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ファミリー・サポート・センターについて〜子育て卒業世代による「子育て」

主任研究員  山下 光之助

1.「ファミサポ」とは

ファミリー・サポート・センター(以下「ファミサポ」という。)の子育て支援をご存知だろうか。

子育ての支援を受けたい人と、サポートしたい人とが登録する会員組織で、地域で子育てについて相互援助を行う有償ボランティア活動である。市町村またはその委託を受けたNPO等が、子どもの送迎や預かりを依頼する「利用会員」と、援助を提供する「サポート会員」との仲介をしている。県内では紀北市部や田辺市及びその周辺町で実施されている(「利用会員」や「サポート会員」の呼称は市町村により異なる)。

核家族の一般化や、子どものいる家庭における共働きの割合の増加等で利用会員の需要増が見込まれる中、これに対応するサポート会員を確保するため、事業の説明会を兼ねた講習会が各地で開催されている。

【ファミサポ事業の概念図】
ファミサポ事業の概念図

(資料 厚生労働省

2.他人(ひと)の子を預かれるか

「自分の子どもや、孫をみるだけでも大変なのに、他人(ひと)の子を預かるなど万一のことがあれば・・・」との危惧もあろうが、厚生労働省が主導して始まった事業であり、子どもの預かりにあたっての留意事項等の講習が実施され、ファミサポ負担で万一に備え保険加入する仕組みとなっている。

「子どもは好きだけどどんな子どもを預かることになるのか」との不安には、事前にアドバイザー(ファミサポ職員のこと。以下同じ。)や利用会員とその子どもとの顔合わせをする手順となっており、いきなり見知らぬ子どもを預かるようなことはない。

「用事があって引き受けられない場合もあるのでお役に立てない」ことも心配ない。都合のつくときにできる範囲で支援することが基本である。

「専門資格をもっていないので敷居が高い」かもしれないが、この種の事業の全国調査によると、サポート会員のうち半数以上が看護師や保育士等専門職以外の一般市民である。年齢層は様々だが、50歳代や60歳代が多く、健康で知恵や経験豊かな高齢者が増えてきている。特に男性サポート会員の年齢別内訳では60歳代が4割を占め、ファミサポ事業での大きな支えとなっている。

子どもが好きで、自分の都合のつく時間にできる有償ボランティアであり、親の代わりに子どもの世話をする「2番目の親」の役目である。子育て支援への思いがあれば、子育て経験の有無にかかわらず、一般市民が、子育て渦中にいる世代に手を差し伸べられる仕組みである。

お迎えや預かりの交流が、やがて「孫」や「お迎えのおじちゃん・おばちゃん」のような存在になるかもしれない。送迎や預かりの時間帯は、利用会員とサポート会員との合意次第である。

【会員登録の流れ】
会員登録の流れ

(資料 和歌山市ファミリーサポートサンター
注:和歌山市では、提供会員が通常行うサポートに加え病児預かり等も行う会員をスタッフ会員と呼んでいる

基本的には預かり対象は元気な子どもであるが、病児預かりのニーズの高まりから、平成21年度から病児の預かりがファミサポでできるようになり、実施しているところも多い。

病児の預かりをファミサポに登録しようとするサポート会員は、事前に看護師や医師、心理士や保育士等による専門研修を受講する。そこでは、ひと昔前にはなかった子育て用品に出会ったり、子どもに寄り添うことの大切さを具体的場面を想定する中で新たに発見したりしながら、病児の預かりに必要な看護や医療等に関する知識を身に付けていき、サポート会員自身が安心して預かりができるようになっている。

あくまで親の代わりを務める範囲の預かりのため看護師等のような専門的な対応をするのではないが、子育て支援に関わるにあたって必要な研修であり、その研修は、サポート会員が自身の子育て経験を振り返る機会ともなる。

3.借りたい「2番目の親」の手助け

【会員登録後の実際の利用】
会員登録後の実際の利用
(資料 いわで・きのかわファミリ-・サポート・センター
「そらまめサポート」

どっちに動くかわからない子どもの後を四方に注意を払いつつ追いかけ、あれもこれも終わっていないことを気にしながら、片付けする端から散らかっていく部屋の景色をどう心安らかに受けとめられるか。煮詰まる前に、チャイルドシートにくくり付けエアコンを利かして安全速度でドライブもよし。注意は安全走行だけに向けていればすむし、振動で眠ってくれたら静かな時間が取り戻せる。しかし家はまだ片付いていない。帰宅すればまた起きる。午睡のせいか、夜も元気だ。多分明日も元気だ。

どう効率よく片付けるか、そのためにどう子どもを管理するか、新しいものに興味をもって触ったり、なめたり、ひっぱったりが、余計な家事を増やすのだと思うと先回りしてしまう。子どもにとって大切な経験のひとつ一つを、失敗したこと、余分な片付けごとを増やしたこととして、否定的に反応してしまう。そして怖い顔に恐れをなしてあげる子どもの泣き声は、何か正義に指弾されているようで益々応える。

煮詰まってしまう前に、少しでもいい、たった一人の時間が欲しい・・。よき子育てには休養が必要である。

利用会員は就労、非就労に関らずこの事業を利用でき、対象の子どもは0歳から12歳までと幅広い。登録無料で年会費も不要、事前に登録しておき必要なときに助けを借りる仕組みである。アドバイザーを通して、登録済みのサポート会員の中から、保育園等の送迎場所や預かり時間、居住地の近さ等、条件に合いそうな方と予め子どもを交えて顔合わせをする。実際に送迎や預かりをお願いするときのために、双方の家のことも情報交換をする。

預かりをする家をサポート会員宅とするかどうかの場所の確認や送迎等の時間帯等の希望も相談して決めていくので、合意があれば泊りや夜間の預かりの依頼も可能となる。登録や打ち合わせをしたから利用しないといけないわけではない。預かりが必要になってからでは間に合わないので、あらかじめ、条件の合うサポート会員と事前の打ち合わせが必要なのである。掛捨金のない保険のようなもので、負担は、実際に依頼した際に、通常、1時間700円(病児等は900円)をサポート会員の方にその都度直接支払うのみである。

4.熱を出した、休めない!

出勤前というのに子どもに熱がある、預け先がない。職場には子どもを看る休暇制度があるが、制度があることと、実際に、今日、休めるかどうかは別ものである。

ファミサポのように病児を親の代わりの「2番目の親」が預かるのとは異なり、保育所や病院の中には看護師等を配置して病児保育を実施しているところがある。当該保育園の園児でなくても利用できる。

事前手続きを経て、かかりつけ医で受診して、当該保育が利用できる病状であることの診断(連絡票)が必要である。病児保育施設は1日2500円前後の費用で、8時から18時まで(施設により若干異なる)、看護師等の専門職に看てもらえるので、安心してお願いできる。ただ、定員や曜日の関係でいつでも預けられるわけではない。

安定した需要がないために赤字経営が多く実施箇所が少ないが、働きながら子育てをする者にとって、駆け込める場が控えていることの意味は大きい。

【保育所や病院での病児保育】
保育所や病院での病児保育

(資料 社会保障審議会少子化対策特別部会)

病児保育施設を利用しようとしても、迎えの時間に間に合うかどうかが気になり躊躇してしまうかもしれない。その場合、予めサポート会員の合意を得ておけば、病児保育施設への迎えに加え、親が戻るまでの会員宅での預かりも可能である。

病児保育施設とファミサポの両方を利用すれば、昼間の大部分を看護師等の専門職に看てもらいながら、経費負担も抑えられる。普段元気なうちにサポート会員のお世話になり顔馴染みになっていれば、子どもの病気の際は、預ける側も預けられる側も安心である。

【病児の預かりのイメージ】
病児の預かりのイメージ

(資料 一般財団法人女性労働協会

以上は、ファミサポ事業の概要である。市町村によって、預かり宅をサポート会員宅とすることを基本としていたり、複数の市町村にまたがってひとつのNPOが受託しているところもある。また、居住地の市町村にファミサポがなくとも隣接市のファミサポが対応してくれるところもある。

預かりを行うのは自ら支援を申し出た温かさを携えた個人であり、その支援を支えている舞台裏には、利用者の側に寄り添って連絡・調整をしてくれるファミサポ事業を受託した心強いNPO等や行政のアドバイザーがいる。

5.世代を越えて

子どもを生み育てやすい社会に向けた取組が様々になされてきているが、依然として子育てへの負担感は大きい。高齢者福祉を後押しする声は当事者が累増して大きくなる一方、現役子育て世代は、当事者が「期間限定」であるのみならず、その限定期間内の当事者人口が今後減少していく。

その点、一般市民が子育てに関わるファミサポ事業でのサポート会員拡充は、利用会員の子育ての支援の輪を広げるとともに、地域の中に広い意味での子育て当事者を増やすことに繋がる。

預かった子どもから元気をもらいながら、できる範囲で少しだけ手を差し伸べる、その「少し」の広がりが、現役子育て世代に地域に支えられているという安心と信頼感を醸成するとともに、心と時間の余裕をもたらし、子育てへのやさしい眼差しに繋がる。

6.子育てを通じた地域の活性化

ファミサポ事業は、支える会員と支えられる会員間で、報酬が受け渡しされる、地域のニーズに地域が応える仕組みである。地域に支えられた子育てしやすい町は、働きやすい町でもあり、それは、若い子育て世代をよぶ。世代間を越えて子育てを通じた地域の繋がりを呼ぶ。

7.利用しやすいために

なかでも、共働き家庭やひとり親家庭にとっては、子どもが病気の際に安心して預けられる場所があることは、仕事を続けるうえで必須ともいえる。

ファミサポが、より利用しやすい仕組みになるためには、回復までの期間が長い病気の際に大きくなりがちな費用負担の軽減や、いつでも安心してサポートを受けられるような受入態勢、すなわち地域の偏在がなく、層の厚いサポート会員の確保が欠かせない。

受入態勢が充実されれば広報を兼ねた試用や一定年齢の子どもを対象にした期間限定の回数券給付等も検討できよう。一定期間内の安定需要があれば、「家庭内でできる仕事」として認知され、サポート会員が増加するという好循環も期待できる。

8.終わりに

「子どもが突然熱を出すのは当たり前、力になれるのなら、いつかかってくるかもわからない連絡待ちも全然苦にならない。」と、利用会員からのSOSが届く携帯を手に、アドバイザーの一人はこう話してくれた。利用会員とサポート会員との温かい交流はこのようなアドバイザーのパイプを通して実現できている。

地域での「子育て支援」、そこで想起する場面は、ひとそれぞれであろう。それほど多様であり関わり方は様々にあろう。ファミサポはその一つである。

地域の人々が少しずつ手を差し伸べ、子育て世代を支えるやわらかいネットを広げていく先には、街のどこかで聞き覚えのある子どもの声がする、誰にとってもぬくもりのある故郷の風景に繋がっていくのではなかろうか。

(参考)

(補足)

子育て支援については、和歌山県ホームページ 「ミライ☆キラキラ〜わかやま出会い&子育て応援サイト」に詳しい。

和歌山県内のファミリー・サポート・センター事業実施市町村は、上記サイトの「子育てNAVI」で、「子育て情報(年齢別で探す)」の「年齢別子育てカレンダー」に掲載されているほか、平成24年度からは紀の川市が岩出市と、みなべ町、上富田町、白浜町、すさみ町が田辺市と広域実施している。

また、病(後)児保育実施施設は、同サイトの「子育て情報(目的別で探す)」に掲載されているほか、平成24年度に入ってからは、和歌山市で月山医院(小松原通)、田辺市で赤ちゃんと子どものクリニックBe(たきない町)、有田郡3町による広域実施で平山こどもクリニック(有田川町天満)で開設されている。

(2012.9)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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