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Gluten Free 米粉の可能性

主任研究員  山本 和生

はじめに

日本人の食生活に欠かせない米の消費量は、昭和37年をピークに年々減少し、平成28年には半分以下にまで減っている。食生活の欧米化や多様化などか主な理由といわれている。

日本の食を支える農業の現状は、高齢化や担い手不足、耕作放棄地の増加などの問題が顕著に表れ、農業を取り巻く環境が大きく変化している。

そんな中、米の新たな活用方法として米粉が注目されている。米粉は、文字どおり米を粉にしたもので、日本では古くから米を白玉粉、もち粉などとして利用してきたが、米の生産量のうちごく一部が和菓子などの材料として用いられるに過ぎなかった。しかし、ここ数年、製粉技術やパン技術などの向上により米粉を活用したパンやケーキ、麺類など新しい米粉製品が話題になってきていることから米の可能性に注目し研究を行った。


<米>

<小麦>

I 米の状況

現在のように庶民が米を口にできるようになったのは、江戸時代に入ってからといわれており、以後、米は日本人には欠かせない主食となっている。

しかし、米の1人当たり消費量は、昭和37年をピークに減少している。具体的には、37年度には1人当たり年間118.3キログラムの米を消費していたが、平成28年にはその半分以下の 54.4キログラムにまで減少している。

〇米の年間1人当たり消費量の推移
米の年間1人当たり消費量の推移

出典:農林水産省

このように米の消費が減少した要因は、少子高齢化、世帯構成の変化、女性の社会進出、経済成長に伴う生活水準の向上による社会構造やライフスタイルの変化、さらに多種多様な商品開発等の結果として、食料消費における選択の幅が広がったことや食生活の欧米型化、簡便化志向の強まり、食における消費者の嗜好が変化したことがあげられる。

日本では、30年近く出生率が減少し続け、人口に占める高齢者比率は増加し、少子高齢化が進展している。

特に、平成24年度と平成29年度を比較すると20歳以上の年齢層では加齢により食べる量が減少している。この年齢層は、今後、加齢により食べる量が減少する年齢階層に近づきつつあること等から、これまでの少子高齢化の進展が米の消費量の減少に結びついて、今後も消費量を減少させる可能性が高い。

また、少子高齢化の進展は、人口の減少につながる。「日本の将来推計人口」によれば、生産年齢人口(15〜64歳)はすでに1996年(平成8年)から減少に転じ、総人口でも2004〜2009年(平成16〜21年)頃をピークに減少に転じることが見込まれている。このような社会的背景の下では、今後、米の消費が大きく拡大するとは考えにくい。

年齢階層別にみた総人口の推移
年齢階層別にみた総人口の推移

(出典:厚生労働省)

年齢階層別にみた米消費量の推移
年齢階層別にみた米消費量の推移

(出典:総務省)

人口及び人口構成の推移
人口及び人口構成の推移

出典:2017年まで:総務省「国勢調査」、「人口推計(各年10月1日現在)」
(総数には年齢「不詳人口」を含み、割合は年齢「不詳人口」を按分補正した人口による。1971年以前は沖縄県を含まない。)

II 少子高齢化が進む中、米の需要を増やすため新たな米の活用

米は、ご飯で食べる以外にいろいろな食品に加工され食生活を豊かにしている。

もっとも身近な米の加工品としては、せんべいやあられなどの米菓や、切りもち、日本酒などがあり、それ以外に米の新たな活用方法として米粉の研究もされ、小麦粉に代わる原料として用途が広がり、米の新しい食べ方はここ数年で急速に脚光を浴びるようになった。

製粉技術の進歩により、パンやケーキ、さらには麺類などにまで幅広く利用され、独特のもちもちとした食感が人気を呼び、その可能性は広がり続けている。

また、アメリカでは約300万人、EUにおいても約500万人以上のセリアック病患者がいると推定され、さらに増加する傾向にあるといわれている。そこで小麦や大麦などの麦類を摂取することによる身体への悪影響を回避するために麦類の代替として米粉に注目が集まってきている。

グルテンは、小麦粉に含まれるグリアジンとグリテニンに水を加えこねることで生成される。グルテンが生成されることによって小麦は粘弾性を持ち、パンの膨らみを支え、また、麺類に強いコシを与えるが、最近、グルテンに起因する身体への影響が問題となってきている。

欧米では近年のグルテンフリー食品市場の盛り上がりから米粉にもグルテンフリー食品として注目が集まっていることを踏まえ、国でも国産米の消費拡大に向けた運動として、フード・アクション・ニッポン(FOOD ACTION NIPPON)をおこなっている。

現在、日本の食料自給率は平成30年度で37パーセント(カロリーベース)となっている。食料の多くを外国に依存しているため、もし異常気象や戦争・疫病など不測の事態が発生し、外国からの食料供給が止まった場合、国民の食生活に甚大な影響を及ぼす可能性があるために、国産農林水産物の消費拡大を推進している。

III グルテンフリー食材<国内事業者の取組み事例>

美味しい米粉〜ヨーロッパでKOMEKOが受け入れられた魅力〜 小城製粉株式会社

一口に米粉といっても、餅米やうるち米が原料となるほか、製造方法や製粉技術によって、様々な種類に分かれる。小城製粉の製品の特徴としては、単一のうるちや餅粉だけを作るのではなく、さまざまな市場のニーズにあった新しい粉作りをおこなっている。

現在、国内での米粉の販売のほかに「プレミアム米粉」、「米粉パン専用粉」、「焼き菓子用米粉」の三種類の米粉を販売するためドイツに拠点を設け、ヨーロッパでの販路拡大に取組んでいる。実際、ヨーロッパでおこなわれる展示会や地域の卸店などで実演し、米粉の良さを PR している。ドイツ法人も設立しブランド名をKOMEKOとして、ヨーロッパではある程度どの地域でも米粉を買えるようになっている。また、SNSを使った情報の拡散や、ドイツの通販メーカーでの商品の取扱いなどで、販路拡大に努めている。

(出典: 小城製粉株式会社 https://www.komeko.de/ (2020-03-17))

IV 海外への米粉輸出の可能性(輸出先となるヨーロッパ及びアメリカの状況)

世界では幅広く小麦が利用され、世界の生産量は日本の米の年間総需要の約100倍に到達している。

米粉は、小麦粉と違いグルテンを含まない。

このためグルテンフリーを武器に世界の小麦市場の1%でも代替すれば、日本国内の米需要が増加することになる。

世界のグルテンフリー市場は年々拡大し、2020年には80億米ドルに到達するといわれている。実際にアメリカでグルテンフリー商品を使用している人のうち、セリアック病患者は一部といわれ、むしろ健康に気を使っている人が幅広く消費している。

国別では、アメリカが全体の半分、イギリス(UK)、イタリアなどで、中には、フランスのように規模は小さいが猛烈なスピードでグルテンフリー市場が伸びている国もある。

世界のグルテンフリー製品市場
世界のグルテンフリー製品市場

グルテンフリー市場で米粉の参入が望める分野としては、1番目がシリアル、2番目にパン・ケーキ、3番目にパスタの順になっている。3割近くをパン・ケーキが占め、日本産米粉の特徴を活かし、他国産がまねのできないような特徴を出している。

世界のグルテンフリー市場カテゴリー別シェア(2017)
世界のグルテンフリー市場カテゴリー別シェア(2017)

他国産の米粉は油脂がバラバラなため、グルテンがないとくっつかない。日本の米粉はカロリーや油脂などの品質が優秀で、ブロックのように一つ一つの油脂が積み重なり膨らむ構造が特徴である。それに加えて、米なので小麦粉にない味や食感・香りを提供できる。

他国産米粉との差別化ポイントとしてさまざまな調査から3つに絞って表現している。

1番目、美味しくて食感が良い。外側はカリカリ、中はモチモチという特徴があり甘い香りがある。

2番目が、ヘルシーで健康に良い。日本産米粉は添加物を使わなくても膨らみやすく、条件によっても違いがあるが、健康によいパンやお菓子を作ることができる。

3番目は、作りやすい。日本独自の高い製粉技術で作られた米粉は、だまになりにくいなど作業効率がいい。以上のような特徴を日本産米粉は有している。

JFOODOでは、日本産米粉の販路を拡大するために米粉の特徴を載せたリーフレットやレシピを作り各プロモーションの場で活用し徐々に米粉を広げている。

V 日本米粉協会による推奨マーク

日本米粉協会は、日本産米粉が入っているという表示シールを製作しパンの袋に貼り付け、見た目でも日本産米粉使用ということがわかるよう推奨マークや用途別基準を定めた。

<日本米粉協会による推奨マーク>
日本米粉協会は、高品質な米粉の普及に向け、米粉の「用途別基準」に適合する製品に、
協会の「推奨マーク」を付与する仕組みを開始

<米粉用途別基準>
米粉を用途に応じ「菓子・料理用」(用途表記:@)、「パン用」(同:A)、「麺用」(同:B)で分類

この番号をパッケージに表示することで使いみちに応じた米粉を選ぶことができる。

(出典:日本米粉協会 http://www.komeko.org/standard/(2019/08/09))

おわりに

米は、ここ数年、製粉技術の進歩によって、米粉のパンやケーキ、麺類など、これまで主に小麦で作られていた加工品にまで幅広く利用され米粉の可能性が広がってきている。

食生活の欧米化などで米の消費が減少し、小麦製品を摂取することが多くなっており、日本で利用される小麦の大半が輸入に頼っている。世界的な異常気象や何らかの要因のため安定的な供給ができなくなることも考えられ、そのような状況を回避するため、国内で自給できる穀物を増やしていくことが重要である。そこで、加工技術が向上した米の国内生産を増加させ、米粉の普及により、新たな米の消費拡大が図られれば、食料自給率を高めることができ、輸入農産物の食料需給の将来的なひっ迫による原料価格の高騰や原料の供給不足を防止することを期待できる。

また、国内米飯需要以外の米粉用米を本格生産することによって、貴重な食料生産基盤である水田を最大限に利用することができる。米粉用米の生産を拡大することで水田活用が活発化し、耕作放棄地の減少や農村特有の良好な景観形成の促進及び農村の豊かな自然環境の保全・再生が図られる。

さらに、地域の基幹産業である農林水産業と商業・工業との連携(「農商工連携」)を強化し、相乗効果を発揮していくことで、米粉利用が促進され、食料自給力・自給率向上と地域経済活性化に結びつくことが期待できる。

米粉利用の拡大により農業の可能性を広げ、より収益性の高い農業モデルが構築されることに期待したい。

(2020.8)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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