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移住・定住の取組事例紹介(その1 岡山県)

主任研究員  藤代 正樹

和歌山県は「まち・ひと・しごと創生総合戦略」のなかで「ひと」の定着や新たな流入を促すために移住・定住の取組を展開しています。また、県内市町村でも移住推進を地方総合戦略に取り入れているところも多くあります。そこで、移住推進に積極的に取組み、移住地として全国的に人気の高い岡山県と島根県(次回)の事例を2回に分けて紹介します。

岡山県は2014年田舎暮らし希望地域ランキングの3位(ふるさと回帰支援センター東京調査)と3年連続で3位以内にランクされている。なかでも子育て世代の若い年齢層からの支持が高い。岡山県中央部北側に位置する美咲町は棚田百選認定の美しい棚田がある山間部の町で行政・住民が移住推進に積極的に取組んでいる。町独自の空き家バンクにも力を入れており、空き家対策推進員を配置。この移住推進の取組を紹介します。

1.岡山県の取組

(1) 岡山移住人気の理由

岡山移住相談会等のアンケートによる岡山県の魅力は、

東京開催: 1位「災害が少ない」34% 2位「気候が温暖」33% 3位「交通」「医療」
大阪開催: 1位「気候が温暖」43% 2位「災害が少ない」30% 3位「交通」

相談会来場者の年齢層は、東京では40代までが全体の6割を占めており若い世代の関心が高い。東京の場合、東北震災・原発事故がきっかけとなり、安心安全な所で子育てをしたいというニーズが高まっている。一方、大阪では50代以上が5割を超えている。老後を比較的近く安心感の高い岡山でゆっくり暮らしたいという人が多いと考えられる。県への相談件数では40代までが約5割、50〜70代が約3割となっている。

このように東京と大阪では岡山への移住希望者の年代に差が出ている。岡山県の認知度は全国で中くらい。しかし、岡山をあまり知らない人が移住を調べていくうちに岡山の良さに気付いて相談会に来るというケースが多い。そういう人が実際に移住している。また、移住者自身が情報発信をして、新たな移住者を呼び込むという効果も見られる。

政令指定都市の岡山市(人口715千人)をはじめ県内全27市町村が移住推進に取組、気候・災害に加えて、都市部から山間部まで多様な仕事・生活環境を提供できる強みがある。

JR岡山駅
JR岡山駅。東京・大阪への交通の利便性が高い。
岡山市街地
岡山市街地は都市機能が充実。
(2) 移住者実績

移住者カウントはH25年より各市町村窓口にアンケート票を設置し、その記入者から転勤・進学・結婚を除く「本人の意思により移住した人」を移住者と定義し数えている。それによるとH26年度の移住者実績は1,737人(倉敷市上半期を除く)。この数字は岡山県や市町村等の移住定住推進の取組の成果を表している。

(3) 移住フェア実施状況(H27年9月現在)
東京来場者数 大阪来場者数
H25年度 717人(3回合計) 1回平均239人 262人(3回合計) 1回平均87人
H26年度 586人(3回合計) 1回平均195人 285人(3回合計) 1回平均95人
H27年度 322人(2回合計) 1回平均161人 112人(1回合計) 1回平均112人

H27年度フェアには、県内全市町村27のうち東京では7割、大阪では9割が参加。東京では前年実績を下回ったが、初来場者が多く、岡山の移住人気の高さが伺われる。大阪での来場者は増加傾向である。

(4) 県内外の相談体制
配置場所 窓口 備考
東京 移住アドバイザー ふるさと回帰センター(東京)
岡山県東京事務所
アンテナショップ とっとり・おかやま新橋館
大阪 移住アドバイザー ふるさと回帰センター(大阪)
岡山県大阪事務所
県内 岡山県 中山間・地域振興課 ※岡山移住推進員を新たに設置
備前・備中・美作県民局
県内全市町村

※岡山移住推進員とは、H27年度から設置。非常勤嘱託の選任1名。相談会場で県のブースに配置することもある。通常は課内で電話・相談対応、HP情報更新、等を行う。

(5) 仕事の紹介・支援
【就職】 県の東京・大阪各事務所、県労働雇用政策課に配置されている「企業人材コーディネーター」と連携。企業人材コーディネーターは、移住希望者と実際に面談してマッチする企業を紹介する。
【就農】 県農産課の就農支援担当と連携した就農サポートの強化している。岡山県はマスカットの果樹類をはじめ農産物が豊富で、産地として就農サポートにも力を入れている。農産課担当者が県内では「就農専門相談会」、県外では「交流・定住フェア」にも参加して就農相談を行っている。研修制度も充実しており、岡山県研修制度受講者の就農率が高く、就農後の営農継続率は90%(就農から5年後)。理由として、販売先まで含めた「産地一体型研修」が大きなメリットとなっている。

研修による新規就農者数

申込年度 体験研修 実務研修 新規就農者数 就農率 営農継続者数 営農継続率
H5〜11年 153 80 63 78.9% 42 66.7%
H12〜16年 75 60 51 85.0% 41 80.4%
H17〜21年 69 62 58 93.6% 49 84.5%
H22〜26年 76 56 33 100.0% 33 100.0%
合計 373 258 205 87.2% 165 80.5%
【起業】 岡山県商工会連合会との連携。
これらの関係先が相談会へも参加するなど連携を行い、移住希望者の多様なニーズに対応している。
(6) 県の補助事業

県からは中山間地域等活性化応援事業により対象市町村へ下記の補助を行っている。これらに加え、市町村や移住支援団体、自治会等が地域でしっかり活動を行っている。

・空き家活用にかかる補助
  1.空き家調査助成事業(経費の1/2以内 上限50万円)
  2.空き家活用推進員設置(経費の1/3以内 上限5万円/月/人)
  3.空き家改修助成事業(経費の1/2以内 上限50万円/戸)
・お試し住宅の改修経費補助
  経費の1/2以内 上限175万円/戸
・移り住もう!「晴れの国ぐらし」体験事業
  経費の1/2以内 上限50万円/1市町村
(7) 空き家バンク情報

県内の空き家バンクは岡山県宅地建物取引業協会・岡山県不動産協会との連携による「空き家情報流通システム(HP:住まいる岡山)」利用と独自の空き家バンクを活用する市町村に分かれる。前者は専門性を活かせる仲介や情報量の多さの利点がある、後者は移住者を把握したうえで地域に紹介できるなどそれぞれ地域に適した空き家バンクを活用している。累計で200件超の空き家登録があり、5割近く成約している。相談会でも約6割が住宅相談と、空き家活用は移住の重要なツールである。しかし、地域では空き家そのものはもっと多く、更なる空き家の掘り起しが課題となっている。

◆

(8) 移住定住支援団体

「岡山盛り上げよう会(岡山市)」等の団体が独自のHPを開設したり、いろいろな移住定住推進の支援活動を行政とも連携しながら取り組んでいる。団体が移住者を呼び込むことも多く、特定の地域に限らず全県的な活動を展開しているところもある。これらの団体はボランティアが主で移住者が中心となって活動している団体も多く、相談会への参加もしている。

2.岡山県美咲町の取組

(1) 美咲町の魅力

人口15千人、岡山市から車で1時間の町。温暖な気候、棚田を代表として雄大な自然美、充実した子育て環境、自然災害が少ない。

大垪和西の棚田
日本の棚田百選「大垪和西の棚田」
食堂かめっち
美咲町を代表する名物「たまごかけごはん」の
『食堂かめっち。』には他府県からも
たくさんの人が訪れる。
(2) 定住促進プロジェクト

まちづくりの重点施策として「定住促進プロジェクト」を積極的に推進している。子育て支援には特に力を入れている。出産・育児での補助に加え、新婚家庭への家賃助成や若者定住支援など充実した子育て支援を行っている。移住の問い合わせは、関東からは子育て中の若い世代が多く、関西からは年配者が多い。

就職・就農等の支援では、ハローワークと連携し、津山圏域を中心として車の通勤範囲内を紹介。就農は、県の就農支援とタイアップし、ニューピオーネ等の生産へ入りやすい体制を整えている。

(3) 美咲町独自の空き家バンク

美咲町が特に力を入れているのが空き家等情報バンク制度である。

1) 空き家対策推進員

空き家対策推進員を設置し、2名が活動。空き家の掘り起しから情報提供、さらに移住定住に関することをワンストップで対応。地域を熟知したベテランと移住者としての立場からきめ細かく移住者の相談に答えることができる新人がそれぞれ特色を活かして活動している。

空き家対策推進員
空き家対策推進員の山村さん(左)と移住担当の平賀さん。

2) 空き家情報収集

(ア)H22年度、自治会長からの情報提供をもとに第1回現地実態調査を実施。各自治会が空き家対策に力を入れており、これまで2回空き家情報提供と調査を行ってきた。このことが空き家等情報バンク制度につながっている。空家等対策の推進に関する特別措置法(H26年11月施行)をきっかけに町内全81自治会が空き家情報を一斉調査、その情報からさらに聞き取り調査を実施。

(イ)町広報誌「広報みさき」によるお知らせのほか、固定資産納税通知書の封筒に空き家情報募集と記載し、登録の充実を図っている。

空き家等情報バンクへは危険家屋は登録しない。老朽危険家屋は改善してもらう、という町の適正化条例がある。その条例が空き家バンク物件に出来るかどうかのひとつの判断基準となっている。

3) 空き家ニーズ

美咲町への移住希望者は田舎暮らしや菜園をしたいなどがほとんどで空き家へのニーズは高い。一方で、定住目的でない人、集落の付合いが困難な人からの問い合わせもあり、空き家バンクの課題でもある。

(4) 移住実績

美咲町の移住者数はすべて空き家バンク(H24年11月開始)を通じた実績。

移住希望者数(空き家バンク利用者)

登録世帯 登録者数 移住者数
〜H25 72 187 29
H26 74 214 21
H27 72 181 7

空き家登録数

登録数 成約 その他
解除
残り
売買 賃貸
〜H25 48 10 5 19 55
H26 34 4 4
H27 18 1 2
100 15 11

H27.9現在。残り55件の物件がHPに掲載されている。

(5) 移住の基本的な考え

希望者には、「地域に入ってもらう」ことをコンセプトとしている。別荘や物置として利用するために、空き家を利用するのではなく、美咲町の住人として移住定住を考える人に来ていただきたい。空き家対策推進員が地元の自治会長や常会長への橋渡しを行うなど、希望者と地域を繋いでいる。

町では、「協働のまちづくり事業」を推進しており、自治会が互いに助け合い安心して生活し続ける地域づくりを目指している。郷土を大切に思う気持ちを地域の中でも育んでいく。こういう一体となった教育を行うことで、地域から出ていく若者がまた、美咲町に戻ってくるきっかけになってくれればよいと考えている。美咲町を知っていただくためにも、より多くの人に訪れていただきたい。そのために、これからも美咲町の良い所をもっと発見し発信し続けていきたい。

【岡山ポイント】
  • 先ず、山陽新幹線が通り大阪・東京から交通が至極便利な地理的条件、「身近なところ」という安心感がある。さらに、岡山市(人口715千人)倉敷市(同479千人)のような仕事のある大都市があり、子育て世代にとって大きな魅力である。
  • 岡山県の各自治体が「子育て支援」に力を入れている。とくに若い世代にとって仕事・住まいとともに重要な移住ファクター「子育て支援」の充実は有難いと想像できる。
  • 就農支援も充実している。セミナーや相談会でも就農について情報提供を行う。農業に関心の高い人にとって大変有効である。気候風土がぶどう作りに適しているなどの好条件が強みでもある。
  • 仕事・子育て・就農・少ない自然災害などの岡山県の魅力に加え、県内全自治体が移住に取り組んでいる(財政・マンパワー等により差はあるだろうが)。移住希望者から見れば都市部から山村部まで個人ニーズに合った移住地を選択することが可能である。

次号では、島根県(ふるさと島根定住財団)、飯南町の取組を紹介します。

(2016.4)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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