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景気動向調査 No.107  特集

「直近決算期の業績」、「長時間労働の是正」、
「同一労働同一賃金」について

アンケート趣旨

政府は、3月に「働き方改革実行計画」を策定した。計画では、日本経済を再生するためには、生産性の向上、労働参加率の向上を図る必要があり、そのためには、「同一労働同一賃金」、「長時間労働の是正」、「女性・若者の人材育成」、「子育て・介護等と仕事の両立、障害者の就労」、「高齢者の就業促進」等の実現が重要であるとしている。

今回の調査では、中小事業者への影響が大きいと考えられる「長時間労働の是正」、「同一労働同一賃金」について調査を行った。

加えて、県内事業者の収益状況を把握するため、「直近決算期の業績」について調査を行った。


調査項目

【「直近決算期の業績」について】
  1.直近決算期における営業利益の増減
  2.直近決算期において「増益」となった理由
  3.直近決算期において「減益」となった理由

【「長時間労働の是正」について】
  4.長時間労働を行う従業員について
  5.時間外労働の上限規制導入の影響、対応
  6.時間外労働の上限規制導入の効果

【「同一労働同一賃金」について】
  7.同一労働同一賃金に対する意見
  8.同一労働同一賃金導入の課題
  9.同一労働同一賃金の効果・影響

調査結果

【「直近決算期の業績」について】
直近決算期において「増益」が3割、「減益」が4割

○ 「増益」理由について、昨年調査と比較すると、「新規事業の売上増」との回答が増加

○ 「減益」理由について、昨年調査と比較すると、「販売価格の低下」との回答が微増

【「長時間労働の是正」について】
検討されている改正労働基準法の上限規制を超えて時間外労働を行う従業員は、
一部の事業者に見られ、「業務分担見直し」、「パート社員増員」で対応との回答が多い

○ 罰則付き上限規制導入の効果については、従業員の「作業効率向上」、「心身健全化」への期待も見られる一方、「特になし」も3割ほど見られた

【「同一労働同一賃金」について】
同一労働同一賃金について、「どのような場合に「同一労働」とするのか判断が困難」
とする回答が大半で、導入に向けての課題は多い

○ 導入による効果・影響については、「総人件費の増加」を懸念する回答が4割を占めるが、「従業員のやる気向上」を期待する回答も3割を占めた

1.直近決算期における営業利益の増減(対前期比)

直近決算期における営業利益について
「増益」が3割、「減益」が4割で、昨年調査と同様に「減益」が多い

直近決算期における営業利益について、前期決算と比較した際の増減を質問したところ、「増益」事業者は28.7%で、「減益」事業者が38.2%となり、「減益」が上回った。昨年同時期に実施した調査(図中「平成27年度」と表記)と比較すると、「増益」、「減益」ともに回答割合が下降。「横ばい」との回答割合が上昇している。

○サービス業では「増益」が「減益」を上回った

産業別では、サービス業において、「増益」が「減益」を上回った。生活関連サービス業(葬祭業、リネン業等)、医療・福祉、教養・娯楽サービス業で「増益」との回答が多く見られた。

○昨年調査に比べて商業で「増益」との回答が減り、「減益」との回答が増える

昨年調査と比べると、商業では「増益」との回答が減り、「減益」との回答が増えた。建設業では、「増益」、「減益」ともに回答が増えた。製造業は、「増益」、「減益」ともに回答が減った。

■図表 直近決算期における営業利益の増減[対前期比](全産業693社)
※アンケートを回収した722社のうち、無回答29社を除く693社が対象。
「平成27年度」については、昨年同時期に実施した調査結果を示している。
集計対象はアンケート回収881社のうち、無回答38社を除く843社。

直近決算期における営業利益の増減[対前期比](全産業693社)

2.直近決算期において「増益」となった理由

「増益」理由について、昨年調査と比較すると
「新規事業の売上増」との回答が9ポイント増加

直近決算期における営業利益について、「増益」と回答した事業者にその理由を質問したところ、「既存事業の売上増」が6割強で最多。昨年同時期に実施した調査(図中「平成27年度」と表記)と比較すると、「既存事業の売上増」、「原材料・商品等の調達コスト削減」、「生産工程・作業工程の効率化」等の割合が低下する一方で、「新規事業の売上増」の割合は上昇した(特に建設業、製造業)。製造業については、「既存事業の売上増」、「人件費抑制」との回答が減少する中、「生産工程・作業工程の効率化」、「新規事業の売上増」との回答が増加した。

■図表 直近決算期において「増益」となった理由(全産業194社)【最大3つまで選択可】
※「1.直近決算期における営業利益の増減(対前期比)」で「1割以上の増益」
または「1割未満の増益」と回答した199社のうち、無回答5社を除く194社が対象。
「平成27年度」については、昨年同時期に実施した調査結果を示している。
集計対象は257社。


【全産業】
直近決算期において「増益」となった理由(全産業194社)【最大3つまで選択可】
【産業別】
直近決算期において「増益」となった理由(全産業194社)【最大3つまで選択可】

3.直近決算期において「減益」となった理由

「減益」理由について昨年調査と比較すると
「販売価格・受注価格の低下」との回答が微増

直近決算期における営業利益について、「減益」と回答した事業者にその理由を質問したところ、「販売数・受注量の減少」が7割弱で最多となった。昨年同時期に実施した調査(図中「平成27年度」と表記)と比較すると、「販売価格・受注価格の低下」との割合がやや増加しており、特に建設業、商業での増加が目立った。

■図表 直近決算期において「減益」となった理由(全産業251社)
※「1.直近決算期における営業利益の増減(対前期比)」で「1割以上の減益」
または「1割未満の減益」と回答した265社のうち、無回答14社を除く251社が対象。
「平成27年度」については、昨年同時期に実施した調査結果を示している。集計対象は336社。


【全産業】
直近決算期において「減益」となった理由(全産業251社)
【産業別】
直近決算期において「減益」となった理由(全産業251社)

4.長時間労働を行う従業員について

検討されている改正労働基準法の上限規制を超えて
時間外労働を行う従業員は「いない」とする回答が約9割

政府が3月に策定した「働き方改革実行計画」によると、従業員の健康確保、ワーク・ライフ・バランスの改善、育児・介護と仕事の両立を実現するため、時間外労働の上限規制(原則年360時間、労使協定があれば単月で100時間、年間で720時間)に罰則を設け、長時間労働の是正を図るとしている。

県内事業者において、「単月で100時間、年間で720時間」を超える時間外労働を行う従業員がいるかどうかを質問したところ、87.0%が「いない」と回答する一方で、「あまりいない」が10.6%、「いる」が1.6%となった。

○「いない」との回答が約9割

「いない」との回答は、全体の87.0%を占めた。建設業、製造業、商業で9割前後、サービス業では8割強を占めている。業種別では、「食料品製造業」(100.0%)、「医療・福祉」(97.0%)、「建築材料卸売業」(95.7%)、「木材・木工製品製造業」(94.1%)で特に多く見られた。

○「あまりいない」との回答はサービス業で15.1%

「あまりいない」との回答は、サービス業で15.1%と比較的多くなっている。業種別では、「運輸業」、「飲食業」で3割を超えた。

■図表 長時間労働を行う従業員について
※アンケートを回収した722社のうち、無回答45社を除く677社を集計対象としている。
長時間労働を行う従業員について

5.時間外労働の上限規制導入の影響、対応

「業務分担の見直し」との回答が5割で
「派遣社員・パート社員の増員」、「正社員の増員」が後に続く

時間外労働の上限規制(原則年360時間、労使協定があれば単月で100時間、年間で720時間)に罰則が設けられた場合の影響や対応について、質問したところ、「業務分担の見直し」との回答が52.4%で最も多く、「派遣社員・パート社員の増員」、「正社員の増員」が続いた。また、「売上高の減少」は避けられないとする回答も26.8%あり、一部ながら事業活動への影響が懸念される。

○「業務分担の見直し」との回答は建設業、製造業に多い

産業別では、「業務分担の見直し」とする回答が、建設業、製造業で6割強と多く、サービス業は4割強となっている。

○「派遣社員・パート社員の増員」、「正社員の増員」との回答はサービス業に多い

「派遣社員・パート社員の増員」、「正社員の増員」など、雇用者数を増やすことで対応しようとする事業者は、サービス業に多い。建設業については、「一部業務の外注」との回答が66.7%と多い。

○「売上高の減少」が避けられないとする回答は建設業、サービス業に多い

「売上高の減少」が避けられないとする回答は、建設業、サービス業で3割強見られた。

■図表 時間外労働の上限規制導入の影響、対応(全産業82社)【複数回答可】
※「4.長時間労働を行う従業員について」で「いる」または「あまりいない」と
回答した83社のうち、無回答1社を除く82社が対象。

時間外労働の上限規制導入の影響、対応(全産業82社)【複数回答可】

6.時間外労働の上限規制導入の効果

従業員の「作業効率向上」、「心身健全化」への期待も多いが
「特になし」とする回答も3割ほど見られた

時間外労働の上限規制(原則年360時間、労使協定があれば単月で100時間、年間で720時間)に罰則が設けられた場合の効果について質問したところ、「従業員の作業効率向上」、「従業員の心身健全化」とする回答が多く見られる一方で、「特になし」とする回答がサービス業を中心に3割ほど見られた。

○「従業員の作業効率向上」との回答は建設業、製造業に多い

産業別では、「従業員の作業効率向上」との回答が建設業、製造業で過半数を占めた。その一方で、商業では回答割合が2割弱と少ない。「従業員の心身健全化」についても、建設業では回答割合が6割強となる一方で、製造業、サービス業では4割弱、商業では1割弱となっている。

○「特になし」とする回答は商業、サービス業で3割強

「特になし」とする回答は、商業、サービス業で3割強、製造業が2割強となっている。業種別では、「飲食業」(75.0%)、「不動産業」(66.7%)、「旅館・ホテル業」(50.0%)で特に多くなっている。

■図表 時間外労働の上限規制導入の効果(全産業76社)【複数回答可】
※「4.長時間労働を行う従業員について」で「いる」または「あまりいない」と
回答した83社のうち、無回答7社を除く76社が対象。

時間外労働の上限規制導入の効果(全産業76社)【複数回答可】

7.同一労働同一賃金に対する意見

「導入に向けて課題が多い」、「わからない」との回答が約5割

「働き方改革実行計画」では、ほぼ同一の内容の職務を行う正規雇用者・非正規雇用者の間では、(給与、教育訓練、福利厚生において)不合理な待遇差が出ないようにすることを求めている。この「同一労働同一賃金」に対して、県内事業者の意見を聞いたところ、「導入に向けて課題多い」との回答が3割を占める一方で、「対象者なし」との回答が38.0%で最多となった。「導入済み」は6.9%、「容易に導入可能」との回答は5.5%となっている。

○製造業では「導入に向けて課題が多い」との回答が4割強

「導入に向けて課題が多い」との回答が製造業では4割強とやや多い。業種別では、特に「鉄鋼・金属製品製造業」で多く、56.5%を占めた。

○「わからない」とする回答は、商業、製造業でやや多い

同一労働同一賃金導入について、「わからない」(判断できない)とする回答は、商業で20.2%、製造業で18.3%見られた。

○「対象者なし」とする回答は、商業、建設業で多い

非正規雇用者を雇用していない、または、正規雇用者と非正規雇用者とでは職務内容に明確な違いが見られるため、同一労働同一賃金の「対象者なし」とする回答は、商業、建設業で多い。

■図表 同一労働同一賃金に対する意見(全産業671社)
※アンケートを回収した722社のうち、無回答51社を除く671社を集計対象としている。
同一労働同一賃金に対する意見(全産業671社)

8.同一労働同一賃金導入の課題

「どのような場合に「同一労働」とするのか判断が困難」
とする回答が7割を占める

「7.同一労働同一賃金に対する意見」で「導入に向けて課題多い」と回答した事業者に対して、導入の具体的な課題について質問したところ、「どのような場合に「同一労働」とするのか判断が難しい」との回答が7割を占めた。また、「どのような場合であれば「同一労働同一賃金」でなくても良いのか、判断が難しい」との回答も48.8%と約半数を占めており、「人件費増加への対応」との回答も25.6%見られた。

○「どのような場合に「同一労働」とするのか判断が難しい」との回答は商業で多い

「どのような場合に「同一労働」とするのか判断が難しい」とする回答は、商業で8割強と特に多くなっている[*1]。また、「どのような場合であれば、「同一労働同一賃金」でなくても良いのか、判断が難しい」とする回答はいずれの産業でも半数近くを占めた。

○「人件費増加への対応」では、商業で回答が多い

同一労働同一賃金導入に際して、「人件費増加への対応」が課題とする事業者は、商業(30.4%)でやや多くなっている。

■図表 同一労働同一賃金導入の課題(全産業215社)【複数回答可】
※「7.同一労働同一賃金に対する意見」で「導入に向けて課題多い」と
回答した217社のうち、無回答2社を除く215社が対象。

同一労働同一賃金導入の課題(全産業215社)【複数回答可】

9.同一労働同一賃金の効果・影響

「総人件費の増加」を懸念する回答が4割強を占める一方で
「従業員のやる気向上」を期待する回答も3割ほど見られた

「7.同一労働同一賃金に対する意見」で「導入に向けて課題多い」、「容易に導入可能」、「導入済み」と回答した事業者に対して、導入の効果を質問したところ、「総人件費の増加」を懸念する回答が44.8%で最多となった。その一方で、「従業員のやる気向上」、「人材の定着率向上」を期待する回答も少なからず見られた。

○「総人件費の増加」との回答はサービス業で約半数を占める

産業別に見ると、「総人件費の増加」との回答は、サービス業で約半数(49.0%)を占めた。業種別では、「不動産業」(80.0%)、「教養・娯楽サービス業」(60.0%)、「旅館・ホテル業」(53.8%)、「医療・福祉」(50.0%)で回答が多く見られた。 「人事考課の複雑化」を懸念する回答も22.6%あり、製造業で3割強を占めている。

○「従業員のやる気向上」、「人材の定着率向上」を期待する回答は商業で多い

「従業員のやる気向上」、「人材の定着率向上」といった効果を期待する回答は、商業でやや多く見られた。「人材の定着率向上」については、サービス業でもやや多く見られた。

■図表 同一労働同一賃金導入の効果・影響(全産業248社)【複数回答可】
※「7.同一労働同一賃金に対する意見」で「導入に向けて課題多い」、「容易に導入可能」、「導入済み」と
回答した300社のうち、無回答52社を除く248社が対象。

同一労働同一賃金導入の効果・影響(全産業248社)【複数回答可】

おわりに

○県内景況BSIは再び緩やかな持ち直しに向かう

平成29年に入り、持ち直しの動きに一服感が見られた県内景気だが、4〜6月期は小幅ながら景況BSIが改善した。季節的な要因もあり、建設業、卸売業で景況BSIが下降する一方、サービス業を筆頭に、製造業、小売業で景況BSIが改善した。製造業は堅調な推移を見せ、小売業では売上高・収益等の業績状況に依然厳しさを残すが、景況感を「悪い」とする事業者は減少傾向にある。サービス業は、業種によって業況に差が見られていたが、4〜6月期は運輸業、旅館・ホテル業、医療・福祉、飲食業など幅広い業種で業況が改善した。

心配された仕入価格の上昇についても、製造業、卸売業で懸念がやや強まったが、原油価格の高騰、急激な円安進行が重なった2013年に比べると落ち着きが見られる。また、人手不足感については、サービス業で強まっているが、その他の産業では幾分弱まった。

7〜9月期(見通し)についても、卸売業・小売業の景況BSIは弱含むが、その他の産業では景況BSIが改善する。国内経済情勢については、人手不足等の懸念材料はあるものの、世界景気の復調を背景に、持ち直しの動きを見せており、県内景気についても、緩やかな持ち直しが予想される。

○県内景気が持ち直しに向かう中、より多くの事業者の業績改善に期待

今回の特集アンケートでは、直近決算期(平成28年度)の営業利益について、調査を実施した。昨年調査に引き続き、前期比「増益」の事業者は3割、「減益」は4割との結果となった。「増益」事業者にその理由を質問したところ、製造業において、「生産工程・作業工程の効率化」により「増益」に至ったとする事業者が増えている。このように、厳しい状況が続く中でも、県内事業者の中には、自社努力が実を結び、収益性を改善させた事業者が増加している。今後、県内景気が緩やかに持ち直す中で、売上増・収益性向上により業績改善に至る事業者がさらに増加することが期待される。

○人材確保のためにも、従業員にとって働きやすい職場環境づくりを

政府が3月に策定した「働き方改革実行計画」は、日本経済再生のために、生産性の向上、労働参加率の向上を目指す。計画の中でも、重要なテーマである「長時間労働の是正」、「同一労働同一賃金」について、今回の特集アンケートで調査を行ったところ、「長時間労働の是正」によって、従業員の作業効率が向上したり、心身の健全化が図られるとの回答が見られた。また、「同一労働同一賃金」については、制度導入に向けた課題は多いとしながらも、「従業員のやる気向上」、「人材の定着率向上」といった効果を期待する事業者も少なくない。

和歌山県内では人手不足感が徐々に強まっており、事業継続に向けた人材の確保はますます難しくなっている。そのような状況の中で、県内事業者は自社の「働き方改革」に進んで取り組み、従業員にとって働きやすく、働き甲斐のある職場づくりを行うことが重要となる。当研究所としては、このような事業者が1社でも多くなるよう、引き続き、調査・研究を通じた課題提起、解決策提案に努めて参りたい。

注釈

  • [*1]
    首相の諮問機関である働き方改革実現会議は、「同一労働同一賃金ガイドライン案」を公表し、どのような場合に不公平な待遇差があると判断するのか、その基準を例示している。

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