その昔、みすぼらしい法衣を着た坊さんがこの辺りに通りかかり、庄屋の家の前に立って、水を恵んでもらった。その際庄屋の人は「この辺の水は鉄気が多くて」と恐縮しながら差し出した。すると、このお坊さんは「鉄気が多いのではさぞやお困りでしょう」と持っていた錫杖を地面に突いたところ、なんと不思議なことにそこから真水が湧き出してきた。
その後この辺りの人々は、「あの坊さんはきっと弘法大師に違いない。」と信ずるようになり、「大師の井戸」と愛称され現在に至っている。この井戸水は、夏は冷たく冬は暖かい。日照りで周辺の井戸が枯れてもこの井戸水だけは枯れる事がないという。
件の井戸は常時蓋がされているが、蓋を取って中を覗いてみると、きれいに透き通った約1mくらいの深さで、「紀州の名水百選」に指定されているそうである。
国道24号線に並行して、大和街道が走っているが、そぞろ歩きの際は、是非立ち寄ってみたい場所の一つである。
(取材:萬羽)
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