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和歌山県中紀地域における花き産業の現状と課題

主任研究員  藤代 正樹

1.全国の花き産業の現状

(1)花き産業の動向

全国の花き産業は、業務用需要が大きく伸び、切花類の産出額は作付面積とともに右上がりに推移した。その後、バブル期の終焉とともにH10年ごろをピークに産出額は下降傾向が続いている。切花の国内生産が減少する一方で、輸入は大きく伸びており、国内の切花消費に対して安定的な供給を担うようになっている。輸出は伸びているものの、輸入の数量、金額に比べると伸びは弱い。

切花類の産出額、作付面積の推移
切花類の産出額、作付面積の推移

資料:農林水産省「生産農業所得統計」他

切花の消費減少は業務(景気後退による企業交際費の縮小等)、稽古需要の減少が大きく影響している。

生花・茶道教室の推移
生花・茶道教室の推移

資料:総務省「事業所・企業統計調査」、「経済センサス基礎調査」

(2)切花類の輸出入の推移

輸出入では、輸入額が輸出額を大きく上回っている。

[1] 輸入

切花輸入は金額、数量とも増加傾向が続いている。主な輸入国相手はマレーシア、中国、コロンビアでこの3か国で輸入シェアの54%(2010年、金額)を占めている。主品目はキク、ラン、カーネーション、バラが輸入シェアの71%(2010年、金額)を占めている。近年、切花の国内需要は輸入花で支えられている。

切花類の輸入金額、数量
切花類の輸入金額、数量

資料:財務省「貿易統計」

※輸入のピークは、金額30,771百万円(2010年)、数量43,574千kg(2010年)。

[2] 輸出

切花輸出は金額、数量とも増加しているが、輸入量に比べると圧倒的に少ない。

切花類の輸出金額、数量
切花類の輸出金額、数量

資料:財務省「貿易統計」

※輸出のピークは、金額90百万円(2010年)、数量47千kg(2008年)。

輸出入の単純な比較(2011年)
  ・金額
    輸入29,410百万円/輸出64百万円=460倍
    金額では、輸入は輸出の460倍。
  ・数量
    輸入43,558千kg/輸出22千kg=1,980倍
    数量では、輸入は輸出の1,980倍。

[3] 輸出入単価の比較

切花の輸出入の単価を財務省「貿易統計」の数値から単純に算出した。

輸出では、年により切花品目により増減があるため単価も変動している。一方、輸入では、多様な品目があるものの単価は安定、低価格で推移している。1990年以降、輸入単価は低下を続け、1990年の輸入単価は1,342円であったのが、2011年は675円と1/2になっている。※「切花及び花芽」の輸入関税率は無税である。

切花類の輸出入1kg当たり単価
切花類の輸出入1kg当たり単価

資料:財務省「貿易統計」より作成
1kg当たり単価=金額/数量で算出

(3)切花の消費実態

家庭における切花消費を見ると、1世帯当たりの年間支出金額は若干の減少が見られるものの大きく落ち込んでいない。

切花の1世帯当たり年間支出金額、購入頻度(全世帯)
切花の1世帯当たり年間支出金額、購入頻度(全世帯)

資料:総務省「家計調査」

年齢別の切花支出では、年齢が高いほど支出金額は大きい。今後、花の消費拡大を目指すには、高齢者層の消費を維持するとともに若年層の花への関心を高め消費に結び付けていくことが重要である。

切花の世帯主の年齢別1世帯当たり1か月間の支出金額(H24年、二人以上の世帯)
切花の世帯主の年齢別1世帯当たり1か月間の支出金額(H24年、二人以上の世帯)

資料:総務省「家計調査」

男女別では女性の方が花を買っているが、若年層では男女ともに支出は低くなっている。男女とも若い人、高齢者男性の消費拡大策も重要である。

切花の男女別、年齢別1か月当たり支出金額(H21年)
切花の男女別、年齢別1か月当たり支出金額(H21年)

資料:総務省「全国消費実態調査」

2.花き卸売市場における和歌山県産の動向

近畿最大規模の大阪鶴見花き地方卸売市場における切花の取扱数量は446百万本、取扱金額は230億円(H23年)となっている。

年別取扱高の推移(切花)
年別取扱高の推移(切花)

資料:大阪鶴見花き地方卸売市場

市場では年間を通して安定的に花を生産者から小売り・量販店へ供給していかなければならない。そのために、全国(外国を含めて)から集荷し、季節ごとに様々な品目を集めている。

切花の月別取扱高の推移(H23年、切花)

切花の月別取扱高の推移(H23年、切花)

資料:大阪鶴見花き地方卸売市場

市場の都道府県別取扱高(金額ベース)では、和歌山県が3位で取扱高の6%(1,443百万円)を占めている。切花類産出額(H22年)では和歌山県は全国13位であるが、この市場から距離的に近いこともあり、この市場でのシェアは高い。

切花の都道府県別取扱高シェア(H23年、金額ベース)
切花の都道府県別取扱高シェア(H23年、金額ベース)

資料:大阪鶴見花き地方卸売市場

和歌山県産の市場動向を見ると、11〜5月にかけて取引が増加。6月〜10月は減少。(北海道のスターチス生産は全国1位。夏場は和歌山県に代わり取引は急増。冬場はほとんどなし)

切花の県別、月別取扱高(H23年、金額ベース)
切花の県別、月別取扱高(H23年、金額ベース)

資料:大阪鶴見花き地方卸売市場

和歌山県中紀地方の主品目であるスターチスとカスミソウの市場での取引量は、カスミソウの取扱高は月ごとの変動は少ない。スターチスは仏花としての需要が大きく、物日(春秋の彼岸、盆、正月)の取引が多いからである。7〜9月は北海道産のスターチスが主となる。

スターチス・カスミソウの月別取扱高の推移
スターチス・カスミソウの月別取扱高の推移

資料:大阪鶴見花き地方卸売市場

生産者にとって販売単価は重要である。スターチスもカスミソウも数量が少ないときは価格が高く、逆に数量が多くなると価格は低くなる傾向が見られる。その傾向はカスミソウで顕著である。スターチスは需要と供給のバランスに加えて、仏花の需要期である彼岸や盆などの物日効果(3、8、9、12月)が価格に影響している。

数量と単価(カスミソウ)
数量と単価(カスミソウ)

数量と単価(スターチス)
数量と単価(スターチス)

資料:大阪鶴見花き地方卸売市場

3.中紀地域の花き産業の現状と課題

(1)中紀地域の花き産業の動向

和歌山県の農業算出額では、「果実」が60%を占め、「花き」は58億円の6%となっている。

和歌山県の農業産出額(H22年)

和歌山県の農業産出額(H22年) 和歌山県の農業産出額(H22年)

資料:農林業センサス

全国の切花類の出荷量と産出額(H22年)は、愛知県がともに1位で和歌山県は出荷量162百万本(8位)、産出額53億円(13位)で近畿では最も大きな産地である。

切花類出荷量(H22年)

切花類産出額(H22年)

資料:農林水産省「花木等生産状況調査」

和歌山県の切花類の産出額は昭和後期から平成にかけて大きく増加し、H7年に138億円に達した。この頃に野菜から花へと転作が進んだ。その後、バブル期の終わりとともに需要減少から生産減少が続き、現在の産出額は正常に戻ったと考えるのが正しいかもしれない。花作りは機械化が難しく手作業が多いため、単に需要が減ったから生産が減ったというだけでなく、山間部を中心として生産者の高齢化と後継者不足とが生産減少に大きく影響している。

和歌山県の切花類の産出額の推移
和歌山県の切花類の産出額の推移

資料:農林水産省「花木等生産状況調査、花き生産出荷統計、生産農業所得統計」他

地域別では、御坊市の花き産出額は20億円と県全体の35%を占めており、次いで印南町7.8億円(13%)、紀の川市7.7億円(13%)となっている。このように中紀地域は和歌山県における花きの中心的な産地となっている。

市町村別花き産出額(H22年)

市町村別花き産出額(H22年) 市町村別花き産出額(H22年)

資料:市町村別統計検討協議会

(2)中紀地域の花き就業者の高齢化率

次に、県内の農業就業者の高齢化率を市町村別に表してみた。

農業就業者数(花き・花木)高齢化率の関連指標
農業就業者数(花き・花木)高齢化率の関連指標

資料:農林業センサス、和歌山県市町村ハンドブックより作成
※就業者数は自営農業に主として従事した世帯員数

全国的に農業就業者の高齢化が進む中で、このデータから見られる和歌山県及び御坊市、印南町の特徴は次のとおりである。

  1. 県計の高齢化率(26.4%)は全国計(22.8%)より3.6ポイント上回っている。
  2. 逆に農業就業者の高齢化率(県計53.2%)は全国計(61.6%)より8.4ポイント下回っている。花き・花木就業者の高齢化率は県計と全国計はほとんど差がない。
  3. 全国、和歌山県全体では、農業就業者の高齢化率は高いが、それに比較すると花き・花木就業者の高齢化率は低い。
  4. しかし、県内の市町村によって就業人口・高齢化率にバラツキが見られる。
    就業者数では、花き生産の盛んな御坊市349人、印南町162人、紀の川市222人、田辺市112人以外は百人を下回っている。高齢化率では、就業者数50人以上の市町に限ると田辺市の77.7%以外は30%台と県平均を下回っている。
  5. 御坊市の農業就業者における花き・花木就業者割合は26.3%と県平均2.9%を大きく上回っている。御坊市では農業就業者の1/4が花栽培を行っている。御坊市・印南町の花き・花木就業者高齢化率は農業就業者高齢化率より10ポイントほど低い。
  6. 御坊市・印南町では、花き生産に従事する農家が多く、また若い人が就業している。
(3)スターチスとカスミソウの生産状況

スターチスは安定した仏花需要を背景に順調に生産拡大が続いている。夏場の北海道産スターチスと夏以外の和歌山産がスターチスの全国供給を支えている。一方、カスミソウの出荷は熊本県が全国1位となり、和歌山県のカスミソウは熊本産に比べカジュアルな仕立てとなっており生産減少傾向である。

県全体の切花の作付面積はH7年頃をピークに減少が続いている。スターチスはH7年以降も作付面積は減少せず、むしろここ数年増加傾向が見られる。逆にカスミソウは減少傾向が見られる。

切花類の作付面積の推移
切花類の作付面積の推移

資料:農林水産省「花木等生産状況調査、花き生産出荷統計、生産農業所得統計」他

御坊市におけるスターチス・カスミソウの作付面積は県全体の6割を超え、印南町と合わせるとこの2地域でスターチスとカスミソウの8割超が生産されている。出荷量から見ても同様でスターチスとカスミソウの一大産地と言える。他には、ガーベラ、バラ、スイートピーなどが生産されている。

JA紀州中央のキャラ「きちゅうくん」
JA紀州中央のキャラ「きちゅうくん」

4.地域での花き生産の取り組みと今後の方向性

地元では、JA紀州中央(H26年4月合併、現「JA紀州」)や花き専業農家が協働して、和歌山県の技術支援も得ながら花の生産拡大、販売強化に向けて取り組みを行っている。御坊市の名田周辺は若い後継者が多い。後継者が多く相乗効果(隣の息子さんも後を継いでいるから自分もやる)が生まれている。

収穫可能なスターチス(オリジナル品種)
収穫可能なスターチス(オリジナル品種)
スターチスは次から次へ花芽が出てくる
スターチスは次から次へ花芽が出てくる
スターチスの低コスト耐久性ハウス
スターチスの低コスト耐久性ハウス
一部収穫可能なカスミソウ(名田地区)
一部収穫可能なカスミソウ(名田地区)
土は元々田んぼのため粘土質で固め
土は元々田んぼのため粘土質で固め
収穫時期を分けるため、植え付け時期を分散。そのため、カスミソウの生育は様々。

今後の花き産業振興のために、地域ではPR活動の推進、花の特徴を前面に打ち出す、地産地消の拡大、付加価値を高める取り組み、環境配慮の花き栽培、後継者育成等が考えられる。

また、花き産業全体として、産地が小売り卸・小売業との連携、販路の拡大等に取り組んでいく必要がある。

最後に

「花を飾る意識」「花がいつも身近にある」「花が必要」という意識が育たない限り、花の価値は高まらない。地域のJAが保育所や小学校で花の苗植え教室や収穫体験など積極的に「花育」に取り組んでいる。一方、大手生花店チェーンは多様なライフスタイルに合わせた花を提供し、新たな消費者ニーズの発掘に成功している。また、生花店にカフェを併設したり、金融機関ATMコーナーに生花売り場を配置するなど花に接する機会を増やし消費拡大を図る取り組みも見られる。このように、産地と流通業者、小売店が連携し、「花を愛でる習慣作り」を広げていくことが望まれる。

(2014.8)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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