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動き出したSDGsとCSRの本質について

研究部長  安井 尚人

1.はじめに

最近、SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)という文字や、街中ではカラフルなロゴマークのピンバッチを付けた場面に遭遇する機会が多い。SDGs志向に水を差すわけではないが、政府の戦略方針だから、社会的評価が上がるから、これからはCSR(企業の社会的責任)ではなくてSDGs時代などと、盛り上がっているだけではないのか。このようなグローバル視点での活動は歓迎すべきものではあるが、大切なことは一過性のキャンペーンで終わらせずに続けてゆくことである。

そうでなければ、CSRと同じようにSDGsもコストとしてとらえられかねない。その為には、CSRの本質やSDGsの背景を理解することが必要である。(2003年は日本のCSR元年、2017年はSDGs元年と言われている)。

ここでは、動き出したSDGsとCSRの本質、企業や自治体の取り組みについて考察を行う。

2.CSRからSDGsまでの変遷

CSRからSDGsまでの変遷を図表1に示す。

CSRという言葉は、1924年にアーサーF・シェルドンが社会的責任(Social Responsibility)という用語を用いたとされ、「継続的な利益をもたらす顧客の確保が企業の継続的な発展を実現する」としている。

また、サステナビリティ(持続可能性)という言葉は、1987年に「環境と開発に関する委員会(ブルントラント委員会)」で提唱され、「持続的な開発とは、将来世代のニーズに応える能力を損ねることなく、現在世代のニーズを満たす発展」と定義された。そして、12歳の少女、セヴァスチャン・スズキの「伝説のスピーチ」で有名な1992年のリオ地球サミットで、「人類の共通目標として、経済成長は地球環境に配慮した発展に転換し、環境と両立しなければならない」ことが合意された。

CSRについては、1997年にジョン・エルキントンは、企業の持続的な発展は、経済・環境・社会の3要素の調和が必要であるとした「トリプルボトムライン」の観点から、企業活動を経済面のみならず社会面及び環境面からも評価しようとする「CSRの基本的な概念」を提唱した。さらに、2000年には、CSRの基礎的な原則「グローバル・コンパクト」が提唱され、署名する企業には社会的なステータスも得られるようになった。

その後、CSRは、標準化、経済性視点、グローバルな枠組みの3方向で整理されている。

まず、標準化については、2000年には、サステナビリティ報告書の基準としてGRIスタンダードが国際的指針として、2010年には、国際標準化機構(ISO)の国際規格ISO26000が標準的な規格として、組織のCSRの範囲を「社会及び環境に対する配慮を組織の意思決定に取り込み、その活動が社会及び環境に及ぼす影響に関し、組織は説明責任を持つ」と規定している。

経済視点では、2006年に、金融機関が、環境、社会、ガバナンスを考慮して投資活動を行うことを約束するPRI(責任投資原則)が提唱され、経済的な目的と環境や社会の関する目的が両立するESG投資がCSRの推進の重要な因子となっている。

また、マイケル・ポーターは、2011年に、企業と社会に新たな価値をもたらす、CSV(共通価値の創造)を事業戦略にすべきと提唱している。この考え方は、「社会的な課題の解決が、企業価値の向上につながり、企業価値と社会価値の同時実現を事業戦略とするのが、企業のCSRの本来のあるべき姿」としている。

一方、グローバルな枠組みとしては、2000年には、2015年までに達成すべき国際社会の共通目標であるMDGs(ミレニアム開発目標)取り組みが始まった。その後、2015年には、ポストMDGsとして2030年までの国際目標としてSDGsが提案され、国際社会の課題に対して、すべての国は責任をもって対応を行い、企業は課題解決に対して創造性とイノベーションの役割の発揮を求められている。

3.CSRの概念について

CSRの始まりは、公害問題などに対する企業の社会的責任の形で始まったが、経済社会の変化とともに範囲が拡大してきた。図表2にCSRの基本的な概念や体系化を示す。

CSRの基本的な概念は、ジョン・エルキントンが「トリプルボトムライン」を企業価値の評価として提唱した。これは、決算書の最終行(ボトムライン)に損益を記述するように、社会面では社会貢献、環境面では資源節減などの評価を行う非財務情報が企業価値として重要である考え方である。

また、A.Bキャロルは、CSRを総合的に体系化し、経済的・法的・倫理的責任に加え、裁量的責任として社会貢献活動(フィランソロフィー、寄付、ボランティア等)の4層構造のCSRのピラミッドを提唱した。日本の当初のCSRは、裁量的責任が多くみられ、本来の事業とは無関係な活動が多かった為、「CSRはコスト」といった認識も生まれた。

一方、社会的価値と経済的価値の同時実現を示しているのが、ネスレの社会ピラミッドである。コンプライアンス・人権、環境の持続可能性を「守りのCSR」、CSV(共通価値の創造)を「攻めのCSR」と位置付けている。言い換えると、第3層のCSVを実現するためには、第1層,第2層への配慮が欠かせないとしており、現在の多くの企業はこのCSRの概念に近い。

このように、CSRの概念は、社会の要請により、企業の倫理的な法令順守から、寄付やボランティアなどの社会貢献を経て、社会的価値と経済的価値が両立する持続的可能な成長を伴う方向に定着しつつある。

4.SDGsとは何か

SDGsは、MDGsの後継として2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標のためのアジェンダ」に掲げられる目標である。MDGsは経済成長を通して発展途上国の生活を改善しようとした目標に対して、SDGsは、発展途上国だけでなく、すべての国が、国際社会が目指すべき貧困の根絶、不平等の是正、気候変動、生物多様性等、世界が取り組むべき「持続可能な開発目標」としている点で異なっている。

SDGsの基本要素を図表3に示す。

理念として、「世界共通の目標体系、誰一人取り残さない、国の責任と企業の創造性とイノベーションによる変革」の3つを特徴にしている。また、枠組みとして国際社会が2030年までに目指すべき17のゴールと実現するための169のターゲット、国連統計局が公開している232の評価指標から構成され、「5つのP」と呼ばれる実現すべき価値として統合されている。また、17のゴールは、トリプルボトムライン(経済、社会、環境)の3つの枠組みと、パートナーシップを基本軸として編成され、SDGsウェディングケーキと呼ばれている。

「何のためにSDGsに取り組むのか]と聞かれれば、既存の取り組みを17のゴールに紐づけ(ピストグラムのマッピング)するだけにとどまっているものが多い。SDGsウォッシング(うわべだけを塗る)と批判されないためにも、SDGsのゴール・ターゲットを基準にした戦略立案に取り組む必要がある。市場価値12兆ドル、雇用創出3億8000万人といわれる「新市場の獲得」、「経営リスクの管理」等の社会課題解決に対して、「バックキャスティング(将来の到達点を設定する手法)」からの発想が求められている。また、具体的な実施のための企業の行動指針として、SDGsコンパス(SDGsの理解、優先課題の決定、目標の設定、経営への組み込み、報告とコミュニケーションのステップの提示)が示され、経営戦略のマテリアリティ(優先順位)、整合性、貢献の測定管理等最大限に貢献できるツールと知識の活用が有効である。

5.SDGsの展開について

(1)日本での認知度

SDGsが2016年にしてスタートして4年が経過したが、日本での生活者、自治体、大企業、中小企業のSDGsの認知度を図表4に示す(調査内容や実施時期については同じではない)。

「知っている」と答えた回答は、自治体で74.8%、大企業では97%と高い。これは、自治体では、「SDGs未来都市・モデル事業」への支援や「まち・ひと・しごと総合戦略」にSDGs推進の理念や取り組み方等を記載した効果が大きい。

また、大企業では、CSR,サステナビリティ,統合報告書等に非財務情報の任意開示を行っている企業が7割を超えており、GPIF(日本年金積立金管理運用独立行政法人)が、PRIに署名し、ESG投資に積極的に取り組む意思を明確にして以降急速に広まり、SDGsと両立した企業価値向上を経営戦略として位置付けている効果が大きい。

一方、「知らない」と答えた回答は、生活者で84%、中小企業で84.2%と多い。国連持続可能な開発ソルーション・ネットワーク(SDSN)のSDGs達成度ランキングでは、日本は162ケ国中15位である。また、電通ジャパンブランド調査による世界20ケ国による中高所得者のインターネット調査では、平均認知度の60.3%に対して、日本は14.8%と世界の中でも際立って低い状況であり、生活者、中小企業の認知度の向上が急務である。

(2)自治体のSDGs

自治体にとって、SDGsはグローバル視点での持続可能な理想を掲げたもので、多くのターゲットやゴールが並べられ具体的な方法が描かれたものではなく抽象的である。しかし、SDGsの理念・共通言語は地域政策との親和性が高く、自治体行政の政策に、先人踏襲ではない変革をもたらす可能性がある。

政府は、2016年に「SDGs推進本部」を設置し「SDGs実施指針」(5つの原則と8つの優先課題)を示し、2018年には具体的施策として「SDGsアクションプラン」を公表し、日本の「SDGsモデル」として「連動するSiciety5.0,原動力とする地方創生,次世代・女性の支援」の3本柱が掲げられている。

また、自治体に対しては、地方創生の枠組でのSDGs推進策として、3年間で90の「未来都市」、30のモデル事業を選定し全国の自治体への展開を行っている。2018年、19年は、応募112件に対して、60の未来都市、20のモデル事業が選定されている。

このように、政府のSDGsへの取り組みが本格化してゆく中で、地方自治の推進の意義を図表5に示す。

政府は、国際社会に対して、SDGsの達成に責任を持ち、自治体には、地方創生の推進と連携する新たな方向性提言の義務がある。一方、自治体は、SDGsアクションプランを受け、Society5.0などの新しい価値創出により地域社会の持続可能な開発への取り組みを活性化する実行責任がある。

これまで自治体は、総合計画(1969年の地方自治法改正で義務化)を策定してきており、2015年からは、第1期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の地方版総合戦略の策定が義務付けられ、さらにSDGsについての戦略にも取り組まなければならない。SDGsは政府の目標であって、自治体は取り組む義務はないものの、地域住民はSDGs実施の最大のパートナーである。

これまでの第1期の総合戦略は、国の主導が強く反映した為、各自治体は似通った戦略となり受け身的な要素が強い問題がある。今回のSDGsの視点は、グローバルレベルでの意識が乏しかった自治体にとって、地域社会の特色ある経済・社会・環境の統合的な視点での新しい価値創出の政策提案の可能性があり、未来の地域社会のありたい姿を大きく変え、世界に成功事例を発信できる転機として注目されている。そういった意味で、SDGsの社会的解決の視点を地域全体で共有し、地方創生の地方版総合戦略をコアに、地域の総合的な振興のための総合計画を確実に実行する戦略を融合しなければならない。

(3)企業のESGとSDGs

PRIは、2006年に公表された企業が署名する形で、環境・社会・ガバナンスを考慮した投資活動を約束するものでESG投資とも呼ばれており、日本では2015年に世界最大の投資機関であるGPIF(年金積立金管理運用独立法人)の署名によって加速している。2018年GPIFの上場企業向けのアンケート集計によると、非財務情報の任意開示(CSR報告書、サステナビリティ報告書、統合報告書)は、72.4%の企業が行っており、SDGsのマッピングなども多くみられる。

このように、非財務情報の開示は、ステークホルダーとの関係性だけでなく、将来発生し得る経営リスク回避や新規事業と社会問題との関連等、CSRを促進する重要な要素になっている。図表6に、企業におけるESGとSDGsとの関係を示す。

ESG経営は、良質な資金調達による事業の持続的な成長につながり、戦略的なCSR(CSVの理念)を具体的に示したものであり、社会課題を解決し持続可能な社会をつくるSDGsの目的と最終的には同じともいえる。

ただ、ESG経営は機関投資家等のステークホルダーから信頼を得るためにどうしたらいいかの視点から経営戦略を立案するのに対して、SDGsは解決すべき社会の17のターゲットが予め提示されている点に違いがある。しかし、企業にとっては、SDGsそのものが顧客や需要であり、事業ソルーションとしてビジネスチャンスとしてとらえれば、新規事業開発と社会貢献が両立する要素が多く、SDGsのゴールを追求することはESG投資として評価され、更なる企業価値の向上につながる点で意義がある。

このように、日本のCSR元年から15年が経過し、本来の事業と社会貢献が両立するESGとSDGsの経営戦略の流れは、新しいCSR活動として定着しつつある。

 
(4)自治体と企業のSDGsのマッピング比較

自治体と企業におけるSDGsの17のターゲット取組(マッピング数比較)を図表7に示す。自治体については、SDGs未来都市31の自治体モデル事業提案書(提案様式2)より、企業については、東洋経済2018年度CSR企業ランキング上位30社のサステナビリティレポート等より、自治体や企業ごとにSDGsの該当ターゲットのマッピング数を集計したものである。

平均マッピング率(該当ターゲット数/17ターゲット)は自治体が52%に対して企業が65%と高く、約2ターゲット多く設定されている。企業は、グローバルなバリューチェーンの要請や投資家からSDGsを考慮しなければならない状況であるが、自治体の場合は地域の課題解決が主務であるために「自分ごと」ととらえにくい面もある。

しかし、該当ターゲットの上位5位をみると、8(働きがいも経済成長も)、9(産業と技術革新の基盤をつくろう)、11(住み続けられるまちづくりを)、12(つくる責任つかう責任)が共通して優先順位の上位に挙げられている。そういった意味では、自治体と企業のマテリアリティ(重要事項)が共通しており、SDGsを共通言語として活用することによって、新しいパートナーシップ事業の可能性が期待できる。

(5)住民へのSDGsの展開

生活者のSDGs認識度調査では、「知らない」と答えた人が84%(図表4参照)を占めており、最大のステークホルダーである住民へのSDGsの認知度を上げなければ、地方版総合戦略や総合計画は、先人踏襲の延長のままであり、ブレークスルーは望めない。その為には、将来を担う人材の教育と、現状を担う地域住民の社会課題への参画の啓蒙活動が必要である。

将来を担う人材への教育の充実については、2005年から文部科学省推進のESD(持続可能な教育)により、持続可能な社会づくりの担い手を育む「ユネスコスクール」が、幼稚園・小学校・中学校・高校を合わせて1,116校(2018年時点)で行われている。ESDとは、社会の課題を自らの問題として捉え、それらの課題の解決につながる新たな価値観や行動を生み出し、持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動であり、SDGsと理念が共通している。しかし、これまでのESD教育は、学校現場に十分に浸透しておらず、和歌山県においては、9校(幼稚園1、小学校4、中学校1、高校3)のみである。そこで、「グローバルでわかりやすいターゲットやゴール」が設定されているSDGsをESDの教育に取り組めば、実践と理念が明確になり、将来の地域社会の担い手の育成に役立つはずである。これからの教育は、答えを見つける課題解決思考ではなく、2030年のゴールからバックスキャスティングするような課題発掘型の将来の担い手を育む教育として重要と考えられる。

また、現状を担う運営の担い手である地域住民については、1つの地域課題解決が、グローバルな問題解決にどのように関わっているかを認識することが重要である。「SDGsとは何か?」を理解してもらう段階から一歩進んで、自治体が作成する地方版総合戦略や長期計画と連携し、「これらの戦略はすべてSDGsにつながっている」ということを住民にイメージしてもらう活動が必要である。その為には、SDGsを体感してもらうためのカードゲーム研修や、地域イベントや他の自治体の成功事例を共有する機会を増やす等を行い、地域の課題解決に向けたSDGsに取り組む意識の活性化が大切である。

6.CSRの本質について

(1)CSRからみたSDGsの位置づけ

これまでのCSRからSDGsまでの概念の流れを図表8に示す。縦軸は社会と企業との関係性、横軸は理念と手段の具現化段階を軸として、コンセプトや施策を位置付けている。

企業の社会的責任として始まったCSRは、社会(地球規模)と企業(事業両立)の2つの流れがある。1つは、社会視点のCSRであり、経済に環境や社会への配慮を求めるTBLの概念と、地球環境の有限性を認識したサステナビリティの社会の持続性の流れである。もう一つは、企業視点のCSRで、事業を通して社会のニーズに応えるCSV(共有価値の創造)の概念と、ESG投資などのステークホルダーへの契約の流れである。

これまでの2つのCSRの流れは、社会的な視点と経済的な目的が対立することが多かったが、SDGsによって、社会の課題を共通言語で示し、国の責任と企業への創造性とイノベーションの発揮を手段として、2つのCSRが連携した社会と企業がバランスを取った形となっている。

しかし、SDGsが世界的に関心を集めたため、CSRへの関心が薄らいでいる感もある。「CSRは終わり、これからはSDGsの時代」といた声も聞こえている。これは、本業とは関係の無い寄付やボランティア活動などの社会貢献がCSRであるといった誤解のまま活動し、本来のCSRの本質を理解していないケースに多く見られる。

SDGsの導入は、企業の社会的責任と社会貢献の両面で多様化してきたCSRを、社会課題解決のゴールやターゲットを世界の共通言語にすることによって、価値が共有化され、新しいCSRとして見直すきっかけとなるはずである。地域社会にとっては、様々なステークホルダーである自治体、企業、住民がパートナーシップによる価値観の共有によって、地域課題解決する事業展開が生まれ、地域を活性化につながる形の新しいCSRの時代の幕開けとなるチャンスである。

(2)中小企業におけるCSRの位置づけ

中小企業のSDGsの認知度調査では、「知っている」との回答率(図表4参照)が7.8%で、そのうち4割が「自社に関係ない」と回答をしている。しかし、日本の企業の実態は、中小企業白書によると、企業数で99.7%、従業員数で約70%、付加価値額で約53%であり、企業のSDGsの定着の課題は、中小企業への浸透である。

大企業と中小企業のCSR活動の比較を図表9に示す。

中小企業は、大企業とは異なり地元共存型の為、自治体や住民と連携する多様性に富んだ要望に対応する必要があり、本業とは直接関係の少ない社会振興の為のCSRが重視される場合が多い。そういった意味では、中小企業は大企業と異なったCSRの概念から議論すべきである。

中小企業は、寄付やボランティアといった従来のCSRを継続しながら、地域社会の課題への貢献を通して、新たなビジネスチャンスに着目し、企業イメージの向上を図る必要がある。その為には、自治体や住民との交流にSDGsの共通言語を通じたパートナーシップの構築が、新しいビジネスチャンスとなる。

また、多くの中小企業の企業理念は創業者の起業精神をもとにしていることが多く、SDGsの視点や解釈を補足することにより、企業理念がより明確になり、新しい事業展開や人材育成の強化、従業員満足度向上につながる要素もある。企業経営者が率先してSDGsを取り入れれば、地域に根差したピンポイントの地域課題解決は、中小企業の方がスムーズに進められる点で、社会貢献度や地域活性化の役割は大企業よりも大きいかもしれない。中小企業は、SDGsをきっかけにして、「人の役に立ちたい、地元に貢献したい」といった純粋な起業動機の出発点を見直す絶好の機会である。

7.まとめ

日本のCSRを共創の視点から見ると、図表10に示すように、大企業型、中小企業型、自治体型の3タイプに分けられる。

大企業は、本業と連動したESGを経営戦略に置き、SDGsによるグローバルな社会課題解決からの新規事業を開発する本業型、中小企業は従来のCSR活動を継続しながら地域課題からの新規市場開発を模索するオープン型、自治体は官民連携、地域間連携、海外発信、住民視点等多くのパートナーシップを基盤した連携型と分類できる。

一方、政府、投資家、市民団体は、それぞれのスタンスを明確にし、企業・自治体とSDGsの共通言語によって価値を共有し、パートナーシップ構築による共創に積極的に取り組まなければならない。SDGsが世界の関心を集める中で、これまでのCSRでは認識されていなかったグローバル視点の概念や、主体の役割の重要性が明確になり、CSRの本質に対しての共通認識が構築されつつある。

このように、法的責任(法令順守)として始まったCSRは、社会の要請や企業の取り組みによって、倫理的な責任(公正・公明)、経済的な責任(利益追求)、裁量的責任(文化支援)を経て、共通価値の創造(CSV)として体系化されつつある。その為には、それぞれのトップや経営者は、動き出したSDGsの活用によるコミットメントと体制づくりを進め、大企業、中小企業、自治体が、それぞれの視点とパートナーシップの構築によって、新しいCSRに取り組まなければならない。

8.参考資料

頭字語説明
  • CSR(Cooperate Social Responsibility)
  • SDGs(Sustainable Development Goals)
  • MDGs(Millennium Development Goals)
  • CSV(Creating Shared Value)
  • GRIスタンダード(Global Reporting Initiative)
  • GPIF(Government Pension Investment Fund)
  • PRI(Principles for Responsible Investment)
  • SRI(Socially Responsible Investment)
  • ESG(Environment Social Governance)
  • ESD(Education for Sustainable Development)
参考文献
  • 1)関正雄:SDGs経営(第一法規)
  • 2)國分勝彦他:CSRの基礎(中央経済社)
  • 3)村上周三他:SDGsの実践(事業構想大学院大学)
  • 4)アムンディ・ジャパン:ESG入門(日本経済新聞社)
  • 5)SDGs:日能研

(2019.12)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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