組みが一貫しない、等が上げられている。

官の問題点として、手続きが煩雑、提供資金が少ない、財政事情で政策が変わる等が上げられている。また、官への期待として、資金提供と産学への情報提供が上げられている。

6.地域経済再生を目指す産業クラスター

従来の企業誘致策だけでは、産業振興に限界があり、既存産業の集積、大学、研究機関の知的集積等、産学の集積を強化する産業クラスターが必要であること及び人的ネットワークの形成、知と業の融合による新技術、新事業の創出が欠かせなくなっていることから、平成13年4月から国において産学官連携の具体的な動きとして、産業クラスター計画(地域再生、産業集積計画)が進められている。今後、このような地域経済の再生を目指したプロジェクトが活発化してくることが予想される。

産業クラスターの概要は以下の通りである。

(1)目的

地域経済を支え世界に通用する新事業の創出と産業クラスターの形成を目指し、地域経済の再生を推進する。

(2)背景
  • 一社独力での新事業展開は困難
  • 産学官の人的ネットワーク形成の重要性
  • 地域経済産業局がネットワーク結節点となり支援策を効果的に投入
(3)具体的な施策
  • 産官学の広域的な人的ネットワークの形成
  • 地域の特性を活かした技術開発の推進
  • 起業家育成施設(インキュベータ)の整備等
  • 事業化段階の支援策投入等
(4)19の具体的なプロジェクト(約3200社、約220大学の参加)

表−6 産業クラスター19プロジェクト
表−6 産業クラスター19プロジェクト

資料:経済産業省HP(http://www.meti.go.jp/

7.和歌山県における産学官連携

(1)産学官の現状

和歌山県にける産学官連携については各種の機構があり活動がなされている。

主なものとして、わかやま地域産業総合支援機構(らいぽ)があり、具体的な活動がなされている。相談・情報提供共同研究等の機関として和歌山大学地域共同研究センタ−、近畿大学リエゾンセンタ−、和歌山工業高等専門学校総合技術教育センタ−等の各種機関がある。また、技術・研究開発支援として、産学官交流会、わかやま産学官交流懇談会事業、きのくにコンソ−シアム研究開発事業、和歌山工業技術センタ−による技術指導等があり産学官連携の組織は一応そろっている。

わかやま地域産業総合支援機構(らいぽ)、近畿大学リエゾンセンター、和歌山大学共同研究センターについてパンフレットから概要を記す。

1)わかやま地域産業総合支援機構(らいぽ)(中小企業支援ハンドブックより)

(財)和歌山県中小企業振興公社を総合相談窓口として、各種機関と連携をとり事業の構想・準備から成長・発展の各段階における人材・技術・資金・情報など相談にONE STOPで対応するとともに、地域産業資源を生かした新事業創出を目指している組織である。

図−5 「らいぽ」の連携図
図−5 「らいぽ」の連携図

2)近畿大学リエゾンセンター(KLC)(パンフレットより)

近畿大学は大阪府、東大阪市の産業界、自治体をはじめとして、広く産学官との連携・交流を行っているが、更に積極的、効果的に推進するため、学部や学科の枠を越えて、大学として組織的に対応する必要性から組織さたものである。

主な事業として、共同研究、受託研究、プロジェクト研究、寄付研究、技術相談、技術指導、施設設備使用、講師派遣、研究者受入れ、技術者の研修、技術移転、研究情報提供である。

相談窓口は総務部総務課が担当している。

図−6 KLCの組織
図−6 KLCの組織

3)和歌山大学地域共同研究センター(パンフレットより)

和歌山大学の教育学部、経済学部、システム工学科の3学部、8学科の高度な専門知識や科学技術を地域社会で活用し地域社会の発展に貢献するために平成11年4月に設立されたものである。平成12年度、平成13年度の共同研究、受託研究件数は以下のとおりである。

表−7  共同研究・受託研究件数

平成12年度 平成13年度
共同研究 29件 33件
受託研究 13件 13件

図−7 和歌山大学地域共同研究センター
図−7 和歌山大学地域共同研究センター

(2)産学官の集積

一部の企業と学において、シーズとニーズがマッチングし、新規製品へのアプローチがなされているところもある。しかしながら、先の産学官連携の問題点にあげられているように、学の敷居が高いこと、コーディネーターが不足していること等和歌山においても同じような問題がある(平成13年9月12日 第8回わかやま産学官交流懇談会の報告)。これらを解決する一つの施策として、産業クラスターがあるが、和歌山においても、「海南インテリジェントパーク」があり、大学、民間企業が集まってきており、大いに利用が期待されるところである。

8.今後への提言

(1)TLOの設置とコーディネ−タ−の育成(人材層を厚くする)

新産業、新技術の創出には、学の特許や研究内容を把握し、かつ産のニーズをも把握して学の技術を産へ移転することが重要である。今後の科学技術のレベルアップのためにも、産と学の橋渡し役として、TLOが重要な役割を持ってくるものと思われる。

このTLOの重要性を現実のものとしていくためには、学の技術を理解し、産への移転が出来る人材、即ちコーディネ−タ−が必要である。コーディネーターについては、大学を定年退官した人や産業界を定年退職し技術を持った人を公募し、TLOのコーディネーターとして活躍してもらうことが考えられる。

このように、人材の育成を第一とし、産学官によるTLOの設置が望まれる。しかし、TLO単独で収益を上げることが難しい現段階では、現在ある組織、例えば、和歌山大学内、中小企業振興公社等の中にTLO的機能を持たせ、技術移転を促進することが出来ればよいと考える。

大学の独立行政法人化に向け改革がなされている現在、TLOが大学内に設置される可能性もあり、大いに期待されるところである。

(2)産業集積について(クラスター)

技術集団が集積することは、固有技術が融合し、新しい技術が創造される多くの機会を与える。国レベルにおいても、産業クラスター形成が積極的に行われている。和歌山にも先に見た、海南インテリジェントパーク等の集積する場所がある。和歌山産業クラスターの形成をしていくことが必要であろう。

(2003.6)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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