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地域を活性化するための6次産業化のすすめ方

研究部長  藤本 幸久

1.はじめに

平成22年3月に定められた「食料・農業・農村基本計画」において「農業・農村の6次産業化の推進」が盛り込まれ、平成23年3月には「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律(六次産業化法)」が施行された。

同法に基づく「総合化事業計画」及び「研究開発・成果利用事業計画」の認定も順次行われ、平成25年11月29日現在(農林水産省HPより)全国で1,690件、うち和歌山県で52件の「総合化事業計画」が認定されている。

これらの認定により、農業改良資金の特例適用、短期運転資金の活用が可能になるほか、新商品の開発や販路拡大の取り組みに対して3分の2の補助や、6次産業化プランナーによるフォローアップ等の支援が得られるようになるなど、様々な支援策が講じられている。また、「農林漁業成長産業化ファンド」が立ち上がり、さらなる6次産業化の推進に向けた取り組みがすすんでいる。

ついては、6次産業化に取り組むきっかけ、対象、その成功要因や課題などについて全国的な状況も踏まえ考察することとする。

2.総合化事業計画の認定状況

(1)「総合化事業計画」認定状況

以下の[1][2][3][4]は、平成26年2月28日現在の、農林水産省HPによる「六次産業化・地産地消法」に基づく認定の概要であり、かつ平成23年からの累計件数である。

(参考)「総合化事業計画」とは、次のいずれかを行うこと。

  • ア) 自らの生産等に係る農林水産物等をその不可欠な原材料として用いて行う
       新商品の開発、生産又は需要の開拓。
  • イ) 自らの生産等に係る農林水産物等について行う新たな販売の方式の導入
       又は販売の方式の改善。
  • ウ) ア)またはイ)に掲げる措置を行うために必要な生産等の方式の改善。
[1] 「総合化事業計画」の地域別認定件数

認定件数は全国で1,806件あり、うち近畿は九州に次いで2位の316件で、全体の17%の割合となっている。なお、品目別にみると、林産、水産物に比べて農畜産物関係が1,596件88%の割合で圧倒的に多い。

「総合化事業計画」認定の地域差の原因は、さまざまな要因が複雑に関連していると考えられるが、米作中心の東北・北陸地域では、およそ6次産業化の進展度が低いといえる。これは、加工品の多様性や差別化の余地が限られることや、商品である米の規格外割合が小さいことなどがあげられる。

一方、近畿のように多品目、ブランド農産物が多く存在する地域は、消費者への直販を中心とした6次産業化をすすめやすい土壌があると考えられる。

「総合化事業計画」地域別認定件数(農林水産省HPより)
「総合化事業計画」地域別認定件数

[2] 「総合化事業計画」の事業内容の割合

事業内容別割合は、「加工・直売」が67.9%で圧倒的に多く、次いで「加工」の21.2%、さらに「加工・直売・レストラン」が6.1%となっている。いずれにしても、生産物に少なからず手を加える(加工する)ことによって付加価値を高める努力をしているように思われる。

「総合化事業計画」事業内容割合(農林水産省HPより)
「総合化事業計画」事業内容割合

[3] 「総合化事業計画」の対象農林水産物の割合

対象農林水産物の割合は、野菜が認定計画の約3分の1(32.1%)を占め、次に果実の18.6%、米の11.8%、畜産物の11.4%となっている。

「総合化事業計画」の対象農林水産物割合(農林水産省HPより)
「総合化事業計画」の対象農林水産物割合

[4] 近畿における府県別「総合化事業計画」認定件数

これは、平成25年11月29日現在であるが、近畿の認定件数は289件で全国の1,690件に対し17.1%の割合となっている。一方、近畿の認定件数289件に対して、兵庫の73件で25.3%に次いで、和歌山は52件18.0%の割合である。

なお、対象農林水産物の割合は、野菜が認定件数の40.5%を占め、次に果実の21.7%、米の11.4%、茶の5.3%となっており、野菜や果実いずれも全国の割合を上回っている。

「総合化事業計画」の府県別認定件数(近畿農政局HPより)
「総合化事業計画」の府県別認定件数

(参考)促進事業者とは
  総合化事業計画の認定に向けたサポートや認定後の計画実現に向けたフォローアップを行う者。

「総合化事業計画」の対象農林水産物割合(近畿農政局HPより)
「総合化事業計画」の対象農林水産物割合

[5] 「総合化事業計画」の地域的な展開状況

経営規模からみると、大規模経営が多く法人化率が高い北海道地域と、対照的に小規模経営で法人化の度合いが低い近畿地域が、それぞれ事業認定の割合が高くなっている。

なお、作物に着目した農業経営体の6次産業化状況について分析してみると、近畿は多品目なうえブランド農産物が多く存在することから、消費者への直接販売を中心とした6次産業化を推進しやすい地域である。

一方、北海道は直接販売の割合が低く、6次産業化の全般的な取組み比率そのものは沖縄に次いで低い地域である。

(2)和歌山県内における「総合化事業計画」認定状況

「総合化事業計画」の認定品目は以下のとおりであるが、およそ和歌山県の特産品であるみかん、南高梅、桃、八朔等晩柑類、山椒、豆、トマトが多くみられる。

新商品開発方法としては、@従来作物の加工、A新作物の導入・加工、B観光・体験農園の実施・直売、Cインターネット販売などに分類される。また、新たな作物としては、ホワイトサポテ、ナタ豆、ヤーコン、はるか、新秋柿、湯浅なす(伝統野菜)、トマトベリー、安藤柑(幻の)、サラダほうれん草などが見られる。

また、新商品としては、ドライベジタブル、ファストフィッシュ、桃パウダー、オレンジピール、梅びしお等があげられる。

ただ、総合化事業計画は、観光農園、体験・交流、農家民宿といったサービス分野が非常に少ない。また、ほとんどが個別単独的なものであり、農村地域の全体的なつながりや多角化の視点が不足しているように思える。さらに、共同申請者や促進事業者を設定することができるにもかかわらず、大半が単独申請であり促進事業者の利用は全体の1割程度となっている。

なお、事業の大半は加工ないしその直売を目指しているが、果たして単独で魅力的な商品開発や十分な販路確保が可能だろうか。また、共倒れのリスクが高まるなどの懸念も想定される。

経営資源を地域内でできるだけ共有するとともに活用することが不可欠であり、地域が持つ魅力や個性を単発でなく連動連携させて域外に発信することの機能が重要となってくると考えられる。

いずれにしても、販売戦略、商品の差別化の手法が、6次産業化の成否を大きく左右することになるであろう。

和歌山県内の「総合化事業計画」認定における作物別状況
(農林水産省HPの総合化事業計画認定一覧から筆者作成)
和歌山県内の「総合化事業計画」認定における作物別状況

(参考)
・晩柑類とは、八朔・甘夏・伊予柑など甘橘類の晩生(おくて)のもの。
・梅びしおとは、梅干しの肉を煮て裏ごしし、砂糖を加えてとろ火で練りあげたもの。
・ホワイトサポテとは、カリフォルニア・フロリダ等で栽培されているミカン科の果実。

3.農業の6次産業化の現状と主な動き

(1)農産物直売所の激増

平成24年度の農業生産関連事業による年間総販売金額は1兆7,451億円で、前年度に比べ6.6%増加した。

さらに、年間総販売金額を業態別にみると、「農産物直売所」は8,448億円、「農産物の加工」は8,237億円、「観光農園」は379億円で、前年度に比べそれぞれ6.6%、5.6%、0.8%増加した。

農業の6次産業化のトップランナーとして躍り出てきたのが「農産物直売所」であり、自らの地域で生産した農畜産物やその加工品を、生産者が自ら価格や生産履歴を表示し消費者に販売するという活動である。

農業生産関連事業の年間総販売金額(平成24年度)
(農林水産省HPより)
農業生産関連事業の年間総販売金額(平成24年度)

注:「その他農業生産関連事業」には、農家レストラン、農家民宿及び輸出が含まれる

(2)女性起業家の増加

女性による多彩な起業活動数の推移を見ると、農村の「女子力」がアップしたことがうかがえる。

ただ、平成9年に全国で4,040件であったものが、平成14年に7,735件、平成20年に9,641件と、急激な伸びを見せていたが、平成24年は9,719件で、初めて減少(微減)となった。

なお、活動内容については、「食品加工」が最も多く74.7%、次いで「流通・販売」65.5%、「農業生産」24.3%となっている。特に「流通・販売」、「農業生産」の取り組みは、前回調査に比べ9.3%、18.5%増加しており、加工のみならず、生産から流通・販売に至るまで女性が積極的に関わってきていることがうかがえる。

やはり、圧倒的に多いのは農畜産物を原料とした「食品加工」であり、次いで多いのが朝市や直売所あるいはネット販売などの販売活動である。とりわけ、加工と販売の結びついたものが多く、地域的には東北や九州などに女性起業の活躍が目立つのが特徴である。

(参考)女性起業とは
 「農村在住の女性が中心となって行う農林漁業関連の起業活動であり、
  1.仕様素材は主に地域産物であること、
  2.女性が主たる経営を担っているもの、
  3.女性の収入につながる経済活動であるもの」となっている。

女性起業家数の推移
(農林水産省 農村女性による起業活動実態調査より)
女性起業家数の推移

4.農業主体型ビジネスモデル

6次産業化ビジネスモデルには色んなタイプがあろうが、ここでは農業者側に2次産業、3次産業を取り込み、農家所得の向上をめざす「農業主体型ビジネスモデル」を考えてみることとする。

このモデルは、農業者の「所得向上」「事業拡大」「経営安定」「雇用創出」「地域活性化」をめざすものであり、具体的内容としては、「農産物加工」「直接販売」「加工販売」「農家レストラン」「観光農園」「農家民宿」「輸出」などが考えられる。

1次産業×2次産業×3次産業=6次産業の掛け算のように、それぞれの産業の強みを活かし連携の相乗効果により、「新商品開発」「新生産方式の構築」「新しい販路・市場の開拓」などを行なうことでもある。

「新商品開発」とは、素材や技術の新しい組み合わせなどにより、新しい機能性商品などをつくりだすことである。なお「新生産方式の構築」には、付加価値の高い栽培法、IT農業、循環型農業、リレー栽培などがあげられる。さらに「新しい販路・市場の開拓」は直接消費者に販売すること、ニッチ市場の開拓、輸出などが考えられる。

けれども、6次産業化を1×2×3=6次産業と捉えて、加工して販売する取組みであると限定的に考えるのではなく、それぞれの地域に内在する個性や価値を活用するかたちで、「体験・交流」「環境・資源保全」「教育」「雇用創出」など、もっと多様な目的を持った取組みがあっていいところである。

すなわち、6次産業化の経営モデルは、「モノ」の加工や販売レベルを超えた地域のユニークさや個性を競い合うという発想が必要であろう。

5.6次産業化をすすめるにあたっての課題

農林水産省の「農村女性による起業活動実態調査」によると、今後の「事業拡大」「新規展開」「現状維持」したいと回答した経営体7,169件が、「事業展開・運営における課題」としているのは、第一に「人手の確保」(22.4%)、次に「販売ルート集客の確保」(21.9%)であり、以下の項目に比べ高い割合となっている。

「事業展開・運営における課題」
(複数回答)
事業展開・運営における課題

(農村女性による起業活動実態調査より)

ここで、6次産業化をすすめるにあたっての課題について、次の3項目「マーケットリサーチ」「地域内連携・発信力」「計画づくり・仲間づくり」で考えてみることとする。

(1)マーケットリサーチの必要性と重要性

「総合化事業計画」の認定状況をみると「加工・直売」が67.9%、「加工」21.2%、「加工・直売・レストラン」6.1%などと、ほとんどの事業計画が「加工事業」を行うこととしている。ところが、事前に市場調査を実施し、ニーズ把握・販路確保などに充分なる目途をつけずに、商品開発をすすめているところが懸念される。

過当競争にある食の市場で魅力ある商品開発は非常に困難なものであり、加工して販売する取組みが6次産業化であるという固定観念を捨てて、それぞれの地域にあるポテンシャル(環境、食文化など地域の個性や価値)を活用して、「体験・交流」「環境・資源保全」「教育」「雇用創出」などの多様な目的を持った取組みが必要であり重要となる。

(2)地域内連携と発信力の強化

事業計画の多くが個別的で単発的なものが多く、農村の地域経済の有機的連関と多角化の視点に欠けているように思える。地域内で連携し、外に向けて発信していくなど、多様で有効な協力者なしには、単独で6次産業化を成功させるのは容易ではない。

また、JA等には自ら事業主体とはならないにしても、地域の農業者や企業などと連携をとりつつ、地域主体の6次産業化をすすめるとともに、誘発していく役割を期待したいところである。

(3)中長期計画づくりと仲間づくり

現行の事業計画では「5年以内」と比較的短い期間で一定の成果を出すスキームとなっているが、6次産業化の成功事例をみると、20〜30年といった息の長いスパンの取組みが多い。

6次産業化を、地域に広がりを持った中長期の「仲間づくり」計画であると位置づけることが「成功のカギ」であると思われる。ただし、現実には計画どおりに進捗しないケースが多いと予想されることから、当初計画を柔軟に修正しつつ長期的目標を調整することが求められこととなる。

また6次産業化の多様性という点では、女性が持つ知識・ノウハウ、意欲などが大きな役割を持つだけに、女性が6次産業化に参加しやすい仕組みを地域全体で構築することも重要である

6.おわりに

地域が持つ魅力や個性、歴史などの価値を6次産業化に活用する発想力が不可欠である。6次産業化は経済規模が小さくても、地域循環や地産地消、関連産業への波及効果などを考えると、長期安定的に多くの利益を地域にとどめることができる。

すなわち、地域農業の6次産業化は、時間をかけた人づくりや地域づくりの取組みと連動しているのである。言い換えれば、6次産業化を地域振興という視点でとらえ、地域と一緒になって6次産業化をすすめていく仕組みづくりが不可欠であろう。

(2014.8)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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