湯浅町で唯一の銭湯である布袋湯は、明治初期の建築であり、名称も創業以来そのままとのことです。茶色いレンガ造りの重厚な入り口は、一見して銭湯とは思えない。最初から銭湯として営業を始めるために建築され、現在までそのままとの事。当時としては地元で一、二を争うハイカラな造りであったといいます。
町の人達には、昔から「川原湯」の愛称で親しまれています。
明治初期の創業者から数えて3代目の経営者森岡さんは昭和11年生まれですが、戦時中も父親が経営していた頃のことをよく憶えているといいます。昭和28年7月の大水害時は、布袋湯も脱衣場まで床上浸水し、当時燃料としていたおがくずなどが入手できず、しばらく営業を中止したそうです。その後は、他府県から災害復旧の応援に来ていた技術者や、もともと花街で賑わっていた湯浅町であったため、芸者さんも毎日100人位は入浴に訪れ、午後2時から夜の11時頃まで営業し、ひっきりなしに訪れるお客様でごった返していたそうです。脱衣箱は壁面に男女各28設置されていますが、扉の名前も、写真のように、「もみじ」、「らん」、「もも」など、当時の芸者さんの源氏名から付けたとか。
最盛期には町内で9軒あった銭湯も、現在は布袋湯1軒になり客足も減少しているとのこと。さらに客層が高齢者中心に変化しているものの、これからも頑張って経営していきたい、とご主人は意気軒昂に語っています。華やかし頃に思いを馳せながら湯に浸るのも一興では?
- 営業時間 16:00〜19:00
(定休日:日曜日)
- 入浴料 大人250円小人50円
(取材:澤ア)
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