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景気動向調査 No.105  特集

「県内事業者の人材確保と今後の取り組み」について

アンケート趣旨

県内では有効求職者数が22年ぶりの低水準となる一方で、有効求人数は高水準で推移しており、事業者による人材確保は難しくなっています。そこで、今回のアンケートでは、県内事業者の人材確保の状況ならびに取り組みについて考察を行います。


調査項目

  1.事業に必要な人員の確保状況
  2.将来的な事業の方向性
  3.人材確保難の状況下で事業規模を拡大(維持)するために実施している取り組み
  4.事業規模拡大(維持)のため実施したいができていない取り組み
  5.事業規模を縮小する要因

調査結果

人材確保難に直面している事業者は27.1%
その中には「事業規模拡大」を図る事業者もあり、多様な取り組み・工夫を展開

○ 事業に必要な人材を確保できていない事業者は27.1%。建設業、サービス業は3割強

○ 将来的な事業の方向性について、「現状維持」とする回答が54.7%で過半数。「事業規模拡大」とする回答は25.9%

○ 「事業規模拡大」の意向を持つ事業者のうち72.7%は必要な人員を確保しているが、27.3%は人材確保難に直面している

○ 人材確保難の状況下で、事業規模拡大を目指す事業者の半数以上は、「将来性のある事業への「選択と集中」」を進めており、「従業員教育の強化」、「無駄な業務削減」にも取り組んでいる

○ 人材確保難の状況下で、事業規模を拡大(維持)するために実施したいが実施できていない取り組みとしては、「将来性のある事業への「選択と集中」」、「設備投資による省力化」、「従業員の処遇改善」との回答が1割弱ながら上位回答となっている

○ 今後、事業規模縮小を予定する事業者にその要因を質問したところ、「業績が厳しい」との回答が39.6%で最多。「経営者の高齢化」は28.3%。「人材が確保できない」とする回答は11.3%

1.事業に必要な人員の確保状況

人材確保難に直面する事業者は27.1%
建設業、サービス業では3割強

事業に必要な人員の確保状況を質問したところ、「十分確保できている」は21.2%、「ある程度確保できている」は51.7%で、二つを合わせると7割強となる。また、「あまり確保できていない」とする回答は23.2%、「全く確保できていない」とする回答は3.9%で、二つを合わせると27.1%となり、3割弱の事業者が人材確保難に直面している。

■図表 事業に必要な人員の確保状況(全産業671社)
事業に必要な人員の確保状況
※アンケートを回収した719社のうち、無回答58社を除く671社が対象。

○人材確保難に直面する者は建設業、サービス業で3割強

「あまり確保できていない」または「全く確保できていない」と回答した事業者を人材確保難に直面している事業者とした時、その割合は、建設業で最も高く(32.9%)、サービス業(32.2%)、製造業(27.8%)、商業(18.3%)が続く。

○飲食業では73.3%の事業者が人材確保難

人材確保難に直面している事業者の割合が高い業種を見ると(下図表)、飲食業が73.3%で最も高く、木材・木工製品製造業(50.0%)、飲食料品小売業(44.4%)等が後に続く。

■図表 人材確保難に直面している事業者の割合(業種別)※降順
人材確保難に直面している事業者の割合

○従業員規模50〜99人では39.0%の事業者が人材確保難に直面している

従業員規模別に人材確保の状況を見ると、50〜99人において「あまり確保できていない」とする回答が39.0%と比較的多くなっている。ただし、概ね全ての従業員規模において、「あまり確保できていない」、「全く確保できていない」とする回答が一定数見られる。

■図表 従業員規模別に見た人員の確保状況(全産業671社)
従業員規模別に見た人員の確保状況
※アンケートを回収した719社のうち、無回答58社を除く671社が対象。

2.将来的な事業の方向性

「現状維持」とする回答が54.7%と過半数
「事業規模拡大」とする回答は25.9%

人材確保難の状況が将来の事業計画に与える影響を考察するため、将来的な事業の方向性について質問したところ、「現状維持」と回答した事業者が54.7%と過半数を占め、「事業規模拡大」との回答は25.9%、「事業規模縮小」が9.9%、「わからない」が9.4%となった。

■図表 将来的な事業の方向性(全産業636社)
将来的な事業の方向性
※アンケートを回収した719社のうち、無回答83社を除く636社が対象。

○「事業規模拡大」は製造業で、「事業規模縮小」は商業で比較的多い回答となっている

産業別に回答状況を見ると、建設業では「現状維持」とする回答が69.2%と他産業に比べて多くなっている。製造業については、「事業規模拡大」とする回答が3割と他産業に比べて多く、商業については、「事業規模縮小」とする回答が14.3%と比較的多くなっている。

○「事業規模拡大」は機械・機械部品製造業で43.8%と最も高い回答割合

全26業種について、「事業規模拡大」との回答割合が高い上位5業種と、「事業規模縮小」とする回答割合が高い上位5業種を見たのが、下の図表である。「事業規模拡大」は機械・機械部品製造業で43.8%と最も高く、「事業規模縮小」は飲食料品小売業が44.4%で最も高い。

(参考図表)「事業規模拡大」ならびに「事業規模縮小」とする回答割合(各上位5業種)
「事業規模拡大」ならびに「事業規模縮小」とする回答割合

(参考) 事業規模拡大の意向を持つ事業者の人材確保状況

「事業規模拡大」の意向を持つ事業者のうち72.7%は
必要な人員を確保しているが、27.3%は人材確保難に直面している

ここでは質問2「将来的な事業の方向性」において、「事業規模拡大」と回答した事業者の人材確保状況を確認する(下図表)。

下図表によると、「事業規模拡大」、「現状維持」、「事業規模縮小」のいずれにおいても、3割弱もの事業者が人材確保難に直面している。「事業規模拡大」を目指す事業者にとっても、その規模拡大を担う人材の確保が重要となる中で、27.3%の事業者が、現時点で人材確保難の状況にあり、どのようにして規模拡大を図るのかが、重要な課題になっていると考えられる。

そこで、以下では、人口減少による人材確保難が今後予想される中で、事業規模を拡大または維持させるために、各事業者はどのような取り組みを実施しているかについて考察を行う。

■参考図表 将来的な事業の方向性と人員の確保状況
将来的な事業の方向性と人員の確保状況

※質問1における選択肢「十分確保できている」と「ある程度確保できている」のいずれかを選択した事業者は「人材は確保できている」とし、質問1における選択肢「あまり確保できていない」と「全く確保できていない」のいずれかを選択した事業者は「人材確保難に直面」としている。

3.人材確保難の状況下で事業規模を拡大(維持)するために既に実施している取り組み

「事業規模拡大」の事業者の約半数は「事業の選択と集中」を実施
「従業員教育の強化」、「無駄な業務削減」との回答も多い

今後、人口減少などにより人材確保難が予想される中で、事業規模を拡大または維持させるため、既に実施している取り組みにはどのようなものがあるのかを質問し、以下の図表のような回答結果を得た。なお、下図表は、質問2「将来的な事業の方向性」において「事業規模拡大」を選んだ事業者と「現状維持」を選んだ事業者ごとに回答を集計している。

○「事業規模拡大」を目指す事業者の約半数は「将来性のある事業への「選択と集中」」を選択

「事業規模拡大」を目指す事業者と「現状維持」の事業者を比較すると、前者は「将来性のある事業者への「選択と集中」」が51.5%で最も多く、「従業員教育の強化」(47.2%)、「無駄な業務削減」(44.2%)とする回答が続く。「現状維持」の事業者は「無駄な業務削減」とする回答が39.4%で最も多く、「顧客・販路の見直しによる効率化」(33.3%)、「事業内容の見直しによる省力化」(33.3%)が続く。

その他の回答としては、「派遣社員、パート・アルバイトの活用」を選ぶ事業者が、「事業規模拡大」、「現状維持」ともに3割程度見られた。

■図表 人材確保難の状況下で事業規模を拡大(維持)するための取り組み(全産業508社)
人材確保難の状況下で事業規模を拡大(維持)するための取り組み

※質問2で「事業規模拡大」または「現状維持」を選んだ513社のうち、無回答5社を除く508社が対象。図表内の各項目の順番は、「事業規模拡大」を目指す事業者の回答割合の降順とした。

4.事業規模拡大(維持)のため実施したいができていない取り組み

「事業の選択と集中」、「設備投資による省力化」
「従業員の処遇改善」との回答が1割弱ながら上位回答

人材確保難の状況下で、事業規模拡大または維持するために、実施したいができていない取り組みを質問したところ、下の図表のような結果となった。

○「事業規模拡大」を目指す事業者では「設備投資による省力化」、「事業の選択と集中」との回答が多い

「事業規模拡大」を目指す事業者では、「設備投資による省力化」、「将来性のある事業への「選択と集中」、「顧客・販路の見直しによる効率化」といった回答が1割弱で最も多くなっている。「現状維持」の事業者については、「設備投資による省力化」、「従業員の処遇改善」とする回答がともに8.3%で最多となった。

また、「その他」については、別途、具体的な内容を質問したところ、「有能な人材の確保」、「人の手配」、「適切な人材とその配置」など、従業員教育や人材の配置転換に類似する回答が多く見られた。

■図表 事業規模拡大(維持)のため実施したいができていない取り組み(全産業400社)
事業規模拡大(維持)のため実施したいができていない取り組み

※質問2で「事業規模拡大」または「現状維持を選んだ513社のうち、無回答113社を除く400社が対象。図表内の順番は、「事業規模拡大」を目指す事業者の回答割合の降順とした。

5.事業規模を縮小する要因

「業績が厳しい」が39.6%で最多。「経営者の高齢化」は28.3%
「人材が確保できない」とする回答は11.3%

質問2「将来的な事業の方向性」において「事業規模縮小」を選択した事業者に対して、その最も大きな要因を質問したところ、下図表のような結果となった。

「業績が厳しい(今後厳しくなる)」が39.6%で最多。その後には「経営者の高齢化(体力の低下等)」(28.3%)、「採算が合わない」(15.1%)が続き、「人材が確保できない」とする回答は11.3%。

○製造業では「業績が厳しい」が半数。商業は「業績が厳しい」、「経営者の高齢化」が4割ずつ

産業別に見ると、製造業では「業績が厳しい」とする回答が半数を占め、商業では「業績が厳しい」、「経営者の高齢化」とする回答がそれぞれ約4割と多くなっている。サービス業についても、「業績が厳しい」とする回答が最多だが、「採算が合わない」とする回答も比較的多い。

「人材が確保できない」とする回答については、建設業では約3割と多いが、その他の産業では1割程度にとどまった。

■図表 事業規模縮小の最も大きな要因(全産業53社)
事業規模縮小の最も大きな要因
※質問2で「事業規模縮小」を選んだ63社のうち、無回答10社を除く53社が対象。

(参考)行政等の支援機関に対して期待する支援策(自由回答)

行政等の支援機関に対して期待するものとしては
「補助金等の資金支援」、「地域活性化」が多い

行政等の支援機関に対して期待する支援策を質問したところ、「補助金制度の拡充」、「補助金制度に関する情報提供」、「補助金制度における申請の簡素化」、「設備投資に対する補助拡充」、「減税」等の資金支援に関する回答が多く見られた。また、県内における人口減少を受けて、「若い人の田舎暮らし応援」、「魅力ある街づくり」、「人口減少対策」、「観光振興」など地域活性化を期待する意見も多い。

○人材確保・育成に対する支援策への期待も大きい

人材確保が難しくなる中で、「人材確保・若手確保」や「Uターンフェアの強化」、「都市部での県内企業PR」などを期待する事業者が多く見られた。また、「人材育成セミナー等の拡充」、「職人育成支援」、「社員の資格取得支援」など人材育成に関する支援への期待も大きい。

○販路開拓に対する支援策への期待も一定数見られる

県内の人口減少により、市場が縮小する中で、販路開拓が重要であり、「ビジネスマッチング支援」、「展示会出展支援」、「販売促進のための助言、助成金の拡充」といった回答も複数見られる。中には、「海外事業展開に対するサポート」、「海外事業展開のための人材確保支援」といった回答も見られた。

その他の回答では、「県産品・市産品の活用奨励」、「公共工事の発注量の平準化」、「IT(IoT)に関する設備投資への支援」などが見られた。

おわりに

○2016年の県内景況BSIは一時大きく下降したが、最終的には前年同期の水準に戻る

ここ最近の県内経済情勢を振り返ると、2014年4月の消費増税以降、紀の国わかやま国体が開催された2015年秋口までは、緩やかながらも県内景況BSIは改善傾向が見られた。ところが、2016年に入ると、国体特需が剥落、国内外で生じた不測要因(年初の上海株の暴落とその後の円高進行、4月の熊本地震、6月の英国のEU離脱問題等)も重なり、4〜6月期の県内景況BSIは2013年以降の最低値を更新した。業績状況を示す売上高BSI、収益BSIも極めて低い水準になり、事業者の景況感だけでなく、業績にも悪化傾向が見られた。その後は、7〜9月期に入り、国内外の経済情勢に落ち着きがみられたこともあり、県内景況BSIは上昇する。さらに、生産活動の持ち直し、輸出の持ち直し、11月の米国大統領選挙後の急激な円安株高は、国内企業の景況感を引き上げ、内閣府は12月の「月例経済報告」において、1年9カ月ぶりに国内景気の基調判断を上方修正した。そして、県内景況BSIについては、個人消費に関連する業種(小売業、旅館・ホテル業、飲食業等)では依然として低い水準にとどまるが、建設業、卸売業、不動産業、運輸業などで景況BSIが上昇したことで、全体では前年同期(2013年10〜12月期)の水準を回復した。

○2016年における県内経済情勢の前年からの変化

前述のように、景況BSIの水準は前年同期とほぼ同じとなったが、その内容を見ると、大きな変化が見られる。まず、第一点目は、全体の景況BSIが持ち直す中で、小売業を初めとした個人向け業種の景況BSIが低迷したままであること。特に、紀北、紀中、紀南地域で、その傾向が強いが、和歌山市では小売業の景況BSIは持ち直している。業種別、地域別での景況感の違いが鮮明になっている。第二点目は、仕入価格の上昇懸念が大きく緩和していること。2015年前半までは半数近くの事業者が仕入価格は「上昇」しているとしていたが、2016年10〜12月期の回答割合は3割弱まで下降した。第三点目は、業況が持ち直す業種での「人手不足感」の強まりである。特に、建設業、製造業、サービス業の一部で強まっている。

○2017年の見通しは依然として不透明感が漂う

2017年の県内経済情勢はどのように推移するか。2016年以上に海外の経済情勢が大きな変動要因になると考えられる。米国をはじめ、欧米諸国の政治状況、中国経済などについては、先行き不透明感が強く、実態経済への影響(円の対ドル為替変動、輸出動向等)については、注意を要する。ただし、どのような状況においても、県内事業者が取り組む課題は変わらない。12頁の「県内事業者の声」に見られるとおり、取り巻く情勢が厳しい中で、どのように「新製品開発」、「販路開拓」、「高付加価値化」を実施していくか、実施の際に生じる「資金不足」、「ノウハウ不足」、「人手不足」をどのように克服するかが最重要課題である。「県内事業者の声」の中には、積極的に課題に取り組み、創意工夫を重ねる事業者、課題にどのように対処するか検討する事業者の声も聞かれた。

当研究所としては、このような状況を踏まえながら、引き続き、調査・研究を通じた県内経済の現状分析、課題提起などの情報発信に努めて参りたい。

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