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企業理念(ウェイ)マネジメントについて

研究部長  安井 尚人

1.はじめに

2019年のラグビーW杯は、日本に大きな感動をもたらした。ここで、よく耳にしたのは「JAPAN WAY(ウェイ)」である。これは、2012年に前日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズが提唱したビジョン「2015年はトップ10を目指す」の達成戦略で、日本人の俊敏性や勤勉性を活かしたラグビーを「JAPAN WAY」と名付けた。これは、日本にしかできず、他の国を真似しない戦い方であり、ここからJAPANが変わりだしたと言われている。

最近、企業で見られる「〇〇ウェイ」とは、「経営理念」、「行動原則」等の組織内に存在してきた暗黙知を、明文化した「企業らしさ」の価値観の共有化であり、「人」・「モノ」・「カネ」、そして「情報」・「時間」に加えて6つの目の経営資源(企業理念)として位置付けられる。

15年前、私の海外駐在時に日本の本社で「ウェイ」が策定され、海外関連会社でもウェイ研修が始まった。日本では、暗黙知的に理解していた企業理念や行動原則等の「当たり前」が、海外の従業員にとっては非常に重要なものとしてとらえられ、研修参加者の熱気に驚いた記憶がある。

グローバル化、少子高齢化による人材不足、ガバナンス(企業統治)が重要視される今こそ、企業理念(ウェイ)マネジメントは最重要経営課題であると思われる。

ここでは、企業の理念等の定義、価値観や構築モデル、理念を浸透するための課題、仕組みづくり等について提言を行う。

2.社会構造の変化と企業理念について

企業理念は、経営側のトップダウンのような印象を受けるが、組織行動の羅針盤として位置付けてみると、ボトムアップとの融合としてのマネジメントツールである。ここでは、企業理念と企業業績の関係性について述べる。

1)社会構造の質的変化

図表1に、企業の資本主義の質的変化を示す。

18,9世紀の資本主義は、アダム・スミスの「目に見えざる手」と例えられるように、個人が利益を追求すれば、結果的に社会全体につながる「自由放任主義」が主流であった。(国富論:1776年)。

1980年代に、ミルトン・フリードマンは、ビジネスの社会的責任とはその利潤を増やすことであり、会社は株主のもので、株主の利益を最大化するために経営されるべきである「株主第一主義」を唱えた。(ストックホルダー理論)

しかし、2010年代になり、サステナビリティ(持続可能性)が注目されるにつれて、株主の利益最大化は、企業の長期的な発展を妨げるシステムとして行き過ぎであり、従業員や地域社会等すべてのステークホルダー(利害関係者)に経済的利益をもたらす責任がある「ステークホルダー主義」に変化している。(エドワード・フリーマン)

2)企業理念の重要性

このように資本主義が「ステークホルダー主義」に質的変化しており、永続的な企業として存続するために、「企業らしさ」である企業DNAを決定づける「企業理念マネジメント」が重視されている。次に、企業理念と企業業績の関係についての研究を以下に示す。[*1]

(1)J.P.コッター

リーダーシップ論の大家である経営学者コッターは、「企業文化が高業績を生む」著書で、207社への研究調査により、戦略に合致した企業文化こそが、高い企業業績をもたらすとしている。ここで注目すべき点は、企業文化と企業の業績は正の相関性があるがそれほど強くないことも指摘しており、企業文化の要素として、強力な文化、状況や戦略に合致した文化、環境変化に予測適応する文化の3つを統合条件とするマネジメントの重要性を示している。

(2)ジム・コリンズ

「ドラッカーの後継者」と称される経営学者コリンズは、「ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則」で、超優良企業とそうでない企業との比較分析を行ない、超優良企業には「カルトのような強い文化」と「それを伝承する組織の仕組み」が必要であるとしている。

優良企業の要素として、強いリーダーシップだけでなく、環境の変化に対応する組織の仕組みを伝承する企業文化の重要性を上げている。

このように、企業理念と会社業績の研究においては、企業戦略のリーダーシップと企業文化を伝承する仕組みの重要性を導き出している。

3.企業の理念関連用語について

「経営理念」は経営者自身の想いや信条を表し、「企業理念」は会社が大切にする考え方や価値観・存在意義などを言葉に表したものと定義されるが、両者が混合されている場合が多い。また、企業によっては、社是(しゃぜ)やクレド(信条)等、精神、信念、価値観、行動原則を表明しているものもあり明確な定義は難しい。ここでは、一般的な企業の理念関連用語の定義と事例について述べる。

1) 企業の理念関連用語の定義

図表2に、企業の理念関連用語の定義と位置づけを示す。[*2]

哲学的視点では、企業理念、経営理念、社是があり、企業の根本的な理念である。

企業理念とは、企業のあり方や存在する理由の根本的な考え方や共有すべき価値観であり、創業当時から継承されていることが多い。経営理念は、会社を経営する上で、常に大切にしている考え方であり、経営者が変わる時に理念も変わることがある。また、社是は、会社が是(正しい)とするもので、最も重要とされる方針を短くまとめたもので、創業者の精神や哲学を一言で表し継続する場合が多い。

次に、戦略方針では、ビジョン(理想)とミッション(使命)がある。

ビジョンとは、将来のありたい姿を示したもので、「どこに行くのか」、「社会にどのような貢献をしたいか」といった「将来の目指す姿」を示している。ミッションとは、企業が果たすべき使命であり、「何のために存在するのか」の存在意義を示したものである。ビジョンは方向性を示し、原動力がミッションであり、実現のシナリオが戦略(ステラテジー)、手段が戦術(タクティクス)である。

行動原則には、社訓、クレド針等がある。

社訓は、社員が守るべき教えであり、創業者の戒めとして、「・・・すべし」と表現される場合が多い。一方、クレドとはラテン語で「信条」を意味する言葉で、社員が行動する際の具体的な行動責任であり、簡潔な文章で表現されることが多い。これらは、企業理念や経営理念よりも行動に落とし込みやすく、文章化したカードの配布等により従業員への浸透を意識したものが多い。

また、価値観の総称(企業らしさ)としては、社風やウェイがある。

社風は、企業文化(企業と社員)と、企業風土(社員間)からなる暗黙知で、長年の組織文化の中で、醸成され継承されてきたものである。一方、ウェイは、企業活動の根幹を形成する企業理念と行動原則の価値観であり、経営理念、ミッション、ビジョン、行動指針などで構成され、明文化によって社員の業務判断や遂行の羅針盤となるものである。

2)代表的な企業理念

次に、優良企業の企業理念の事例を示す。

(1)J&J(クレド:わが信条)

ヘルスケアのグローバル企業であるJ&J(ジョンソン・エンド・ジョンソン)には、「我が信条」という紙一枚の文書があるだけである。この文書は、1943年に起草され、顧客、社員、地域社会、株主という4つのステークホルダーに対する責任を具体的に明示したものである。株主第一主義の時代に、「まず顧客、従業員、社会への責任を果たす。その結果、株主への責任は自ずと果たせる」という考え方に特徴があり、社会システムが変化しても、社員自身がベクトルを決めることができる意味で、最も代表的な企業理念と言われている。

(2)ザ・リッツ・カールトン

ホテルやリゾート事業を世界的に展開するザ・リッツ・カールトンは、クレド、理念や使命、共通の価値観を「ゴールドスタンダード」としてまとめている。また、クレド、モットー、サービスの3ステップ、サービスバリュー、第六のダイヤモンド、従業員との約束から構成されている「クレド・カード」は、世界中すべての従業員が携帯し、理念を心に刻み、従業員が率先して実行している。企業理念の浸透する手法として評価される。

(3)トヨタ自動車(トヨタウェイ)

トヨタウェイは、2001年に「暗黙知」として受け継がれてきた信念や価値観を目に見える形で、体系的に理解できるようにしたものである。トヨタウェイは、「知恵と改善」、「人間性尊重」の2つのテーマを柱にし、「それは、トヨタウェイか?」を問う行動原則で、「進化・発展させていく」ものと位置づけられ、社員の間で積極的に議論することを求めている。トヨタウェイは、機能別に「販売のトヨタウェイ」、「経理・財務、技術・・・トヨタウェイ」等があるように、各現場の改善DNA継承の危機感から生まれたものと言われている。

(4)花王(kao way)

花王ウェイは、2004年にグローバル化や会社規模が大きくなることによって、会社の理念を共有することが困難になってきたことへの対応として策定された。花王ウェイは、使命、ビジョン、基本となる価値観、行動原則のピラミッド状の構成で、「私たちは・・・」という哲学的な問いかけの下、各パートに条文が記載されている。マニュアルや規則としてではなく、それぞれの仕事の意義や課題を確認するための羅針盤的な役割を果たすものとなっている。

(5)伊那食品工業(社是)

伊那食品工業は、国内シェア80%を占める寒天を原料とした食材を製造している長野県の企業(1958年創業、2019年売上げ197億円、従業員475名)である。

管理職以上の意識調査(経営者JP:2018年)で、「共感した企業理念」の第1位に選ばれ、トヨタが手本としている企業としても有名である。社是は、「いい会社をつくりましょう〜たくましく、そしてやさしく〜」、経営理念は、「社員の幸せを通して社会に貢献すること」としている。社員の幸せを追及する企業として、性善説経営が管理コストを下げるとしており、あえて低成長を貫く姿勢を徹底している。「社員は家族」という考えを打ち出しており、道徳的経営を社員と共有する意味では、日本的な企業かもしれない。

4.企業理念の位置づけ

企業理念の位置づけについて、企業理念と企業業績や会社業績、浸透度について述べる。

1) 企業理念と企業業績

宮田による優良企業の企業理念と企業業績についての調査結果を図表3に示す。[*3]

これによると、「企業理念有り」の企業は全体で55%で、経営理念を持つ企業の割合が高いほど、売り上げ額や営業利益が多く、企業理念と企業業績は連動するとしている。そして、「利益は技術的要因が生み出し、技術的要因は人間的要因が生み出すとして、人間的要因の中心に企業理念を位置づけた優良企業モデルである収益結晶化理論を提唱している。

2)企業理念と会社規模

企業理念と会社規模について、労務行政研究所の調査結果を図表4に示す。

企業理念が有る会社は全体で90.6%(うち、社外公表85.5%)であり、1000人以上の企業規模では100%であるが、300人未満では87.1%で規模が大きいほど高い。産業別では製造業95.6%に対して、非製造業は85.0%となっている。

また、経営理念、行動規範、ミッション、ビジョンの順で低くなっており、ビジョンについては、300人未満の規模や非製造業で約7割以下である。

人材不足や多様化への対応だけなく、CSRやSDGs等の社会的責任が企業評価として重要視される今日、中小企業や非製造業で、企業理念の存在意義の重要性は増していると思われる。

3)企業理念の浸透度

企業理念の重要性と浸透度について、むすび鰍フ調査結果(2018年)を図表5に示す。

企業理念に対しては、「とても重要である」「どちらかといえば重要である」を合わして77%と企業にとっては重要と捉えられているが、浸透度については、「しっかりと浸透してる」との回答はわずか16%にとどまっている。

また、浸透への取り組みについては、HR総合調査研究所調査(2013年)によると、共有化を推進する仕組みづくり(31%)、企業理念教育(31%)、明文化(29%)となっている。

一方、阻害要因としては、経営層が旗振り役になっていない(54%)、社員の帰属意識の希薄化(38%)、企業理念に基づいた体制・制度になっていない(30%)となっている。

このように、経営理念は策定され、浸透への取り組みは行われているものの、「お飾り」になっている企業が多くみられる。

5.企業理念の構成について

企業理念が重要であるという認識がありながら、社内に浸透していないのが現状である。そこで、企業理念の構成について考察する。

1)企業経営の基盤となる理念

図表6に、褐o営者JPの企業経営の経営基盤になっている理念等の調査結果を示す。

企業理念が57%で最も多く、行動基準、ミッション、ビジョン、経営理念が約半数近くを占めているが、バリューは31%、ウェイ・社訓・社是は10%台である。一概にどれが重要ということはないが、どのように論理的に構成し、時代の変化に対応しているかが重要なポイントである。

2)企業理念の構築モデル

企業理念の目的は、重要な判断軸として組織の行動指針を示し、企業価値を高めることである。逆に、企業理念が「お飾り」になっている企業は、理念と行動指針が論理的でない為に企業内で浸透できていない場合が多い。

図表7に、企業理念の構築モデルを示す。企業理念は階層性を持っており、上位概念から下層概念を論理的構成され、明文化されている。

企業理念の基本要素は、上位から使命(ミッション)、ビジョン、価値観(バリュー)、行動原則から構成されているが、各階層の構成や企業の機能によって、1層型から4層型に分類される。

1層型は経営者主導型(創業者企業)、2層型は現場対応型(サービス業)に多くみられ、従業員が理解しやすいシンプルなものである。

一方、3層型であるトヨタは、価値観を共有する経営理念と一人ひとりの行動指針の二本柱の上に基本理念を位置づけている。また、ソフトバンクは、「情報革命で人々をしあわせに」という企業理念に、2019年にビジョンとバリューを新たに加えた企業理念になっている。技術志向型のグローバル企業は,トヨタのように行動パターンまで一貫して明文化しているか、ソフトバンクのように多様性を認めるかに違いがある。

4層型の花王と味の素は、下部概念に具体的な行動原則をおき、消費者志向の多様な商品開発を積極的に推進する具体的行動の明文化型として位置づけられている。

6.企業理念の深化と課題について

企業理念は、抽象的表現が多く、「本質的な解釈が異なってしまう」、「どう活用したらいいのかわからない」といった難点がある。逆に具体的すぎる場合、発想や行動が制約され、自律的な発想や変化への対応の点で課題がある。最近の企業理念のとらえ方は、経営者の静的な「お飾り」から、動的な「組織の行動」へと変化している。そういった意味では、企業理念の深化と浸透する仕組みの再構築の重要性が増している。

1)経営理念の深化

企業理念には、「顧客第一」、「従業員満足」、「社会貢献」等を掲げている企業が多く、企業らしさの特色がみられない場合が多い。しかし、企業理念は現場で実践することによって、業績の向上と新たな価値の創造を実現する目的で位置づけられなくてはならない。その為には、従業員の「なぜ」に答えられる日々の羅針盤として、言葉の独自性や時代の流れに順応できる柔軟性が必要である。

伊藤忠商事は、28年ぶりに企業理念を「豊かさを担う責任」から、近江商人の経営哲学「三方よし」に改定した。これは、日本のCSRのルーツとされる商売の基本を表したもので、ESG、SDGsを意識した日本的グローバル視点の宣言である。

このように、企業理念は社会システムの変化の中で、見直すことにより、深化させるものである。また、文言自体だけではなく、文脈・背景・意味にストーリー性を持たせ、理解しやすいものにする必要がある。そして、自らの日々の活動を企業理念に照らし、行動を習慣化するものとして位置付けられなくてはならない。

2)企業理念の浸透の壁

企業理念は、基本的に文言であるため、理解や経験によって価値観に差が生まれ、正しく浸透するためには、次の3つの壁がある。 

(1) 暗黙知の壁

企業理念が具体的に明文化されていない場合で、時と場合で、「言うことが違う」と受け取られ、正しい意図が伝わらない壁である。企業理念が創業者の志の「言い伝え」である為、経営者側と受け取る側に価値観のギャップが生まれ、様々な解釈ができる場合である。

(2) 管理者の一元的思考の壁

企業理念への想いが強く、社会変化に対しても一元論的思考で受け取るため、「共感するか、しないか」という二者択一の壁で、組織内で共感が得られず思考が硬直化する場合である。

(3) 経営者のお飾りの壁

経営者の判断基準が曖昧であるため、企業理念が「お飾り」になってしまう場合である。HR総合調査研究所の調査によると、浸透の阻害要因トップは「経営層が旗振りになっていない」が54%を占めており、最大の壁である。

これらの壁を取り除くには、経営者や管理者がどの壁に当てはまっているのかを認識し、自らの行動を通して組織全体に浸透させ、共有することが重要である。その為には、従業員自身に対して、自らの経験を「象徴的な取り組み」として、具体的に伝え率先垂範することである。

「実践の巨人」トヨタの大野耐一は、具体例は変化することはあっても、同じ話を何回も繰り返し、最終的には同じフィロソフィ―やコンセプトとして重要なことを社員に語ったと言われている。このように、企業理念が社内で浸透するためには、多くの壁があるが、経営層の役割が最も重要である。

7.企業理念マネジメントについて

グローバル化や雇用形態の多様化への対応として企業理念マネジメントは重要になってきている。ここでは、新しい経営資源と呼ばれている「ウェイ・マネジメント」と中小企業の企業理念による意識改革の必要性について考察する。

1)「ウェイ・マネジメント」

「ウェイ・マネジメント」は、暗黙知的な企業文化を、ビジョン、ミッション、経営理念、行動指針などを明文化し意識的に根付かせようとする経営マネジメントの新しい取り組みである。言い換えれば、「会社の精神の継承と社員の行動や意識の方向性を示すもの」で、経営理念と行動指針を合わせたものとして定義できる。ウェイは、海外のコンピュータ製造のヒューレット・パッカードのHPウェイ(1980年策定)が有名であり、日本では2000年代になって、トヨタ、花王、日産、コマツ等で策定されている。

最近の企業の不祥事では、ガバナンスの不備が指摘され、頭を下げ、第三者委員会が設置される対応は儀式のようである。ガバナンスは経営層の統治、マネジメントは従業員層の管理であり、適用される領域の違いがあるが、いずれも管理の仕組みであり、個人の行動判断の具体的な基準とはなり難い。

現在の社会は、事業変化のスピード、雇用形態の多様化、グローバル化等がこれまでにないスピードで複雑に絡まりあい、これまでの常識や経験が通用しない時代になってきている。企業は本来あるべき姿を企業理念に照らし合わせ、日々の行動の羅針盤として、自律的に現場で判断することが求められている。

これまでの多くの企業理念は、抽象度が高いため判断基準や行動につながらない問題があった。しかし、「ウェイ・マネジメント」は、会社の理念だけでなく、新しい経営資源として活用すれば、現場が共感し自ら判断する行動原則となり、継承される組織の仕組みとなり、「良い会社」の実現が期待できる。

2)中小企業の経営理念の再構築

東京商工リサーチの調査によると、2018年に倒産した中小企業の「平均寿命」は24年で大企業の60年に比べ約半数である。特に、中小企業は、経営者の意思決定により存続が左右されるだけでなく、後継者・高齢化問題も抱えている。

また、コロナ禍におけるテレワーク化は、潟潟Nルートキャリアの調査(2020年9月)では、テレワーク経験者は、首都圏では約7割で、それ以外の地域の平均は4割以下である。また、就職情報サイト運営の文化放送キャリアパートナーズによると、テレワークを導入しない企業に対する新卒者の印象は、「悪い」「どちらかといえば悪い」との回答が86%となっている。テレワークは、地方の活性化に繋がる見方もあるが、IT化が難しい地方の中小企業にとっては、人材の確保や流出のリスクも大きい。

中小企業白書(2003年)によると、中小企業の経営理念は、顧客の為、会社の発展、社員や家族の為等の利害関係者重視型が7割以上で、社会貢献重視型は半数以下である。一方、社会貢献型企業は従業員増加率にプラスの相関があり、企業には単なる利益追求の動機だけでは限界があるとしている。

中小企業は、地域貢献への責任の重要性が増しており、地域社会との連携に視点を置いた企業理念を再構築し、「会社らしさ」を深化させてゆく必要性が求められている。

8.まとめ

企業理念については、様々なパターンがあるが、重要な点は従業員が意思決定に迷った時の行動指針の羅針盤になっているかである。企業は歴史や従業員構成が異なり、同じ企業文化の組織は存在しない。企業文化は、企業理念の浸透によって価値観が共有化され、企業DNAとして継承される。このような「企業らしさ」の根幹となるのがウェイであり、増殖させるのがウェイ・マネジメントである。そういった意味では、各社のウェイは、社会システムの変化に対応する危機感として生まれてきたのかもしれない。

コンプライアンスやガバナンスは、全社員が最低限守るべき「守りのマネジメント」である。一方、企業理念(ウェイ)マネジメントは、グローバル化や人材の多様化、業務の専門化に対して、組織への帰属意識を高める求心力の強化やエンパワーメント(権限移譲)としての「攻めのマネジメント」であり、持続可能な企業の「強い経営」のための経営資源として、今後ますます重要になると思われる。

9.引用文献

  • [*1] 枝廣:大和総研重点テーマレポート(2014年2月19日)
  • [*2] 坂上:経営理念の考え方・作り方(日本実業出版社)
  • [*3] 宮田:収益結晶化理論(ダイヤモンド社)

(2020.12)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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