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景気動向調査 No.129  特集

調査項目

【「コスト高騰の影響ならびに価格転嫁の状況」について】
  1.コスト高騰に伴う主要事業への影響
  2.販売価格への転嫁状況

【「新型コロナ関連融資」について】
  3.新型コロナ関連融資の利用状況
  4.新型コロナ関連融資の返済状況
  5.新型コロナ関連融資の返済開始時期
  6.新型コロナ関連融資の返済見通し

【「人手の過不足感、従業員の募集状況」について】
  7.人手の過不足感
  8.従業員の募集状況
  9.募集を行っている雇用形態
  10.募集を行っている職種
  11.募集を行っている最大の要因

調査結果

【「コスト高騰の影響ならびに価格転嫁の状況」について】
コスト高騰による主要事業への影響として「すでに限界」は9.2%
「厳しいが事業継続可能」が60.0%

○ 「希望の3割以上は転嫁できている」との事業者は37.8%で、6月調査からは8.4ポイント増だが、9月調査からは4.6ポイント減

【「新型コロナ関連融資」について】
新型コロナ関連融資を「現在借りている」は52.4%
このうち22.7%が「返済に不安がある」と回答

○ 「今後返済開始」は、「現在借りている」と回答した事業者うち35.1%

○ 「今後返済開始」の事業者のうち最多の36.5%が、「2023年6月までに」返済開始と回答

【「人手の過不足感、従業員の募集状況」について】
人手不足感を感じる事業者は43.6%となり、コロナ禍前に比べて増加

○ 従業員を募集している事業者は47.9%。過去調査に比べて、特に建設業で増加

○ 従業員の募集を行っている事業者のうち91.6%が、正規雇用者を募集

○ 募集している職種としては、「営業職」が最多。「加工・組み立て」が次に多い

○ 従業員を募集する最大の理由としては、「離職者の補充」が最多。「将来的な退職者増加への準備」が次に多い

1.コスト高騰に伴う主要事業への影響 【単一回答】

コスト高騰の影響として「すでに限界」は9.2%
「厳しいが事業継続可能」が60.0%
○「すでに限界」は飲食業で4割弱、飲食料品小売業・運輸業で約2割を占める

原材料費や燃料費等の事業コストが大きく増加する中で、主要事業への影響を質問したところ、「すでに限界」との回答は9.2%だった。

業種別では、「すでに限界」とする回答が飲食業(37.5%)で最も多く、飲食料品小売業(21.4%)、運輸業(20.0%)、旅館・ホテル業(17.9%)、生活・文化用品小売業(16.7%)等が後に続く。

■図表1 コスト高騰に伴う主要事業への影響
コスト高騰に伴う主要事業への影響

■(参考)コスト高騰に伴う主要事業への影響 【全国調査との比較】
コスト高騰に伴う主要事業への影響 【全国調査との比較】
※(資料)全国調査は帝国データバンク「コスト高騰による企業への影響アンケート」(2022年11月実施)を参照。

2.販売価格への転嫁状況 【単一回答】

「希望の3割以上は転嫁できている」との事業者は37.8%
6月調査からは8.4ポイント増だが、9月調査からは4.6ポイント減

コストが高騰する中で、販売価格への転嫁状況を質問したところ、希望の3割以上を転嫁できているとする事業者は37.8%だった。6月調査からは8.4ポイント増加するも、9月調査からは4.6ポイント減少となった。物価高騰が続く中で、県内事業者における価格転嫁の動きは鈍い。

■図表2 販売価格への転嫁状況
販売価格への転嫁状況

■(参考)販売価格への転嫁状況【過去調査との比較】
販売価格への転嫁状況【過去調査との比較】

3.新型コロナ関連融資の利用状況 【単一回答】

「現在借りている」が52.4%
製造業、商業では約6割を占める

コロナ禍における企業の資金繰り支援策として設けられた新型コロナ関連融資は、政府系金融機関及び民間金融機関による金利や返済条件が優遇された融資制度で、多くの企業が利用した。県内事業者に対して、その利用状況を質問したところ、52.4%が「現在借りている」と回答した。産業別では、製造業、商業で、「現在借りている」との回答が約6割を占めている。

(※)帝国データバンクが2022年8月に実施した調査(回答は全国11,935社)では、中小企業の54.1%が「現在借りている」と回答している。業種別(全規模)では、家具類小売(77.8%)、旅館・ホテル(75.9%)、飲食店(74.2%)、繊維・繊維製品・服飾品小売(73.7%)などで「現在借りている」との回答が多い。

○「現在借りている」は、衣料品小売業で78.6%と最多。飲食業(75.0%)等が後に続く

「現在借りている」とする回答割合を業種別に見ると、衣料品小売業(78.6%)で最も多く、飲食業(75.0%)、繊維製品製造業(72.0%)、機械器具卸売業(70.6%)、食料品製造業(69.0%)、木材・木工製品製造業(66.7%)、生活関連サービス業(66.7%)、職別工事業(64.3%)、旅館・ホテル業(63.0%)等が後に続く。

■図表3 新型コロナ関連融資の利用状況
新型コロナ関連融資の利用状況

4.新型コロナ関連融資の返済状況【単一回答】

新型コロナ関連融資を利用している事業者のうち
「今後返済開始」は35.1%(建設業で41.9%とやや多い)

新型コロナ関連融資を「現在借りている」とした事業者に、その返済状況を質問したところ、「3割未満の返済」が37.2%で最も多く、「今後返済開始」が35.1%で次に多かった。

○建設業で「今後返済開始」とする回答割合がやや高い

産業別では、「今後返済開始」とする回答割合は、建設業で41.9%とやや多くなっており、製造業は36.0%、サービス業は35.7%、商業は31.2%となっている。

○医療・福祉で「今後返済開始」とする回答割合が69.2%と高い

業種別では、「今後返済開始」とする回答割合は、医療・福祉で69.2%と最も高く、鉄鋼・金属製品製造業(50.0%)、飲食業(50.0%)などが後に続く。

■図表4 新型コロナ関連融資の返済状況

(※)質問Bで「現在借りている」と回答した事業者にのみ質問を行った。

5.新型コロナ関連融資の返済開始時期 【単一回答】

「2023年6月までに」が36.5%で最多
「2024年1月以降」との回答も30.4%を占める

質問Cにおいて、新型コロナ関連融資の返済が「今後返済開始」となると回答した事業者に、返済開始時期を質問したところ、「2023年6月までに」との回答が36.5%で最も多かった。

(※)産業別の集計についてはサンプル数が少ないことから割愛。

■図表5 新型コロナ関連融資の返済開始時期【全国調査との比較】
※質問Cで「今後返済開始」と回答した事業者にのみ質問を行った。
新型コロナ関連融資の返済開始時期【全国調査との比較】
※(資料)全国調査は帝国データバンク「新型コロナ関連融資に関する企業の意識調査」(2022年8月実施)を参照。

6.新型コロナ関連融資の返済見通し 【単一回答】

新型コロナ関連融資を利用している事業者のうち22.7%が
「返済に不安がある」と回答

新型コロナ関連融資を「現在借りている」とした事業者に、その返済状況を質問したところ、「返済に不安を感じる」とする事業者は22.7%で、「返済できる」は76.4%だった。

○サービス業で「返済に不安がある」との回答が比較的多い

業種別では、生活関連サービス業(66.7%)、飲食料品小売業(57.1%)、運輸業(55.0%)、医療・福祉(53.8%)、飲食業(50.0%)、生活・文化用品小売業(44.4%)などで「返済に不安を感じる」とする回答割合が高い。

■図表6 新型コロナ関連融資の返済見通し
※質問Bで「現在借りている」と回答した事業者にのみ質問を行った。
新型コロナ関連融資の返済見通し

■(参考)新型コロナ関連融資の返済見通し 【全国調査との比較】
新型コロナ関連融資の返済見通し 【全国調査との比較】
※(資料)全国調査は帝国データバンク「新型コロナ関連融資に関する企業の意識調査」(2022年8月実施)を参照。

7.人手の過不足感 【単一回答】

人手不足感を感じる事業者は43.6%で
コロナ禍前の2017年調査(38.2%)に比べて5.4ポイント増

人手の過不足感について質問したところ、「不足」との回答は43.6%を占めた。産業別では、建設業で57.5%と比較的多くなっており、製造業は38.0%、商業は35.9%、サービス業は48.7%となっている。

○全ての産業でコロナ禍前よりも人手不足感が強まっている

コロナ禍前の2017年に実施した調査に比べて、「不足」とする回答割合は上昇している。建設業では49.4%から57.5%(8.1ポイント増)、製造業は36.0%から38.0%(2.0ポイント増)、商業は31.1%から35.9%(4.8ポイント増)、サービス業は40.6%から48.7%(8.1ポイント増)と、いずれの産業においても、「不足」とする回答割合が上昇している。

■図表7 人手の過不足感
人手の過不足感

8.従業員の募集状況 【単一回答】

従業員を募集している事業者は47.9%
過去調査に比べて、特に建設業で増加

従業員の募集状況を質問したところ、「行っている」との回答は47.9%で、「行っていない」は52.1%だった。5年前に実施した調査に比べて、「行っている」との回答は3.5ポイント増加しており、特に建設業において15.2ポイントの大幅増加となっている(特に総合工事業で増加)。

○飲食業、旅館・ホテル業では7割強の事業者が従業員を募集

業種別では、「行っている」とする回答は、医療・福祉で75.7%と最も多く、飲食業(75.0%)、旅館・ホテル業(71.4%)、運輸業(64.7%)、機械・機械部品製造業(63.3%)、化学製品製造業(58.3%)などが次に多い。その一方で、不動産業では、「行っている」とする回答が16.7%と最も少なく、生活・文化用品小売業(23.5%)、衣料品小売業(28.6%)などでも少なくなっている。

■図表8 従業員の募集状況
従業員の募集状況

9.募集を行っている雇用形態 【単一回答】

従業員の募集を行っている事業者のうち91.6%が
正規雇用者を募集している
○建設業では87.2%が「正規雇用のみ」と回答

従業員の募集を行っている事業者に対して、募集している雇用形態を質問したところ、産業別では、建設業で「正規雇用のみ」が87.2%を占めた。その他の産業については、「正規雇用のみ」とする回答は建設業に比べて少ないものの、「正規・非正規ともに」との回答が多く、正規雇用者の募集を行う事業者が約9割を占める。

■図表9 募集を行っている雇用形態
※質問Gで「行っている」と回答した事業者にのみ質問を行った。

10.募集を行っている職種【複数回答】

「営業職」が27.3%で最多
「生産工程2(加工・組み立て)」が2番目に多い

従業員の募集を行っている事業者に対して、募集している職種を質問したところ、「営業職」が27.3%で最も多く、「生産工程2(加工・組み立て)」が20.6%と二番目に多くなっている。その他には、「接客・店頭販売職」(17.4%)、「一般事務職」(17.0%)、「土木・建設職」(17.0%)等が多い。

○5年前に比べて、「接客・店頭販売職」、「一般事務職」、「土木・建設職」等が増加

過去調査(2017年実施)と比較した場合、「接客・店頭販売職」、「一般事務職」、「土木・建設職」が増加している。

■図表10 募集を行っている職種(過去調査との比較)
※質問Gで「行っている」と回答した事業者にのみ質問を行った。
募集を行っている職種(過去調査との比較)

11.募集を行っている最大の要因【単一回答】

「離職者(退職者)の補充」が37.4%で最多
「将来的な退職者増加への準備」が21.6%と、次に多い

従業員の募集を行っている事業者に、募集を行っている最大の要因を質問したところ、「離職者(退職者)の補充」との回答が37.4%で最も多くなっている。「将来的な退職者増加への準備」との回答が21.6%で次に多く、「技能や資格を有する者が必要」が12.6%で後に続く。

○商業で「離職者(退職者)の補充」とする回答が増加

「離職者(退職者)の補充」については、多くの業種で回答が多く見られる。特に、飲食料品小売業、不動産業、運輸業、飲食料品卸売業などで回答が多い。特に、商業については、1年前の調査に比べて、「離職者(退職者)の補充」とする回答割合が36.2%から46.9%にまで上昇しており、多くの事業者において、退職・離職に伴う人手不足が深刻化しているものと考えられる。

○建設業で「技能や資格を有する者が必要」との回答が増加

「技能や資格を有する者が必要」とする回答は、建設業で31.0%と多くなっている。1年前の調査における16.2%からは14.8ポイント増加しており、建設関連の技能者・技術者が足りていない事業者が増加しているものと考えられる。

■図表11 募集を行っている最大の要因
※質問Gで「行っている」と回答した事業者にのみ質問を行った。
募集を行っている最大の要因

おわりに

○2022年10〜12月期の県内景況BSIは、コロナ禍からの持ち直しの動きが強まる

2022年10〜12月期の県内景況BSIは6.0ポイント上昇し、コロナ禍以降の最高値を再び更新した。製造業、卸売業、サービス業での業況改善が全体をけん引した。製造業に関しては、原材料価格の高騰が続く中で、鉄鋼・金属製品製造業、機械・機械部品製造業を中心に受注環境が改善している。卸売業に関しては、県内景気の改善を背景に、機械器具卸売業等で業況が改善した。観光需要喚起策「全国旅行支援」もあり、外食需要・旅行需要の持ち直しから、飲食業、旅館・ホテル業で業況が改善し、サービス業全体でもコロナ禍以降の最高値を記録した。

○1〜3月期(見通し)の景況BSIは、原材料価格の高騰、世界景気の減速懸念もあり、弱含む

1〜3月期(見通し)の県内景況BSIは全ての産業で下降し、全体では4.8ポイント下落する。世界的な金融引き締めの流れの中で、世界景気の下振れリスクが高まり、急激な円安進行を背景に、物価の上昇が続いている。県内事業者においては、これらの事象への懸念が根強く、景況BSIの見通しには弱さが見られる。

○県内全体としては景気回復に向かう中で、業況は業種、規模、地域等で違いが見られる

コロナ禍で大幅に落ち込んだ県内景気は回復しつつある。感染拡大期においても経済活動に制限を加えない「ウィズコロナ」にあって、ヒト・モノの動きが活発化し、政府の観光需要喚起策も後押しして、製造業、サービス業における受注環境が改善している。その一方で、県内事業者を取り巻く環境は、コロナ禍以前よりも厳しいものとなっている。

企業間で売買される物品価格の指数は1960年以降の過去最高値を更新しているが、県内事業者の価格転嫁の動きは鈍い。また、人手不足感はコロナ禍前の水準よりも強まっており、増加する受注に対応できない事業者も少なくない。さらに、企業支援策として展開された「新型コロナ関連融資」については、既に半数以上の事業者が返済を開始しており、一部の事業者は、将来の返済に不安を感じている。以上の点については、特に飲食業、旅館・ホテル業、運輸業、飲食料品小売業といった、コロナ禍で大きな影響を受けている業種において、厳しい状況にある事業者が多い。

県内景気は、全体としては回復に向かう中で、業況は業種、規模、地域等で違いが見られる。この点に注意しながら、引き続き、県内経済情勢について詳報していきたい。

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