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なぜ今『沙也可』なのか

専務理事  辻  健

『沙也可』とは、今からおよそ4百年前の安土桃山時代を生きた紀州雑賀衆・雑賀孫市の息子の孫市郎(韓国名・金忠善、韓国での呼び名は『沙也可』)のことである。

今年の9月に神坂次郎氏に『沙也可』についての講演をお願いした。演題は、紀州雑賀衆・雑賀孫市の子孫が韓国にいた「沙也可への遥かな旅」という和歌山市民のほとんどが知らない、アッと驚くような演題であった。

なぜこの演題を選んだかと言えば、今後の展開によっては和歌山市の活性化の起爆剤と成り得るからである。

また、和歌山市に限らず、県内の市町村には、様々な歴史・文化資源があるが、これらの資源を活用して、世界遺産の「紀伊山地の霊場と参詣道」と連携させ、地域の活性化を図る上で、一つの事例を示すことができればと思ったからである。

『沙也可』を選んだ理由として次の5点が挙げられる。

  1. 既に孫市や『沙也可』を題材にした小説の出版や映画化がなされており、全国的に知られ、外国(韓国)との接点がある人物である。
  2. 安土桃山時代に朝鮮に帰化し、李朝の高官になるなど人間的な魅力があり、波瀾万丈の生涯を送った人物である。
  3. 最近、『沙也可』の里である韓国の大邱広域市友鹿里を訪れる日本人観光客が増えており、『沙也可』の考え方や行動が現代人にも受け入れられ共感を呼んでいる。
  4. 『沙也可』を主人公にした小説「海の伽や琴」がドラマ化或いは映画化された場合、日韓両国で大きな反響を呼ぶと思われる。
  5. 『沙也可』のとった行動や考え方は、世界の各地で紛争の絶えない現代社会に一つの示唆を与え、世界平和に寄与すると思われる。

なぜ今『沙也可』なのかということであるが、「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録され、和歌山県が世界の人々から注目されるようになり、また、隣の韓国では、日本の大衆文化が段階的に開放され、同時に韓国映画も輸入されるようになった。

特に、韓国映画「冬のソナタ」が日本で大ヒットし、日本人観光客が大挙して韓国を訪れるという現象が起きている。

更には、神坂次郎氏の『沙也可』を主人公にした小説「海の伽や琴」が韓国語に翻訳され、韓国で評判となっている。

こうした背景の中で、この小説「海の伽や琴」がドラマ化或いは映画化されれば、日韓両国は元より、世界的にも反響を呼ぶだろうし、世界遺産の「紀伊山地の霊場と参詣道」を訪れた観光客は、『沙也可』の故郷である和歌山市を訪れるに違いない。

今が、絶好の機会なのである。

次に、今後どのように展開していくかであるが、神坂次郎氏の講演会によって、聴講者に衝撃と感動を与えたが、これが『沙也可』ブームとなって、ドラマ化或いは映画化の実現に向けての大きなうねりとなることを期待したい。

ドラマ化或いは映画化の実現については、一研究所の取組みでは限界があり、今後の行政や関係者の努力に頼らざるを得ないが、韓国の国営テレビKBSが、この『沙也可』に関心を持ち和歌山市を訪れ、神坂次郎氏を取材するなどして特別番組を組んだ経緯もあり、働きかけによってはNHKとの合作によるドラマ化実現の可能性もある。

最後に、今回は一例として和歌山市の『沙也可』を取り上げたが、県内の市町村にも第二、第三の『沙也可』があるはずである。

例えば、南方熊楠(田辺市)、華岡青洲(那賀町)、浜口梧陵(広川町)等々である。

これは何も人物に限ったことではなく、その地域が持つ歴史・文化資源を再発見し、アピールすればよい。

ただ、アピールの方法には工夫がいる。

世界遺産の「紀伊山地の霊場と参詣道」と直接関係がない地域であっても、常に世界遺産を念頭に置きながら、如何にして訪れる観光客を自分の地域に迎え入れるかを考えることが重要であろう。

(2004.11)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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