旧中筋家旧宅見学の帰り道、通りがかりに見た用水路と周囲の家の美しさに見とれてしまった。用水路の両岸には旧家が建ち並び、水は橋や家の土台すれすれにゆったりと流れている。車を停め、暫し水路に沿って歩いてみた。ここは熊野古道の一部である。古道を歩く観光客も暫しここの景色に見とれ、写真の旧家を訪れる人も多いという。
歴史を紐解くとこの用水路、古くは古墳時代に開削され、古代律令時代にはおよそ600haに及ぶ平野部の水田を潤す一大幹線水路として国衙に管轄されていた。当時の取水口の幅は破格の約11mもあったそうである。その後国衙の権威の低下に従い、それに代わって本来的な関係を持っていた日前宮が管理するようになり、そこから「宮井」と称されるようになったとの事。
それはさて置き、ここから上流に300mほど歩を進めると、水田地帯に出る。この満々と水を湛えた水路が動脈のように水田の間を流れる様は、人間の営みの偉大さを感じずには居られない。
(取材:萬羽)
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